インド首相、先進国に資金・技術支援を要請 COP28

インド首相、先進国に資金・技術支援を要請 COP28
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM30EA00Q3A131C2000000/

『【ニューデリー=岩城聡】第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)で1日、インドのモディ首相が演説した。気候変動対策を巡っては、先進国と途上国が対立する。モディ氏は「(我々は)過去に犯した過ちの代償を払っている」と述べ、グローバルサウス(新興・途上国)の声を代弁する形で先進国を批判した。

COP28はアラブ首長国連邦(UAE)で開催中で、モディ氏は1日から始まった首脳級会合に出席した…

この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』

『COP28はアラブ首長国連邦(UAE)で開催中で、モディ氏は1日から始まった首脳級会合に出席した。

モディ氏は演説で先進国が排出した温暖化ガスによって、途上国が苦しんでいると訴えた。「自分だけが得をすればいい、という思考は世界を暗闇に陥れる」と説いた。

今後は先進国と途上国が「目標を達成できるよう一致団結して取り組む必要がある」と強調。「気候変動資金と技術は、グローバルサウスにとって非常に重要である」とも訴え、途上国の気候変動対策を先進国が支援するよう求めた。

自らが議長を務めた9月の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の首脳宣言で掲げた「2030年までに再生エネルギーを3倍にする」という目標も、重ねて表明した。先進国に対し、再生エネの活用推進などで50年までに二酸化炭素(CO2)の削減効果が排出量を上回る「カーボンネガティブ」の実現も求める見通しだ。

気候変動問題では、新興・途上国の間で先進国への不満がくすぶる。

先進国は石炭や石油といった化石燃料を使って経済発展を遂げた。途上国などはその過程で発生した温暖化ガスが異常気象を引き起こし、被害を受けているとみる。先進国はこうした過去の責任を果たし、途上国に資金や技術の支援をすべきだと訴える。

ただ、経済・政治力で劣る途上国側の主張は通りにくかった。そこでインドが「化石燃料を使って豊かになった先進国が負うべき削減の責任を、我々に転嫁するのか」というグローバルサウスの思いを後ろ盾に、存在感を高めようと腐心してきた。

台頭の契機となったのが、英国グラスゴーで21年に開かれたCOP26だ。採択された「グラスゴー気候合意」では、当初案にあった石炭火力発電の「段階的廃止」との表現に、インドが反対を表明。最終的に「段階的に削減」と弱まった。インドが資金面などから石炭火力に依存せざるを得ない途上国の意見を通した形だ。

COP28では、気候変動による被害を受けた途上国を支援する基金制度で合意した。持続可能な開発に関する国際研究所(IISD)のシニア・ポリシー・アドバイザーのシッダールト・ゴエル氏は、基金への資金拠出先をめぐり「インドが先進国の歴史的な責任について繰り返し言及するだろう」とみている。

経済成長が続くインドは既に温暖化ガスの主要排出側に立っている。日本の総務省の資料によると、インドのCO2排出量(20年)は中国、米国に次いで世界第3位で、日本の2倍以上だ。世界最大となる14億人の人口を抱え、今後も内需拡大に伴ってエネルギー需要が高まるのは確実だ。

ただ電源構成は石炭火力発電に偏り、エネルギー需要の約8割を化石燃料に依存したままだ。シン電力相兼新・再生可能エネルギー相は11月に「COPでは石炭の使用量を減らすように各国から圧力がかかるだろうが、妥協するつもりはない」と述べた。

インドは27年の石炭生産量を現在よりさらに4割増やす計画を打ち出す。CO2削減を進める先進国からは批判が出る可能性もある。

【関連記事】

・英国王、気候変動対策「軌道から外れる」 COP28で警鐘
・途上国の気候変動被害、官民で復旧後押し 基金案で合意
・日UAE、リサイクル工場を共同建設 ペットボトルを再生 』