台湾の対中投資1割に激減 23年、米国向けが初の逆転

台湾の対中投資1割に激減 23年、米国向けが初の逆転
【イブニングスクープ】
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM221O70S3A221C2000000/

『【台北=龍元秀明】台湾の対中投資が2023年に大きく減った。工場の新設や買収など対外直接投資に占める中国向けの比率は10年のピーク時に8割強に上ったが、23年は1割強に激減する見通しだ。米国向けは前年の9倍に膨らみ、投資先で初めて米中が逆転する。

台湾の中国向け投資が激減した背景には、中国経済減速の影響に加え、長年の政治問題を中台の双方が棚上げしきれなくなったことがある。米中対立が本格化して以降…

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『米中対立が本格化して以降、米国が中国製品に制裁関税を課すなど、台湾企業は中国大陸でのビジネスにやりにくさを感じるようになった。

米国寄りで対中強硬路線の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統率いる与党・民主進歩党(民進党)政権も、経済の「脱・中国依存」を掲げた。中国から台湾に生産を回帰する企業に優遇策を設け、中国離れが徐々に進んだ。

台湾の経済部(経済省)の調べによると、台湾の対外直接投資(認可ベース)は1〜11月、前年同期比87%増の257億ドル(約3兆6000億円)と大きく増えた。半面、中国向けは29億ドルと34%減少し、全体に占める比率は12%にとどまった。

中台が自由貿易協定(FTA)に相当する経済協力枠組み協定(ECFA)を結んだ10年には、対中投資が84%と過去最高を記録した。減少傾向にあった昨年も34%を確保しており、23年の落ち込みが際立つ。

過去30年間でも1999年に記録した28%が最低で、今年はその半分以下の低水準となる。金額ベースでも大幅に減る。台湾の対中投資のピークは10年の146億ドルだが、23年はその4分の1程度となる見通しだ。

中国に代わって急増するのが欧米向けの投資だ。1〜11月の米国への直接投資は前年同期比9倍の96億ドルで全体の37%を占めた。ドイツ向けも25倍の39億ドル(15%)と対中を上回る。台湾積体電路製造(TSMC)の工場建設など半導体関連の投資がけん引する。

23年は通年で対米投資が対中の約3倍の規模となる見込み。台湾が中国への直接投資を解禁した93年以降で初めて米中が逆転する。

台湾からの中国投資は、かつて海外投資全体の8割を超えたが、今年は1割台に激減する(16年、中国・広東省)

中国の習近平(シー・ジンピン)政権は台湾への統一圧力を急速に強めている。反発する蔡政権を打倒するため、これまで控えていた経済面にも踏み込んだ。21年以降に特に顕著になり、台湾企業が中国市場を主力としたパイナップルなどを次々と輸入禁止にし、蔡政権に揺さぶりをかけた。

今年8月には、台湾が対中輸入規制を設ける農産品や工業製品など2509品目全てを調査し、台湾への関税優遇の停止をちらつかせた。実際、21日には化学物質など12品目について、24年1月から関税引き下げの優遇措置を停止すると発表した。経済成長を優先し、中台が足並みをそろえていた時代は終わりつつある。

台湾は2024年1月に総統選を控える。各種の支持率調査でリードする民進党候補の頼清徳・副総統は経済の「脱・中国依存」を促す蔡政権の路線を引き継ぐ。最大野党・国民党候補の侯友宜・新北市長は中国との経済関係の再強化を訴える。

もっとも、中国経済は低迷を続け、ハイテク製品を巡る米中対立にも改善の兆しはない。総統選でどの候補が勝利しても、対中投資がすぐに戻る可能性は低い。民間大手シンクタンク、台湾経済研究院の孫明徳主任は「米中対立が続く限り、台湾の対中投資は低下を続けるのがメインシナリオだ」と指摘する。

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今村卓
丸紅 執行役員 経済研究所長
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分析・考察 台湾企業の脱中国依存への急旋回を明確に示す結果です。それでも中国向け投資が34%減なら削減のペースは他の国々よりはおそらく緩やかでしょう。過去の投資が多く、中国経済は鈍化したとはいえ成長しているので、米中対立の影響が小さい業種で再投資や追加投資が続いていて、一定の規模に達するのかもしれません。

中国には台湾と経済一体化を進め、台湾企業と市民に中国経済の発展に台湾を委ねることがベスト、中国なしに台湾の繁栄はあり得ないという意識を浸透させることが統一への最善のシナリオのはず。

しかし中国経済は停滞、台湾へは経済的威圧ではこのシナリオから逸脱、自ら選択肢を狭めています。発想も転換を期待したいのですが。

2023年12月28日 20:21 』