ベネズエラが隣国のガイアナへ軍事侵攻する可能性

ベネズエラが隣国のガイアナへ軍事侵攻する可能性
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『ロシアがウクライナに攻め入ってから、世界中で燻っていた領土問題が再燃しています。つまり、「こうやれば、良いのだ」というお手本をロシアが示したので、同じ理屈で武力で勝てると踏んだ側が、紛争地域を自国の領土に強制的に組み込むという事を始めています。CSTO(集団安全保障条約機構)は、ロシア主導で中央アジアの安全保障を担保する組織ですが、参加国でもあるアルメニアが、ロシアの平和維持軍が入って仲裁していたナゴルノ・カラバフ紛争で、アゼルバイジャン共和国に敗北して紛争地域を奪取された事で、亀裂が入っています。これも、ロシアがウクライナ侵攻で手一杯になって、実質、仲裁役として、紛争をコントロールできなくなったのが原因です。

そして、南米でまた一つ、独裁国家で反米のベネズエラが、隣国のガイアナの紛争地域エセキボ地域を自国領土とするべく圧力をかけています。ベネズエラと言えば、マドゥロ大統領ですね。自国の潜在的な原油埋蔵量が世界一なので、故チャベス大統領の時代から、バリバリ反米です。つまり、原油取引で、米ドルの使用が強制されている事に逆らったわけですね。基軸通貨である米ドルが、その地位を保っている理由の一つが、エネルギー取引に使う通貨として、絶対的な立場を確保しているからなので、報復で徹底的な経済制裁を受けて、国が破綻しそうになっています。周辺国には、難民が押しかけていて、国際問題になっているくらいです。

現在、ベネズエラは、議会も司法も、まともに機能しておらず、マドゥロ大統領の独裁体制になっています。何しろ、形だけの選挙はするのですが、2015年の選挙でボロ負けした時には、自分の支持者に投票権を2票与えて、再選挙を実行し、それで逆転勝利を収めたくらいメチャクチャです。国の体裁を成していないと言って良いでしょう。また、この時、投票所を監視して、自分に投票しなかった選挙民の食料配給を止めるという事もしています。この時、議会の議長だったファン・グアイド氏が、不正選挙の無効を主張して、暫定大統領を宣言したのですが、国外に亡命せざるを得なくなり、その後支持率も低下した為、西側諸国の支持も失い、なし崩し的に独裁体制が継続しています。

で、問題になっているガイアナが実効支配しているエセキボ地域なのですが、もともとイギリスの植民地でした。1899年にパリで行われた仲裁裁定で、英領ガイアナの領土として認められています。ただし、聞いて判るように、植民地時代の裁定が公平であるはずもなく、これを無効であるとして、直後から紛争の種になっていました。ガイアナがイギリスから独立した時、そのままガイアナ領になったわけですが、これをベネズエラは不服としています。つまり、遡ると100年超えの領土紛争という事になります。もし、この地域をベネズエラ領とすると、ガイアナは国土の70%を失う事になるので、国として成立するのが難しくなります。なので、国家の存亡をかけて譲れないところです。そして、このガイアナを支持しているのが、南米最大の国土と人口を有するブラジルです。ベネズエラが手を出せないのは、この力関係があるからです。

なんで、今になって問題が熱くなっているかというと、このエセキボ地域で、大規模な油田が発見されたからなのですね。エクソン・モービルがガイアナの沖合で海底油田を発見して、その権益がガイアナに属する根拠になっているのがエセキボ地域を領土にしている事なのです。なので、燻っていた領土問題にマドゥロ大統領が放火して煽っています。12月3日に国民投票を行って、この地域がベネズエラの領土であると主張するかどうかを決めるとしています。ただし、前段で述べたように、ベネズエラに、まともな民主主義は存在しないので、投票の結果がどうであろうと、圧倒的な国民の支持で、領土主張に賛成という事で結果が出ます。

この原油の経済効果は、物凄くて、ガイアナは2022年には、前年比62.3%の経済成長を遂げていて、今世紀最大の経済成長を遂げている国家に躍り出ています。2023年も、好調だった前年と比べても、38%の経済成長が見込まれていて、まさに原油成金状態です。ベネズエラ側からすると、係争地として揉めていた地域の権益で、ガイアナがウハウハ状態になったので、勝手に油田開発を進めた事を問題にして、その権益を奪いたいわけですね。既にガイアナの生産量の4割に及ぶ米を輸入していたのを、止めるという通告をして、経済的な恫喝をかけています。まぁ、正直、国内がメチャクチャなので、ベネズエラに、そんな余裕があるとも思えないのですけどね。正直、輸出してくれる国があるだけでも、ありがたい現状なのです。

恐らく、ベネズエラもブラジルの支援があるので、簡単にガイアナに手を出せないので、有利な交渉条件を引き出そうと圧力をかけている段階だと思われますが、国民投票の治安維持という名目で、35万人の兵士を動員するという威嚇行動も行っています。国境沿いに配備すれば、そのまま軍事侵攻できますよね。まるで、ウクライナ侵攻の発端の構図を見ているようです。あれも、軍事演習名目で、20万弱の兵士をウクライナ国境沿いに配備してからの軍事侵攻でしたからねぇ。今のところ、国連提訴で裁定を仰ぐという流れにはなっています。マドゥロ大統領が大人しく従うかは、未知数です。

バイデン政権で、アメリカ軍が無様に追われるようにアフガニスタンから撤退して以降、武力で現状変更を行っても、アメリカに止める力も意思も無いという認識が世界に定着しています。ロシアがウクライナ侵攻を決めたのも、それを好機と見たからでしょうし、ハマスが2年越しの準備の末に、越境攻撃を仕掛けて戦闘になっているのも、それを見ていたからでしょう。そして、今度は南米です。

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