中国の地銀で取り付け騒ぎ

中国の地銀で取り付け騒ぎ
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/32631920.html

『 ———- 引用開始 ———-

中国の不動産開発大手・中国恒大集団の経営危機を受けて、河北省滄州市の地方銀行「滄州銀行」で取り付け騒ぎが起きた。同行が恒大に34億元(約690億円)を融資しているとの偽情報がSNS上で拡散したことが原因とみられ、8日以降、恒大が破綻すれば自分の預金が引き出せなくなると懸念する預金者が店舗に殺到した。
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滄州銀行の店頭には紙幣が高く積まれた。
SNSには恒大に融資する他行のリストも投稿されている。滄州銀行は、実際の融資額は10分の1の3・46億元だと発表し、沈静化を図っている。

13日午前、滄州市中心部の支店では、資金繰りに不安がないことを強調するため、窓口の内側には100元札が1メートルほどの高さに積み上げられていた。
預金者に冷静な対応を呼びかけるため、滄州銀行の窓口には紙幣が高く積まれていた。
来店客はまばらだったが、警備員が10人近く配置され、入り口には「滄州銀行は健全な経営を堅持している。預金はすべて保護される」とする9日付の当局の文書も掲示されていた。地元政府も騒ぎの拡大を強く警戒しているとみられる。

支店を訪れた50歳代の男性は「銀行も政府も信用できない。自分で身を守るしかない」と不安げに話した。

———- 引用終了 ———-

引用した記事の内容だと、銀行側の発表を真実として、SNSで出回った恒大集団への銀行の出資額を誤りとしていますが、これが必ずしも信じられないのが中国社会の実情です。記事の最後で50代の男性の言葉が掲載されていますが、これが中国社会における正しい振る舞いです。共産党や銀行の言う事を鵜呑みにして、信じていると、最終的に裏切られて損を押し付けられる事になります。ある程度、歳をとった人民は、過去に何度も共産党に裏切られているので、この辺りのあしらいは慣れているのですが、若者だと共産党の言う事を信じてしまうのですね。

実際、先の武漢肺炎騒動の時も、「食料は十分に確保してあるから、冷静に行動するように」という政府の広報を信じた若者世代は、直ぐに自宅に軟禁された上、必需品の配給も十分に受けられず、買い占めに走った高齢者が正しかった事を、身にしみて理解する事になります。何の根拠も無い、その場限りの言葉を、平然と吐くのが中国共産党です。なので、信じるとバカを見るのです。まぁ、銀行の現金残高なんて、簡単に表に出ない情報なので、このケースについては、SNSの噂がデマである可能性が高いですが、それにしては、数値が具体的なので、こちらが真実である可能性もあります。

この貸付額は、銀行の規模によっては、大したことは無いのですが、地方銀行にとっては、経営が傾く心配をするのに十分な額です。先日、恒大グループの経営者の許家印を始め、主だった連中が逮捕されたので、現時点で未処理の債務が反故にされる可能性が出てきたので、今回の取り付け騒ぎが起きています。つまり、破綻した企業の債務が、融資をした金融機関の経営を脅かし始めたという事です。こういう場合、中央政府は、国有企業や国有銀行などを優先して処理して、地方銀行・恒大の取引先の未払い金・建設が止まって引き渡されない未完成物件などは、後回しにするか、簡単にトカゲの尻尾斬りのように見捨てます。国内の事なので、強権でねじ伏せる事ができるからです。海外の債務については、他の外資との信頼関係が崩れるので、可能な限り返済するはずです。

現金の山を見せ金にして騒乱を抑えるなんて、子供じみていると思うかも知れませんが、実は日本も昔やっています。昭和2年に、衆議院予算委員会で、片岡蔵相が「東京渡辺銀行が破綻しました」という失言をした事で、全国で取り付け騒ぎが起きます。実は、この時点では、銀行は破綻しておらず、世の中の雰囲気として金融不安が起きている段階でした。なので、不安心理に火を付けた事になります。

4月に入ると、日本の総合商社の元祖とも言われる鈴木商店が倒産します。第一次世界大戦で、世界をまたにかけて貿易で活躍し、船1艘単位で物資の売り買いを行う「1艘買い」というダイナミックな商売で、大英帝国と直接交渉をするような大企業でした。この当時、鈴木商店の家紋の入った麻袋が世界中で見られ、まさに政商といわんばかりの影響力がありました。当時、日本の三大財閥(三井・三菱・住友)よりも手広く商売をしていました。結局、事業拡大をやりすぎて、堅実に経営を支えていた番頭格の超優秀な役員が急死した事で経営破綻しました。何せ、国会に働きかけて、法律を作らせる程の影響力があったのです。この時の優秀な社員が見切りを付けて、独立したのが伊藤忠商事です。

続いて、鈴木商店に多額の融資をしていた台湾銀行が、債権の焦げ付きで経営破綻します。これによって、暴動が起きるレベルの取り付け騒ぎが起こります。この事態を受けて、当時の若槻礼次郎内閣は総辞職に追い込まれ、危機に対処する為、既に政界を引退していた高橋是清翁を復帰させます。この人選は、金融において信用というものが、いかに大事であるかを示しています。彼が復帰を請われたのは、その経験の豊富さと人脈から、対外信用を回復できる人物と見込まれたからです。つまり、同じ言葉でも、誰が発したかによって、世の中の受け止め方が違うという事です。

高橋是清翁は、臨時で大蔵大臣に着任すると、緊急で3日間、全国の銀行を一斉に休業にします。そして、この3日間で、日銀に命令して、大量のお札を印刷させます。この時、刷られたのは、表だけを印刷した200円札です。そして、休日開けには、各銀行のカウンターに、この印刷されたばかりの札を山のように積んで、いかにも「払い戻しは、できますけど何か?」みたいな平静を装わせました。これで、取り付け騒ぎは沈静化したのですね。仕組みを知っていれば、子供騙しみたいな方法ですが、「大嘘ほどバレない」というのは、いつの世でも真実です。とにかく、暴動は収まったのです。

暴動は収まったものの、これで財政問題が解決したわけではありません。国会で「日銀特別融資及び損失補償法案」と「台湾銀行に対する資金融通に関する法案」を通過させる必要がありました。ようは、法の平等を無視した、緊急退避的な特別処置法案です。原理主義的な事を言えば、通してはいけない法案なのですが、ここでも審議が難航する中、最終的に決め手になったのは、高橋是清翁の手腕と人格に対する信頼でした。物理的な形の無い金融の世界で、最後にモノを言うのは「信用」なのです。成立したのは、会期満了の30分前でした。この法案を通して1ヶ月後に、高橋是清翁は、大臣職を辞します。ピンチヒッターとして、職務を全うし、それを良しとして職を辞したのです。国民から「ダルマさん」と愛された豪胆で陽気な人柄が、国難を解決した事例です。

中国共産党の場合、「嘘を信じさせるだけの信用の積み上げ」が無いのが問題です。銀行が、いくら資金は十分にあると言っても、引用記事に出てくる50代の男性のように、信用しないのが賢いとされる社会なのです。何度も何度も騙されてきたからです。』