欧州、広がる中国製EV排除の波 報復で打撃の恐れも

欧州、広がる中国製EV排除の波 報復で打撃の恐れも
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『経済安全保障の観点から、欧州で中国製の電気自動車(EV)を締め出す動きが広がる。フランスとイタリアが購入補助の対象外とする措置を検討し、欧州連合(EU)は実態調査に乗り出した。ネックとなるのは中国勢がEVの心臓部である車載電池の世界シェア6割を握っている点だ。中国政府の報復措置で、EUのEV産業が打撃を受ける恐れがある。

「環境負荷の低減に努力しているフランスや欧州の企業に対し、我々は有利な立場…

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『「環境負荷の低減に努力しているフランスや欧州の企業に対し、我々は有利な立場を与える」。仏政府はEV購入で5000〜7000ユーロ(約80万〜110万円)の補助金を給付していたインセンティブ制度を改める。

中国製を補助金の対象外に

新制度では、EVの製造や輸送など各段階で排出される二酸化炭素(CO2)、車載電池や車体の材料構成などから「環境スコア」を算出し、一定基準を満たしたEVにのみ補助金を給付することになる。10日以降、自動車メーカーからEV仕様書の提出を受け付け、12月15日に給付の「採否」を通知する。

制度変更の狙いは、補助金対象のEVのうち3分の1を占めていた中国製EVの排除にある。仏政府によると、中国製小型車は製造・輸送過程で同型の欧州車と比べ1.5倍多くCO2を排出しており、大半が補助対象外となる見通しだ。イタリア政府も同様の措置を検討している。

仏政府による発表の数日前、EUの執行機関である欧州委員会は中国政府の補助金支援を受けた安価な中国製EVがEUに流入しているとして、調査に乗り出すと明らかにしていた。不正競争が判明すれば、中国製EVの関税引き上げも検討する。欧州委に調査するよう強く求めていたのは、仏政府だったとされる。

背景には急増する中国製EVに対する危機感がある。欧州自動車工業会(ACEA)によると、22年にEUに輸入された中国車は50万台で、売上高は93億ユーロに上った。輸入中国車の6割超に相当する31万台はEVで、EU市場における中国ブランドのシェアは22年に21年比2ポイント増の3.7%に達した。

上海汽車集団が継承した英国老舗車ブランド「MG」など、欧州ブランドを冠した中国製EVを含めると、シェアは8%に上るとEU当局はみている。今の状況が続けば、25年までにシェアは15%を超える可能性があるという。

危機感を強めるのは過去の失敗があるからだ。EUは13年、中国企業が補助金によって安価な太陽光パネルを販売しているとして、中国製にダンピング(不当廉売)課税を適用することで合意した。ただ中国政府が対抗策として欧州産ワインなどの関税引き上げを示唆。加盟国の足並みが乱れ、結果的に中国製のシェア拡大を許した。

車載電池6割を中国に依存という制約

ただ行き過ぎた中国製EV外しは自らの首も絞めかねない。というのはEVのコスト全体の3〜4割を占める車載電池については、寧徳時代新能源科技(CATL)や比亜迪(BYD)、国軒高科など中国メーカーが世界シェアの6割を押さえているからだ。

スウェーデンのノースボルトが車載電池の量産を始めたほか、26年にはドイツ北部で欧州初となるリチウム精製工場の新設が決まるなど、EUは電池の域内調達・生産に力を入れている。だが当面は中国製電池に頼らざるをえない状況が続くことから、強硬姿勢を軟化させる可能性もある。

(フランクフルト=林英樹)

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[日経ヴェリタス2023年10月15日号] 』