シーク活動家殺害、インド当局者が指示 米検察が起訴
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN29EAX0Z21C23A1000000/
『【ワシントン=芦塚智子】米連邦検察当局は29日、インドからの独立運動に関わる米国在住のシーク教徒男性を殺し屋に殺害させようとしたとして、インド国籍の男を起訴したと発表した。男がインド政府当局者から指示を受けていたとしている。バイデン米政権は殺害計画についてインド政府に懸念を伝えていた。
起訴状によると、標的となった男性は米国籍を持つ。シーク教徒が多いインド北部のパンジャブ州の独立と独立国家の建国を目指す団体の主催者を務めており、インド政府を厳しく批判している。
インド政府当局者はインド国内から殺害計画を指示したとみられる。当局者と容疑者の男は殺し屋に10万ドル(約1470万円)の報酬と引き換えに、ニューヨークで男性を殺害するよう依頼した。殺し屋は実際にはおとり捜査官だった。
2023年6月、当局者と男は共犯者を通しておとり捜査官に前金を支払い、さらに標的の男性の自宅住所や電話番号、日々の行動などの情報を提供した。
6月にカナダでシーク教指導者が殺害される事件が起きた後、容疑者の男はおとり捜査官に対し、この指導者も標的の1人だったと明かした。「我々には多くの標的がいる」と話したという。
カナダの事件でトルドー首相はインド政府の関与を指摘し、カナダとインドの外交問題に発展した。
米国家安全保障会議(NSC)のワトソン報道官は声明で、インド政府当局者が殺害計画に関与した疑いについて「我々は最高レベルの直接的な対話でインド政府に懸念を表明した」と指摘。インド政府は問題を深刻に受け止め、捜査すると明言したという。
ワトソン氏は、インド政府による内部捜査を支援するために情報を提供していると説明。「インド政府の捜査結果に基づく説明を引き続き期待する」とした。
米メディアによると、バイデン大統領は9月の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で、インドのモディ首相に直接、一連の問題に関する懸念を示したという。
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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説
今後の世界秩序を考える上では、世界で最も人口が多く、将来の経済発展への期待も大きいインドの「立ち位置」が、非常に重要。
米欧「民主主義陣営」と中ロ「専制主義陣営」が対立する構図の中で、インドは現在、両者の中間に位置している。
インドはBRICSのメンバーで、対ロ経済制裁には加わらずにロシアから原油を輸入し、同国の戦争継続を間接的に助けている。
一方で、国境紛争などで中国と対立し、米国主導のIPEF(インド太平洋経済枠組み)に参加している。
そうした中で、モディ政権による米国内でのシーク教徒活動家殺害指示疑惑が浮上した。カナダが強硬姿勢をとって中国との関係が悪化した前例もある。米国はどうするだろうか。
2023年11月30日 8:01 (2023年11月30日 8:02更新) 』