マクロン仏大統領がウラン外交 中央アジア生産国に接近

マクロン仏大統領がウラン外交 中央アジア生産国に接近
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『フランスのマクロン大統領は1、2両日、中央アジアのカザフスタンとウズベキスタンをそれぞれ公式訪問し、両国との間で資源エネルギー分野を中心に経済協力を強化することで一致した。原子力大国のフランスが燃料となるウランの安定調達へ、世界最大の生産国カザフと5位のウズベクに急接近した。

「われわれは重要な経済パートナーだ」。マクロン氏は1日にアスタナで開いたトカエフ・カザフ大統領との会談でこう語り、「戦略的、経済的関係を前進させることができる」と強調した。

両国間では1日、戦略的鉱物での協力に関する共同宣言が発表された。主要な戦略的鉱物にはウランやレアメタル(希少金属)が含まれるとみられる。地質学的研究や両国の共同プロジェクトの実施などを盛り込んだ。

トカエフ氏は1日に開いたカザフ・フランス・ビジネスフォーラムで、「カザフは欧州の原子力燃料の4分の1以上を供給している」と指摘した。そのうえで「さらなる協力に向けたとても大きな潜在力がある」と強調した。

さらに両国の企業間では1日、仏原子炉メーカーのフラマトムとカザフの国営原子力会社カザトムプロムが協定を結んだ。使用済みの燃料を再処理し、効率的に使い続ける核燃料サイクル分野で協力を拡大する。

マクロン氏は2日にはウズベクの古都サマルカンドでミルジヨエフ大統領と会談し、両国関係を戦略的な水準に引き上げるとする共同声明を採択した。企業代表らを交えた拡大会合では経済協力の優先部門として、天然資源の採掘や戦略的原材料の加工などを挙げた。

仏大統領府によると、核燃料サイクル会社オラノはパイロット事業のひとつとして、ウズベクでのウラン採掘に着手した。ミルジヨエフ政権下で経済の自由化や政治の民主化が進み始めたことを評価し、ウラン関連の事業を広げたい考えだ。

フランスがカザフやウズベクとの経済関係の強化を急ぐ背景には、電力の6〜7割を原子力に依存するフランスにとって、ウランの安定した調達は欠かせないとの国家方針がある。

仏紙ルモンドによると、フランスのウラン調達先はカザフが最も多く27%を占める。アフリカのニジェールが20%、ウズベクが19%で続く。世界原子力協会によると、世界のウラン生産量でカザフは43%を占め、国別で圧倒的なトップだ。

ニジェールで2023年7月末、軍事クーデターが起き、同国からのウラン調達に不安が強まった。ロシアも世界6位のウラン生産国だが、ウクライナ軍事侵攻以降、欧州は天然ガスなどと同様、ロシアとのウラン取引を減らそうとしている。

こうした国際情勢の変化に直面したフランスはウラン外交を活発にせざるをえない。フランス国際関係研究所(IFRI)のアソシエート・リサーチ・フェロー、ミカエル・レビストン氏「エネルギー安全保障の視点から、カザフとウズベクに接近しようとするのは自然な流れだ」と指摘する。

フランスは将来、カザフが検討する原子力発電所の建設に協力する可能性もある。レビストン氏は「カザフが外交関係を多様化させようとしており、原発のような重要施設でロシアに建設協力を依頼するとは考えづらい」と述べ、仏企業が受注する可能性を指摘した。

トカエフ、ミルジヨエフ両大統領は22年11月にフランスを訪問したばかりだ。1年足らずのうちに今度はマクロン氏が両国を訪問し、関係の深化を急ぐことになった。 』