2017年にロバート・カプランが論じた。マルコポーロの世界が戻ってくると。
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『Francis P. Sempa 記者による2023-10-7記事「Struggle for the World-Island」。
2017年にロバート・カプランが論じた。マルコポーロの世界が戻ってくると。冷戦終了とともに、ロシアが欧州を占領する可能性はなくなり、代って21世紀は、中共がユーラシア大陸を支配するかどうかが、米国としての最大の懸念になると。
熊プーの「一帯一路」は、1919マッキンダー説「世界島(ユーラシア+アフリカ)を支配せよ」に重なっていると最初に指摘した論者の一人がカプランであった。
カプランの指摘によると、熊プーが陸路と海路で世界島を統合せんとするインフラ・プロジェクトを最初にブチ上げたのは2013-9であったという。
マッキンダーによれば、世界島の支配に過去、最も近づいたのが、モンゴル帝国であった。モンゴルは、専制政治によって世界島を支配できてしまう可能性を歴史に示しているのである。
しかしモンゴル本国には、世界島を支配するだけのマンパワーが足りなかった。カプランは、今の中国は違うという。
シャノン・ティエッツィによると、すでにBRIは154ヵ国に喰いついた。インド、北鮮、ヨルダンといくつかの西欧諸国だけが、それを避けているという。
しかもその範囲は世界島を超えて、太平洋の島嶼諸国、ラ米にまでも及んでいる。ティエッツィによれば、中共はBRIのために10年間で5640億ドルをすでに使ったという。
中共は最初から軍隊など送らない。まず銀行家、エンジニア、スパイを送り込む。経済インフラ建設で中共の存在が不可欠となったところで、政治的意思を押し付け始めるのだ。
「一帯一路」の焦点は海路にあって陸路にはない。カプランの慧眼は最初から見抜いていた。カプランは「シルクロード」からの連想に惑わされなかった。陸路で支那から西欧まで一貫しようとしても無理なのだ。世界島の支配のためには、海路が不可欠であるがゆえに、「一帯一路」の相手は、米海軍なのである。
カプランは早々と結論を出していた。米空軍と米海軍は、単純に西太平洋にシフトするのではなしに、インド洋もカバーしなくてはならない。さもないと中共が「海上シルクロード」で「世界島」を抱合する野望を阻止できないから。
中共の大野心の成就のためには、まず中共は南シナ海で勝利しなくてはならない。南シナ海を支配できないのなら、「海上シルクロード」で世界島を縛り付けることなど、できる話ではないからだ。
中共が「台湾征服」を焦るのもむべなるかな。台湾を支配できずに、どうして南シナ海を支配できようか。南シナ海を支配できずば、インド洋は支配できない。インド洋を勝手に通航できないとなれば、世界島の支配も無理なのである。世界島は、鉄道だけでは結合はできないのだ。
※中共が乗り出さざるを得ないのは、「マッキンダー型」を超克した「●【トウ】小平型」(JIS第一水準にない文字は迷惑なので、以後、「DS型」と記す)の地政学だ。
マッキンダーはなぜかスルーしているので私が自著で指摘するしかなかったのだが、有史いらい、東南アジアをひとつの専制政体が支配したことはないし、これからもおそらくない(正確には、1942年に日本が唯一、それに成功しかけている)。
なぜそれが難しいのかの理由は誰も解明してはいないものの、中共とベトナムの長い抗争史は、その野心がどうやらリアリズムに阻止されるという直観を裏付けるヒントだろう。
ベトナムと10年抗争して、陸路で東南アジアを支配できないと直観したDSとその後継政権は、1942に成功しかかった大日本帝国の道を覆むことに、無意識的に、なってしまっている。
そしてその道は米海軍との正面衝突であるが故に、必敗の運命が待っている。
しかし、もしも、DS型からマッキンダー型をマイナスしてしまい、ビルマ以西、および、ウラル以西の支配を、潔く諦めてしまうならば、DS型には未知の可能性がとつぜんに開ける。
もちろんクラウゼヴィッツの言った《現金決済》はしないで、永久に《手形取引》で米海軍と対峙することが条件だ。
そのためには「小東亜共栄圏イニシアティブ」を新たに定義する必要がある。
ところがその理論をこねくる才能が、習近平には絶望的に、無い。習近平はDSではないことが、わが国には幸いしている。』