法務部門に人材難 人権や国際化の業務増に追いつかず

法務部門に人材難 人権や国際化の業務増に追いつかず
日経企業法務税務・弁護士調査
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC303BX0Q3A131C2000000/

 ※ 今日は、こんな所で…。

 ※ 前記の記事は、ごく初歩的な「民法」の話しだった…。

 ※ しかし、これが「企業法務」ということになると、「会社法」「合併・会社分割」などの、「企業再編」に関する知識、「企業会計(貸借対照表、損益計算書など)」に関する知識…なんかが、加わってくる。

 ※ さらに、会社実務となると、「税制」に関する知識も、必要となる…。

 ※ さらに、外国企業との提携、M&Aなんかやろうとすると、語学力も必要となってくる。

 ※ むろん、大陸法系と英米法系では、法体系が違うから、比較法的な知識も必要となる…。

 ※ そういうものを「兼ね備えた人材」なんて、何人いるんだ?

『主要企業で法務部門の人材難が深刻になっている。日本経済新聞が230社以上の法務担当者に部門の課題を聞いたところ「スタッフ不足・採用難」などに回答が集中した。

事業が国際化し、経済安全保障や「ビジネスと人権」などESG(環境・社会・企業統治)関連にも法務部門の役割が広がっている。企業は知識共有の仕組みづくりや、デジタル技術の活用による効率化で対応を急ぐ。

日本経済新聞が実施した2023年の「企業法務…

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『日本経済新聞が実施した2023年の「企業法務税務・弁護士調査」で、主要企業239社の法務担当者に法務部門が抱える課題を優先順位が高い順に3つまで挙げてもらった。最も優先すべき課題としては「スタッフ(一般法務部員)数の不足・採用難」を挙げた企業が89社と最多で、優先順位の3番手までに挙げた企業を含めると167社と全体の7割を占めた。

右肩上がりの求

法務人材の転職支援を手掛ける事業者には幅広い業種や規模の企業から経験者などの求人が殺到している。企業の管理部門などの人材紹介を手掛けるMS-Japanは「過去3年法務の求人数は右肩上がりで、経理や人事系職種と比べても倍率は高水準だ。常時求人を出している大手企業も多い」(清水悠太執行役員)という。新興企業でも、管理職やテクノロジー法務に知見のある人材の引き合いが強い。

かつては契約実務の経験や法的知識、語学力を備える職人タイプの人材が重宝されたが、最近はスキルを踏まえて事業の成長に結びつけられるような人材が求められる傾向がある。

法務部門の管理職などの人材紹介を手掛ける企業法務革新基盤(東京・千代田)の野村慧・最高経営責任者は「例えばフィンテックのように、企業自身が経験のない新たな領域でイノベーションを進めるための法的対応にあたれる人材の需要は高まっている。求められる人数も増え、人材の幅も広がる一方だ」と話す。

だが旺盛な需要に対して求職者数の伸びは鈍い。海外では企業の法務担当者を弁護士資格を持つ人材でそろえる企業も多いが、日本では社内弁護士は限られている。

法科大学院(ロースクール)出身者を自社で育成したり、他社の法務部での実務経験者を中途採用したりするのが主流だ。野村氏は「人材が足りておらず、企業内での育成も追いついていないとの声も多い」と指摘している。

採用難を受け、年齢や経験などの採用条件を緩める企業も相次ぐ。一定のコミュニケーション力やITリテラシーを条件に「法学部卒の社会人経験者なら法務未経験でも」「経験者なら50代も可」という例もみられる。

弁護士ドットコムは企業側のニーズの高まりを受け、21年から弁護士以外の法務スタッフ紹介を本格的に手掛けるようになった。現在は20人のコンサルタントで対応している。キャリア事業部の西村英貴事業部長は「法務部門は情報発信の機会が少ないが、どんな仕事ができるかなど、条件面に現れない自社の特徴や強みを自らPRする姿勢も必要だ」と話す。

知識共有に工夫

人材不足に続き、最も優先すべき課題として多く上がったのは「知識・ノウハウの共有・継承が難しい」で、56社が挙げた。3番手までを入れると168社と7割を超えた。法令調査や契約を巡る企業内外のやりとりの経緯、法改正対応のプロジェクトなど、法務対応を巡る多様な知識やノウハウが個々の担当者に属したまま、共有や引き継ぎに悩む企業も多い。

三井物産は2023年度、キャリア採用者の専門知識などを生かすための「ハドルミーティング」を始めた。「ハドル」はアメリカンフットボールでの短時間の作戦会議の名称で、2週に1度、30分の枠を全部員の予定に固定。その回のテーマに経験や知識のある部員が知見を持ち寄る仕組みだ。会議の招集は誰でも自由にできる。

5年ほど前からはマイクロソフトの業務ソフト「オフィス」のノート共有機能を使い、各案件の概要や経緯、責任者のコメントや弁護士意見などを部門内で共有する。資料作成や引き継ぎを大幅に効率化できたという。高野雄市法務部長は「現場の一人ひとりが利便性を実感したことで定着させられた」と話す。

リーガルテックを活用し、知識の共有を進めようとする動きもある。例えば「契約ライフサイクルマネジメント(CLM)」と呼ばれる契約書作成・管理向けサービスの導入だ。

契約書のデータやプロジェクト単位での対応プロセスを記録・共有して一元管理し、作業効率向上や担当者の入れ替わりに対応できるようにする。ただ「個人の知識やノウハウを囲い込みたがるベテランもまだ多い」(デジタルサービス企業の法務部長)との指摘もある。保守的で内向きな雰囲気になりがちな法務部門の気質をどう変えるかを課題とみる関係者もいる。

広がる担当業務

23年は輸出入規制やサプライチェーン(供給網)の点検と報告義務などをはじめ、ESG(環境・社会・企業統治)領域や経済安全保障を巡る各国によるルール導入が活発だった。
法務部門が社内の各部署との連携を含めて対応に当たった企業も多く、半数超の125社が「担当業務量が多すぎる・担当範囲が広すぎる」と答えた。業務増大への負担感がみられた。

例えば23年はビジネスと人権や人的資本などのサステナビリティーに関する開示が進んだが、専門家からは開示リスクへの注意喚起の声もあがる。渡辺純子弁護士は「開示対応には本来金融庁や厚生労働省など関連法令の所管官庁によるルールの読み込みや読み解きが欠かせない」と指摘。ルール対応になじみのない部署では独自解釈などが起きがちで、危うい開示も増えているという。

海外でも法的拘束力のあるルールの整備も進んでいる。リスクを恐れすぎて本来利点も多い開示に及び腰にならないためにも、ルール対応に知見のある法務部門の果たす役割が高まりそうだ。

(児玉小百合)』