台湾総統選、米中暗闘の痕跡 親米・与党候補がリード

台湾総統選、米中暗闘の痕跡 親米・与党候補がリード
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM20AGX0Q3A121C2000000/

『2024年1月投開票の台湾総統選に向けて米中が暗闘をくり広げている。野党票を分散させて親米路線の与党・民主進歩党(民進党)の頼清徳・副総統のリードを維持したい米国と、野党連合の結集で中国寄りの政権に交代を促したい中国の駆け引きが続いている。終盤戦まで水面下の争いは続きそうだ。

米中の暗闘はまず台湾電機大手・鴻海(ホンハイ)精密工業の創業者である郭台銘(テリー・ゴウ)氏を巡って起きた。

10月に中…

この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』

『10月に中国当局が中国本土の鴻海の税務調査に着手したと発表した。台湾メディア、上報は「中国国家安全部門のトップが指示をした」と伝えた。安全部門のトップは中国共産党の習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)の側近、陳文清氏だ。

中国、民進党の頼氏のリードを警戒

台湾最大野党・国民党から総統選への出馬を目指した郭氏は党内の選考で敗れ、8月に無所属での立候補を表明した。郭氏は台湾きっての親中派として知られる。なぜ中国は「身内」ともいえる郭氏に揺さぶりを掛けたのか。

野党からは国民党の侯友宜・新北市長と第3政党「台湾民衆党」の柯文哲・党主席がでており、与党への批判票を3人で奪い合う構図になる。世論調査の支持率で先行する民進党の頼清徳・副総統がさらに有利になる状況を警戒した可能性がある。郭氏は24日、総統選からの撤退を表明した。

米国、野党結束を切り崩しか

米国は野党の結束を阻みたいようにみえる。郭氏の出馬の最大の障害はペアを組んででる女性の副総統候補だった。米国籍を放棄しないと出られない決まりで、米国の対台湾窓口機関、米国在台協会(AIT)は「3カ月から半年程度かかる」と説明していた。届け出に間に合わないとみられていた。

ところが蓋を開けてみれば1カ月余りで放棄できた。郭氏の出馬を促すために米国が協力したとの見方は根強い。

野党の「合意」に中国関与?

国民党と台湾民衆党の野党連合を巡っても不可解な出来事が起きた。多くの専門家が両党の関係はぎくしゃくしており無理だろうとみる状況で、15日に突然「合意」を発表した。会議を仕切ったのは中国に近い国民党の馬英九前総統だった。

合意の直前の11月2〜5日にかけて馬英九基金会の執行長を務める蕭旭岑氏が北京を訪問した。蕭氏は15日の会談にも馬氏とともに同席したとされる野党連合のキーマンのひとりだ。

馬総統時代に行政院長(首相)を務めた劉兆玄氏も合意の前日の14日に訪中し、台湾問題を担当する最高指導部の王滬寧(ワン・フーニン)氏と会談。王氏は「両岸(中台)関係の平和」を呼びかけている。

馬氏サイドは否定するものの、急転直下の合意に「中国の関与」があるとの観測が広がった。

柯氏は16日にテレビに出演し、興味深い話をしている。AITから電話があり、中国政府の介入がなかったか問われたと主張した。今年2月以降、ほぼ毎週、AITと連絡を取っているとも訴えた。

ほぼ同じ時期にバイデン米大統領は記者会見で、サンフランシスコで会談した中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席に台湾総統選に「介入しないよう警告した」と明らかにしている。野党連合の合意は24日に破棄されそれぞれ出馬することになった。

地政学的に重要な場所に位置する台湾に新たな親米政権が樹立するのか、親中に傾くかは米中対立の行方に大きな影響を与える。投票箱の蓋が閉まるまで米中の暗闘は続きそうだ。(台北=羽田野主)

[日経ヴェリタス2023年11月26日号]』