終活アニメ・葬送のフリーレン

終活アニメ・葬送のフリーレン
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/32989909.html

 ※ 今日は、こんな所で…。

 ※ 「葬送のフリーレン」、オレも視た…。

 ※ 初めは、アマプラの「無料アニメ」で…。

 ※ 「こりゃ、名作だ…。」と思ったんで、コミカライズされた漫画の方を、kindle版で購入した…。

 ※ 現在は、放送されてるアニメを、予約録画中…。

 ※ 気づいたの遅かったんで、「第6話 村の英雄」から…。

 ※ 最初は、「葬送」とは、「ああ、エルフで長生きなんで、次々と仲間が死んでくのを、見送る(葬送する)のね。」と思った…。

 ※ しかし、違ってた…。

 ※ 縦糸は、「魔族との闘い」なんだが、何重にも「横糸」が編まれている…。
 
 ※ その一つ一つを、丹念にストーリー・テリングして行く、原作の手並みは見事なものだ…。

 ※ まあ、あれこれ批評する前に、コミカライズ版の「圧倒的画力」に打たれろよ…。
 ※ 「画力」で圧倒されたの、久々だ…。

 ※ それこそ、「火の鳥」以来か…。

『一部で終活アニメと言われている「葬送のフリーレン」を紹介します。掲載した動画は、今年、「推しの子」というアニメの主題歌「アイドル」が世界的に大ブレークして、ヒットメーカーとして知られる「YOASOBI」が、「葬送のフリーレン」の主題歌として作曲した「勇者」という曲です。原曲と、初音ミクさんに歌わせているバージョンを掲載しました。

VOCALOIDで、ここまで歌わすには、「調声」、「調教」と呼ばれる、楽曲の一音単位の調整が必要です。音符に音を当てて、並べると、正確なピッチで、きっちりと決められた時間の発声をしてくれるのですが、まさに仏に魂が入っていない状態で、単に正確なだけの音の羅列になってしまい、いわゆる機械音に聞こえてしまいます。それでも、電子音ではなく、一応、歌っているように聞こえるのは、VOCALOIDというシステムのおかげです。人が歌う時の発声のクセを、自動的に付加するように設計されているので、面白味は、まったくないですが、それなりに聞こえるようにはできています。

最近、海外の最大手のアニメ・ファンサイトでも、第一位に選ばれるなど、人気の「葬送のフリーレン」ですが、いわゆる人生を旅に見立てた、サンデーという少年誌に連載とは思えないテーマの作品です。しかも、葬送という言葉からも判るように、英雄譚として、仲間3人と、この世に仇なす魔王を討伐して、王都に帰還した後から物語が始まります。その為、このタイトルの英訳には、かなり苦労したようで、「Beyond Journney’s End」という英題が付いています。つまり、「フリーレン・旅の終わりを超えて」みたいな感じですね。

物語の構成としては、人間と比べて無限とも言える寿命を持つ長寿の一族であるエルフの少女(見た目だけ。恐らく1600年くらい生きているので、人間基準だとオバアさん)が、寿命を迎えて永遠に別れる事になった仲間たちと、かつて辿った魔王討伐の旅を、新しい仲間と共に辿りながら、主人公の回想の中で、過去と現在を往復しながら、ファンタジー世界の冒険が進行するという、何とも複雑な構造になっています。

この物語の肝は、とんでもなく規格外の寿命を持つエルフの主人公を軸にして、伝説として語られる英雄譚、実際にその場にいた英雄の一人の回想として語られる真実、後悔から始まる過去の足跡を新しい仲間と辿る旅路、時間という誰にでも平等に訪れる出来事の無常・無情、語り継がれる過去の記憶、受け継がれる意思など、計算された構図と何重にも重ねられた言葉の意味で、あぶり出される人の思いが実に「漫画で読む小説」になっている点です。

良く、小説や解説書を、「漫画で読む」という書籍は出ていますが、漫画の表現で小説に匹敵する言葉の重みを表現しているのは、実に稀有な作品です。漫画という媒体の本来のフイールドは、エッジやディフォルメの効いた絵で、読み手の感情を揺さぶる事ですから、吹き出しの言葉を、噛み締めながら読むなんて事はメインではないはず。しかし、この漫画は、絵で読む小説=絵物語なんですよね。

そして、序盤のクライマックスである「断頭台のアウラ」編で明かされる「葬送」のダブル・ミーニングは、多くの読み手を唸らせました。ここまで、物語を組み立ててから、始まったと考えると、この作家の構成力の化け物ぶりが伺われます。そして、表意文字である漢字を、表音文字である英語に翻訳するのが、いかに難しいか。英語にも、もちろんダブル・ミーニングは、ありますが、漢字二文字で表せてしまえる日本語を超える翻訳が出来ず、結局は場面で、まったく違う英文に訳すしかないという翻訳家がブチ切れそうな深みになっています。恐らく、原題に関する解説を読んでいなければ、未だに、「葬送」がダブル・ミーニングである事に気がついてない海外の読者も多いと思われます。

この従来の冒険譚になかった、構成の妙から、「終活アニメ」なんて呼ぶ人もいたりします。集約すると、10年という歳月を、一瞬と感じるほどの長寿のエルフが、既に終わってしまった冒険の日々を、回想の中で振り返りながら、80年後に新しい仲間と、新しい旅の意味を見つけながら、過去の行程を辿る旅の物語なので、まるで、人生の旅路の終わりの「走馬灯」のようにも見えるのですね。

少年誌連載の漫画なので、もちろんバトル・シーンなどもあるのですが、むしろ人気なのは、日常を描いた部分であり、過去というものが、忘却されるだけのものではなく、そこに生きた人の意思が形を変えて、現代にも受け継がれている事を、さらりと見せるのが感動ポイントなのですよ。また、敵の設定もユニークです。一つの種族として、彼らなりの生態があり、それは、必ずしも論理的ではなく、人に理解されがたい、彼らの倫理があるのですね。共存とか多様性なんて言葉では、片付けられない、種族の深い断絶が描かれていたりして、実に味付けがビターです。

序盤の山場をアニメで超えて、出来が素晴らしいので、こちらのコーナーで紹介してみました。』