ドイツのEV補助金、1年前倒しで停止 電動化に失速懸念

ドイツのEV補助金、1年前倒しで停止 電動化に失速懸念
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR164260W3A211C2000000/

 ※ 何事も、「実際に購入行動する消費者様」のご意向抜きには進まない…。

 ※ 「大原則」「大理想」掲げて、ゴリ押ししたところで、「そうは、問屋が卸さない」…。

『【フランクフルト=林英樹】ドイツ政府は17日から電気自動車(EV)の購入時に支給する補助金を停止すると明らかにした。2024年末まで継続予定だったが、新型コロナウイルス対策で使わなかった過去の予算の転用が違憲となり、補助金を捻出できなくなった。欧州の旗振り役だったドイツの突然の支援停止で、電動化に失速懸念が出てきた。

独政府は車体価格が4万ユーロ(約620万円)までのEVを購入する個人に対し、4…

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『独政府は車体価格が4万ユーロ(約620万円)までのEVを購入する個人に対し、4500ユーロ(約70万円)、4万〜6万5000ユーロのEVについては3000ユーロをそれぞれ補助金として支給していた。

独経済・輸出管理局(BAFA)は16日、EV購入補助金の申請が17日以降できなくなると発表した。16日までの申請分については「要件を満たしている場合に限り、順次承認していく」としている。

気候変動対策として独政府は30年までに1500万台のEV普及を掲げ、16年からEVの新車購入補助制度を始めた。これまでに210万台のEVに対し、100億ユーロ(約1兆5500億円)の補助金を支払ったという。

電動車の販売を促進するため、独政府は20年7月、補助額を増額した。23年1月からプラグインハイブリッド車(PHV)を補助対象から除外し、EVのみを対象とした。さらに9月からは個人購入者に限り、企業や団体によるEV購入は対象から外れていた。

突然の補助金停止は、政府予算をめぐる司法判断が影響した。独憲法裁判所は11月、コロナ対策で未利用だった600億ユーロを気候変動対策の基金に転用した過去の補正予算が、憲法に相当する基本法に違反すると判断した。このため同基金を活用していたEV購入補助についても「できるだけ早く終了することが決まった」(BAFA)。

支援停止の影響は小さくない。ドイツでは22年、47万台のEVが販売され、新車全体における割合は18%に達した。ただ23年9月の制度変更によって同月のEV販売は3万台と前年同月比で29%減った。今回は補助金停止の事前告知がなかったため、大きな駆け込み需要が起きず、大幅な回復は見込みづらい。

フランス政府も15日から中国などアジアで生産し輸入するEVについて新たに補助金の対象外とすると発表した。米テスラの「モデル3」や仏ルノーの「ダチア・スプリング」など人気車種に、5000〜7000ユーロの補助金がつかなくなる。

EVはエンジン車と比べ5割程度価格が高い。欧州連合(EU)域内で1、2番目に大きな自動車市場である独仏が相次ぎ補助金を停止・縮小したことで、EUが政策として進めるEVシフトにブレーキがかかる可能性もある。

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山本真義
名古屋大学未来材料・システム研究所、名古屋大学大学院工学研究科電気工学専攻 教授コメントメニュー

ひとこと解説 CAFE等の二酸化炭素排出量の制限規格を盾に、世界をコントロールしようとした欧州の電動車戦略が失速しています。

この記事にある通り、ドイツでは予定の1年前倒しの補助金廃止されたのに対して、中国政府は電気自動車(EV)など新エネルギー車に対する自動車取得税の減免措置を2027年末まで延長すると発表しています。それぞれの電動車に対する補助金戦略は、各国における電気自動車業界の活況を反映しています。

米中経済対立を経て、既に中国では電動車部品のほとんどを内製できるようになってきており、今後はその低コストの中国製EVが欧州を席巻していく可能性が出てきました。
ドイツと共に中国のEVの動きにも注目です。

2023年12月17日 11:49 (2023年12月17日 18:58更新)
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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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ひとこと解説 EUはグリーンディールのもとで再生可能エネルギーやグリーン水素の供給拡大を目指しています。この分野ではまだ多額の投資や技術革新が必要で、それを支える経済政策が不可欠になります。

気候変動はマクロ経済とくにインフレに影響を及ぼす可能性が高いため、世界では金融政策でも脱炭素を支援できないか議論がありましたが、現在のようにインフレが目標を超えており金利が大きく引き上げられた状況では企業の脱炭素を間接的に支援するのが難しくなっています。

本来気候変動対応は政府の対策が不可欠なので財政政策で比較的長く支援することが必要です。裁判所決定を受けて、気候対策としてより長期的に財政措置がとれるか早急に検討が必要です
2023年12月17日 8:13いいね
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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察 ドイツはこれまでロシアからの安いエネルギーによって製造業の競争力を維持していたが、それがロシア制裁で難しくなったことで、補助金を中心とした産業政策に移行しつつある。

その時の切り札だったのがコロナ対策予算の残金を産業政策に振り向ける政策であったが、それも裁判所に止められ、厳しい状況に。

GXとロシア制裁と財政均衡は同時に成立しないトリレンマ。GXを進めようとすればロシア制裁を解除するか、財政均衡をあきらめるしかない。ドイツは脱炭素、脱ロシア、脱原発というトリレンマも抱えている。

2023年12月18日 11:06いいね
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今村卓
丸紅 執行役員 経済研究所長
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別の視点 内燃機関車とその部品産業が経済と雇用を支えてきたドイツにとっての政策選択の優先順位も垣間見えた気がします。

EV普及が何よりも優先するのなら、違憲の可能性が高まった時点で代替策の準備に動き、切れ目のない対応をしたのでは。

気候変動対応の諸施策と多額の補助金も、産業構造や雇用に大きな変化をもたらすのなら影響を受ける業種や労働者から抵抗を受けるのは当然では。気候変動対策が絶対、最優先という覚悟ができている国はまだないと思います。

また、各国で多額の補助金が使われる業種や製品なら公平な自由競争はあり得ず、保護主義に正当性が与えられ、政策と優先課題に振り回されるビジネスになると割り切るべきだと思います。

2023年12月17日 17:56 (2023年12月17日 21:31更新) 』