国連安保理、ガザ巡り拒否権の応酬 4度目も決議失敗

国連安保理、ガザ巡り拒否権の応酬 4度目も決議失敗
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN260620W3A021C2000000/

『【ニューヨーク=朝田賢治】イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突をめぐり、国連安全保障理事会で米国やロシアなど常任理事国が拒否権行使の応酬を繰り広げ、4度目の採決も決議成立に至らなかった。イスラエルによる地上侵攻が近づくなか、人道回廊の確保や戦闘中断などの対応が取れず、機能不全がますます鮮明になっている。

安保理は25日に会合を開き、米国とロシアがそれぞれ提案した決議案を採決に掛けたが、どちらも否…

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『安保理は25日に会合を開き、米国とロシアがそれぞれ提案した決議案を採決に掛けたが、どちらも否決された。7日のハマスによる攻撃で衝突が始まって以来、安保理が同問題をめぐって採決するのは16日のロシア案、18日のブラジル案に続き4度目。いずれも成立しなかった。

米国案はハマスを明確に批判した上で、人道回廊の設置を可能にするため戦闘の一時中断を求める内容。15の理事国のうち10カ国が賛成したものの、ロシアと中国が拒否権を発動した。

続いて、ロシアもハマスへの非難声明を盛り込んだうえで、より幅広い即時停戦を求める新たな決議案を提出。中国やUAEなど4カ国が賛成したが、可決に必要な9票に届かなかった。米英が反対し、日仏など9カ国が棄権した。

米国案への拒否権行使の理由として、ロシアは「停戦の呼びかけが含まれておらず、ガザの民間人への恣意的な攻撃に対する非難もない」ことを挙げた。中国は「停戦と戦争の終結を求める声を反映していない」とした。

米国は18日に採決されたブラジル提案の決議案に拒否権を発動した。ブラジル案は人道的アクセスに向けた戦闘の一時中断を求める現実的な内容で、日中仏を含む12カ国が賛成票を投じていたが、米国は「イスラエルの自衛権について言及がない」ことを理由に廃案に追い込んだ。

今回の米国案は、理事国の意向をくんでイスラエル固有の自衛権に言及しなかった。だがロシアのネベンジャ国連大使は25日の会合で「1週間前、米国はブラジルが作成した議案に拒否権を発動した。今回は政治的で、疑わしい条項に満ちた案を押し通そうとしている」と述べ、米国の拒否権行使への対抗措置であることを示唆した。

18日に自国が起草した案を拒否されたブラジルも棄権した。米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は中ロの拒否権行使に「深く失望した」と述べた。

安保理ではロシアによるウクライナ侵攻をめぐり、ロシア軍の撤退を求める決議などがたびたび採決に掛けられたが、ロシアの拒否権発動で有効な対応を取れていない。大国間の対立の深まりが尾を引き、ガザ衝突をめぐる対応にも機能不全が波及している。

対応策を打ち出せない安保理に代わり、国連は全加盟国が参加する国連総会の緊急特別会合を26日から開く。

アラブ連盟が即時停戦や人道回廊の設置などを求める決議案を採決する予定で、国際社会の意思を示す機会になる。

だが総会決議は成立しても法的拘束力がなく、人道危機の直接的な解決に結びつく可能性は小さいままだ。 』