「プーチン同志」と砲弾100万発 ロシア・北朝鮮の内実
風見鶏
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM201YF0Q3A121C2000000/
『北朝鮮とロシアの軍事協力がロケットの発射から衛星に搭載する撮影機器や核・ミサイルに関する機微な技術まで拡大するとの見方が出てきた。ウクライナ侵攻で米欧と対立し孤立するロシアを北朝鮮が最大限活用しようとしている。
各国の北朝鮮専門家が監視を続ける港がある。北朝鮮の北東部、ロシアとの国境に近い羅津(ラジン)港だ。
英シンクタンク、王立防衛安全保障研究所が公開した衛星写真。10月12日にロシア船籍の「…
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』
『10月12日にロシア船籍の「マリア」とみられる船舶が羅津港に停泊している。同じ船は14日、ロシアのドゥナイ港で確認された。北朝鮮側で荷物を積み、ロシア側で荷下ろししたと研究所は分析する。
米ホワイトハウスも9月の羅津港の衛星写真を公表した。ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記による会談と近い時期のものだ。韓国国家情報院はウクライナ攻撃用の100万発以上の砲弾が北朝鮮からロシアに送られたとみる。
【関連記事】
・北朝鮮「衛星」周回軌道に 韓国分析、ロシアが支援か
・北朝鮮衛星「ロシアが技術支援」と断定 韓国情報機関
北朝鮮の朝鮮中央通信は記事でロシアのプーチン大統領の呼称を変えた。朝鮮戦争休戦70年の行事で対ロ外交を本格化させた7月以降、従来の「プーチン大統領」が減り「プーチン同志」という表現が増えた。
「同志」は通常、社会主義体制のなかで使われる。ロシアを同じ陣営の中の国として取り込み、日米韓と対抗しようとする意図がうかがえる。
冷戦期の北朝鮮はソ連と同盟関係にあった。1961年の友好協力相互援助条約でソ連の軍事援助を得たものの、根底には不信感があったとされる。
70年代に南北交渉の韓国代表として訪朝した康仁徳(カン・インドク)元統一相は金日成主席の言葉を記憶する。
「フルシチョフに経済相互援助会議(コメコン)に入ってくれと言われて断った。ソ連は大学生で我々は小学生だ。ソ連のものは高値で売りつけ、北朝鮮のものは安値で買う。地下資源はすべて持っていかれる」
ソ連は同盟関係にあっても核心の技術は北朝鮮に与えなかったとみられる。韓国軍の分析によると、北朝鮮は70年代に中東からソ連製ミサイルを調達した。分解して製造する「逆設計」で弾道ミサイルをつくった。
90年のソ連と韓国の国交樹立や、その後のソ連崩壊を受け両者は疎遠になる。冷戦後はソ連出身の技術者が北朝鮮に渡り、ノウハウを伝授したとされる。密輸やハッキングも駆使してきた。
公然と軍事協力を打ち出す現在のロ朝関係はこれまでと異質にみえる。
「北朝鮮は過去は真剣に米国との関係正常化に取り組んだが、今は追求していない。ロシアによるプルトニウムの支援も将来の懸念材料だ」。10年までに複数回、北朝鮮・寧辺の核施設に入った米国の核物理学者、ジークフリート・ヘッカー氏は警鐘を鳴らす。
米ワシントンを射程に入れる長距離弾道ミサイルと日韓を攻撃する中短距離ミサイル、偵察衛星、そして核弾頭。北朝鮮の描く軍事力の完成にロシアが加担するなら、金正恩氏にとって100万発の見返りは大きい。
ロシア、北朝鮮の関係には中国の存在も影響する。ソ連が1強だった冷戦期と違い、いまは中国が台頭しロ朝の力をしのぐ。3者のパワーバランスの変化がロ朝の接近を促している側面もある。
(安全保障エディター 甲原潤之介)
【関連記事】
・[社説]北朝鮮の偵察衛星は新たな脅威に
・北朝鮮衛星、深まるロシアとの技術協力 有識者に聞く 』