同床異夢のIPEF、内向く米 アジア新経済圏の実利薄く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN150Z70V11C23A1000000/
※ トランプ政権2.0ともなれば、IPEFからの離脱…、という可能性もあるわけだ…。
『【サンフランシスコ=飛田臨太郎、牛込俊介】米国が主導する新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の閣僚会合が14日、閉幕した。脱炭素と税逃れ防止で妥結が固まったものの貿易分野は先送り、参加国の実利は薄まった。米国が描くアジア経済圏での主導権確保は道半ばだ。
バイデン米大統領が構想を打ち出したIPEFは2022年9月に正式に交渉入りした。インドやインドネシアなどのグローバルサウスの大国も…
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『インドやインドネシアなどのグローバルサウスの大国も加えて、中国抜きの経済連携を打ち立てる狙いがある。
今回の閣僚会合で脱炭素に向けた「クリーンな経済」と、税逃れ防止などで協力する「公正な経済」の2つの柱で合意のメドがたった。16日にも開く首脳が集まる場に報告後、詳細を公表する。
新興国が脱炭素や腐敗防止を進められるよう日米などの先進国が継続的に支援する。5月に合意した重要物資の供給網で協力する協定も正式に署名した。いずれも参加国の対立点がほとんどない分野だ。
貿易・投資を拡大するための貿易分野の交渉は溝が深くまとまらなかった。米国は労働や環境の高い基準を満たした製品開発を求めるルールを求めた。だが東南アジアの国々はもともと関税削減というアメがない枠組みで、雇用や環境に厳しい基準を課されることに反発した。
背景には低賃金労働者や環境対策の進んでいない工場で作られた新興国製品の流入が、米国の製造業の衰退を招いたとの米世論がある。12日にはサンフランシスコの会場周辺で自由貿易は労働者の搾取につながるとの大規模デモが発生した。
米国は日本とも一時、対立した。今春、海洋環境の改善を目的に捕鯨禁止を協定に盛り込もうと動き、日本は脱退もちらつかせて米国に撤回させた。
米産業界は米連邦議会の反対で交渉が中断したデジタル分野を念頭にIPEFのメリットが限定的になったと反発を強めている。米商工会議所は「通商政策の臆病なスパイラルは米企業の国際競争力を脅かす」と強調する。
米国はトランプ前政権で環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱した。バイデン政権も自由貿易交渉から背を向け、IPEFからも関税削減を除いた。西村康稔経済産業相は14日の記者会見で「米国も貿易分野の議論を継続すると約束しており、日本が議論を主導したい」と述べたが道のりは険しい。
TPP離脱後、米国のアジア経済圏での存在感は薄まった。逆に中国はTPPの加盟申請や既存の自由貿易協定(FTA)の強化などアジアで相次ぎ手を打つ。
昨夏にはシンガポールとチリ、ニュージーランドの3カ国によるデジタル貿易に関する協定「デジタル経済パートナーシップ協定(DEPA)」への参加交渉を始めた。
バイデン政権はIPEFの協定について、米連邦議会の承認を求めない方針だ。超党派の拘束力を持たない。24年大統領選を経て共和党政権が誕生すれば、TPP同様に米国が離脱する可能性もある。
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