国連安保理、機能不全解消に一歩 米国の譲歩色濃く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN160840W3A111C2000000/
『国連安全保障理事会は15日、緊急会合を開き、パレスチナ自治区ガザにおける戦闘の「緊急かつ人道的な一時休止」を要請する決議案を採択した。民間の犠牲が増え続けるなか、国際平和に責任を持つ安保理は1カ月以上にわたり実効性のある解決策を示せなかった。5回目となる決議案の提出でようやく、機能不全の解消に向けた一歩を踏み出した。
「安保理による最初の、重要かつ遅すぎた一歩だ」。非常任理事国を務めるアラブ首長…
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』
『非常任理事国を務めるアラブ首長国連邦(UAE)のヌセイベ国連大使は決議案の採択後、安保理でこう演説した。
イスラム組織ハマスが10月7日にイスラエルを攻撃して以降、安保理は4回にわたってガザの戦闘に関する決議案を諮ってきた。だが常任理事国が代わる代わる拒否権を行使したことで決議はまとまらず、調停機関としての役割を全うできずにいた。
大国が絡む戦争や紛争では常任理事国の利害が錯綜(さくそう)し、安保理は幾度となく機能不全に陥ってきた。ロシアによるウクライナ侵攻でも安保理は3回、決議案を提出したがロシアなどが拒否権を行使した結果、いまだ決議案の採択には至っていない。
ガザ情勢を巡る決議案が4回の否決の末、ようやく採択に至った背景には米国の譲歩がある。10月下旬にブラジルが提案した決議案は米国の反対で否決されると、「1カ国の拒否権発動で退けられた」(ブラジルのダネセ国連大使)と米国を批判する声は高まった。
10月下旬に「人道的な一時休戦」を求める総会決議案が121カ国の賛成で採択されると、グテレス事務総長も「人道的な観点から戦闘を止めようとする声が世界的に強まっていることを歓迎する」との声明を公表。総会決議案に反対票を投じた米国の孤立は一段と深まった。
安保理が手をこまねいているあいだにも、ガザの情勢は厳しさを増している。10月7日の戦闘開始以来、ガザでの市民を含めた死者数は1万1千人を超え、そのうち4割を子どもの犠牲者が占める。15日にはイスラエル軍がガザ北部の地区最大のシファ病院に突入するなど攻勢を強めており、民間人の被害が拡大する懸念が高まっている。
国連職員の死者数も100人を上回り、過去に類を見ないスピードで増え続けている。ある国連幹部は決議案の会合前、「ガザの問題で何も手を打てなければ、安保理改革を求める声は一段と高まるだろう」と危機感を示していた。
米国の世論にも変化が出てきた。米公共ラジオ放送NPRなどが6〜9日に調査したことろ、イスラエルの対応が「行き過ぎ」と回答したのは38%だった。10月11日の調査から12ポイント増え、「適切」と答えた人の割合に並んだ。米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は、米国務省内でも早期停戦などを訴える声が上がっていると報じた。
国内外の世論が変化する中、米国は厳しい選択を迫られた。「ハマスへの非難や自国民をテロ攻撃から守る権利に触れていない決議案に賛成票を投じることはできない」(トーマスグリーンフィールド大使)としながらも、15日の緊急会合では拒否権の発動は見送った。
トーマスグリーンフィールド大使は記者団に「今回の決議案は特に人道的なニーズに焦点を当てている」と過去、拒否権を行使した決議案との違いに言及した。だが今回採択された決議案にはブラジルの決議案に記されていたハマスを非難する文言が盛り込まれておらず、米国の譲歩が色濃くにじむ形となった。
常任理事国が拒否権の行使を見送ったことで、ガザにおける人道支援の取り組みは一歩前進する。拘束力のない国連総会決議とは異なり、イスラエルも含めた国連加盟国は安保理決議に従う義務があるためだ。
ただ今後はイスラエル側の反発も予想される。イスラエルのミラー次席国連大使は「安保理が採択した決議は現地の実情からかけ離れたものだ」と批判。ハマス側が人質の返還などに応じるまで戦闘を続ける可能性を示唆した。
(ニューヨーク=三島大地、吉田圭織、佐藤瑠子)』