メインフレームが使われている全国銀行データ通信システム

メインフレームが使われている全国銀行データ通信システム
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/32625419.html

『全国銀行データ通信システムは、NTTの前身である電電公社のデータ通信部門が、昭和48年に開発したデータ通信システムです。ちなみに、この頃は、今と違ってデータ通信は電電公社の独占でした。もちろん、インターネットもありませんでした。そもそも、オンラインでデータを、やりとりするという案件自体が、片手で数える程しかありませんでした。この頃のコンピューターは、完全冷房完備の一室を巨大なメインフレームと呼ばれるCPU、ディスクドライブ、磁気テープが占拠して、言語の種類はCOBOLです。その当時、オンライン処理で実績のある言語は、COBOLぐらいしか無く、恐らく現在、60~70代のプログラマだった人に聞くと、それがメインの業務であったかどうかは別にして、COBOLを使った事が無い人は皆無に近いと思います。使えないと仕事が獲れなかったからです。民営化後、NTTデータという企業として独立して、メンテナンスを引き継いでいます。

この全国銀行データシステムが、何を担っているかというと、異なる銀行間のオンライン決済を捌く為のシステムです。日本のほとんどの預金取扱金融機関が参加しており、1営業日平均約675万件、約12.2兆円の取引(年間約16.5億件、約2,993兆円)が行われるなど、決済システムの中核として大きな役割を果たしています。一応、規模と安全性において比類の無いシステムとして、世界各国の関係者の間で「ZENGIN」の名称で広く知られているとされていて、ここだけ読むと、凄そうな感じじゃないですか。実は、未だに処理はメインフレーム、言語はCOBOLのままで、技術継承が心配されるほど、枯れた技術で支えられています。

まず、メインフレーム自体が、スーパーコンピューターなど、処理速度を世界レベルで競うケースでしか採用されていないシステムです。現在のパソコンは、かつてのメインフレームの処理能力を余裕で超えます。なので、場所と環境を必要とするメインフレームなど、必要としていないのですね。古いシステムを継続して使わざるを得ない工場とか、物流とかで、細々と使われている程度です。なので、ハードウェアが、そもそもメンテナンスの継続に難点を抱えています。

そして、ソフトウェア技術者の枯渇です。恐らく、COBOLでコードをバリバリ書けるプログラマは、若くて50代、下手すると60代です。これからプログラマになろうという人は、こんな化石みたいな言語を習得しようとおもいません。Java、Python、C++などの言語を勉強するはずです。銀行系のソフトウェアハウスに就職して、ずーっと銀行系のシステム開発しか、やったことの無い人じゃないと、そもそもCOBOLに触れた事も無いでしょう。

コンピューター技術がハードでも、ソフトでも、これだけ発展したのに、システムが古いままなのは、障害を恐れて新しいシステムに入れ替える事ができなかったという事です。特に、2018年からは、このシステムは24時間、365日のフル稼働をしているので、システムの入れ替えは、大変な作業になります。

しかし、今の時代、オンライン決済の需要は増える一方で、当然ながら処理件数も増え続けます。もともと、ハードウェアの処理能力に限界のあるメインフレームでは、物理的に限界に達しますし、いくら安定しているとは言え、技術継承が心配される程に化石の言語であるCOBOLでは、未来の技術に対応できません。かなり、先が暗いシステムを無理矢理動かしているのが、その実態です。

そして、結局、システム稼働以来、初めてとなる大規模なシステム障害が、今月の10日~11日に発生しました。12日には復旧しましたが、この間に影響を受けた取引は506万件に上りました。つまり、異銀行間のオンラインでの送金が出来ず、文書依頼で送金や振込を行う必要が発生しました。原因の究明は、これからですが、恐らく錆びついたシステムの処理能力が限界に達したと思われます。

この堅牢で大げさなシステムが、異銀行間のオンライン処理を仕切っている影響で、日本の決済手数料というのは、高止まりしています。システムの維持に無駄に労力と費用が必要で、それは接続先の銀行から手数料として徴収するしかないからです。そういう意味でも、近代的なハードウェアとソフトウェアで再構築しないと、恐らく、これからもトラブルは起こります。何が原因だったとしても、システム全体にガタがきているので、応急処置しかできないからです。そして、日本のオンライン決済手数料は、高いままになります。

東証でシステムが処理能力不足で止まった事がありましたが、こういうメンテナンスの不備や、そもそものシステムの陳腐化で危ない国の基幹システムというのは、そこそこあって、単純に触るのが怖いので、刷新を先送りにしているケースが多いです。スマートフォンのハードの能力ではなく、モバイル情報処理システムとしての使いにくさで、日本で製造している企業がSONYとシャープぐらいになってしまったように、本当に日本はシステムの構築では後進的だと思います。カメラとかセンサーとか、個々の部品の性能では優れているものの、スマートフォンというシステムでできる環境を提供するとなると、まったく使い物にならなかったりします。かく言う、私のスマートフォンも日本製では、ありません。理由は、利用できる環境として、閉鎖的で使いづらいからです。

ちなみに、さすがに全銀システムの刷新は、計画はされていて、しかし、全容が示されたのは、今年の2月です。開発後のシステムの稼働は、2027年が予定されています。それまで、増大する処理がシステムに過負荷をかけて破綻しないか、割合とギリギリのタイミングだと思います。』