全銀ネット障害、送金255万件に影響 なぜ復旧に丸2日?
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https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB126760S3A011C2000000/


『金融機関同士の資金のやり取りを担う全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)のシステムで障害が発生しました。三菱UFJ銀行やりそな銀行など10の金融機関で他行宛ての振り込みができなくなり、児童手当の振り込みなど計255万件の送金が滞りました。障害は10日朝に発生し、復旧したのは12日です。なぜ、復旧に丸2日もかかったのでしょうか。
この記事のポイント
・障害の原因
・復旧に2日かかった理由
・個人や企業への影響
障害の原因
全銀ネットのシステムには全国1000超の金融機関が接続し、1日あたり平均約13兆円の送金を処理しています。システムの不具合は、全銀システムとつなぐために各金融機関に2台ずつある中継コンピューター(RC)で起きました。
全銀ネットは7〜9日の3連休中を利用して、新しいRCに更新する作業を行っていました。今回は更新の第1弾で三菱UFJ銀行やりそな銀行など14行が対象でした。
このうち10の金融機関では、10日朝に更新後のシステムが稼働したところで障害が発生。RCが2台とも不具合を起こし、全銀ネットのシステムに接続できなくなりました。他行への振り込み処理などが滞る事態となりました。
全銀ネットは障害の原因について、RCの銀行間の手数料をチェックする機能に問題があった可能性があると説明しています。
復旧に2日かかった理由
全銀ネットで障害が発生するのは、1973年の稼働以来初めてです。日本経済の取引を支える重要なインフラにもかかわらず、システムの復旧まで丸2日もかかりました。
これだけ時間がかかったのはさまざまな要因が絡み合っています。まず、RCのプログラム改修を短時間で終えることができませんでした。
プログラムに問題が起きた時、一般的には更新前の状態に戻す「切り戻し」と呼ばれる応急対応があります。全銀ネットは「元に戻すよりも、プログラムを改修する方がリスクが小さいと判断した」と話しています。
作業が昼間に行えないというハードルもありました。今回障害が起きたシステムは平日昼間に稼働するため、作業時に影響が出た場合のリスクが大きく、復旧に向けた作業は夜間に行われました。障害が発生した10日夜にメンテナンスを試みたものの、11日の朝になっても復旧のメドは立ちませんでした。11日に再度メンテナンスをして、ようやく12日になって復旧しました。
個人や企業への影響
10日から11日までの2日間で計255万件の送金取引に遅延などが生じました。個人への送金のほか、約束手形や小切手など企業間の決済などにも幅広く影響しました。
障害が起きた10日は企業の決済や給与の振り込みが集中する「5・10日(ごとおび)」でした。愛知県の一部自治体では児童手当の振り込みが遅れるところが出ています。保険会社でも保険金などの振り込みに一部遅れが出るなど、多くの混乱を引き起こす事態となりました。
(佐藤未乃里)
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