中国、23年5%成長予測に下振れ 現地エコノミスト調査

中国、23年5%成長予測に下振れ 現地エコノミスト調査
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『【香港=伊原健作】日本経済新聞社と日経QUICKニュースがまとめた中国エコノミスト調査によると、中国の2023年の実質国内総生産(GDP)伸び率の予測平均値は5%だった。3カ月前の前回調査から0.5ポイント下振れした。一部の経済指標では景気持ち直しの兆しが出るが、不動産市況の悪化を危ぶむ声が広がっている。

予想の幅は4.5〜5.6%だった。回答した29人のうち少なくとも26人が前回調査時点から見…

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『回答した29人のうち少なくとも26人が前回調査時点から見通しを引き下げ、12人の予想が4%台となった。予想幅は中国政府が23年の成長目標とする「5%前後」のほぼ範囲内にある。

7〜9月のGDPの予測平均値は前年同期比4.4%増だった。景気の勢いを示す前四半期比(季節調整済み)の伸び率は1.3%と、4〜6月(0.8%)からはやや持ち直しを見込む。

勢いは弱い。「ゼロコロナ」政策の撤廃で経済が再開された当初は、23年は景気が急回復するとの期待が高まったが、先行きは見通しにくくなっている。

最大の要因が不動産市況の悪化だ。「不動産不況が深刻化し、外需が一段と弱まり、政策支援も想定以下だった」。UBSの汪濤氏はこう指摘し、23年の成長率を4.8%と予想を0.4ポイント下方修正した。

三菱UFJ銀行の范小晨氏も「不動産関連投資と消費が低迷している」とし、3カ月前より0.9ポイント低い4.8%成長を予想する。

中国では不動産開発会社の経営難が相次ぎ表面化。消費者が購入をためらい、さらに市況が悪くなる逆回転が続く。政府は8月に購入額に占める頭金比率の引き下げなどの対策を打ち出したが、調査では一連の政策が「期待外れ」との評価が目立った。

京東集団の沈建光氏は「景気刺激策は断片的で、効果が見えない」と指摘。消費や投資意欲の喚起には、特別国債の増発や消費(クーポン)券の発行など「より積極的な政策シグナルを発することが必要だ」と強調した。

みずほ銀行の伊藤秀樹氏も「財政出動を伴わない対策が主体で、成長率への影響は限定的だ」とした。

ムーディーズ・アナリティクスのカトリーナ・エル氏は「政府は不動産バブルの膨張を防ぐため、手厚い刺激策を避けた」と分析。「(経済)成長率の鈍化を容認する姿勢だ」との見解も示した。住宅など資産価格の下落が消費を減退させる「負の資産効果」を過小評価すべきではないとして、さらなる対策が必要だと訴えた。

一方で、景気浮上の兆しもみえる。9月の製造業の購買担当者景気指数(PMI)は50.2と6カ月ぶりに好調・不調の境目である50を上回った。製造業を中心に一部の経済指標では持ち直しの動きも出ている。消費でも不動産などの耐久消費財は低迷するが、旅行や飲食といったサービス関連は好調を維持している。

オックスフォード・エコノミクスの陳進来氏は「景気刺激策や景気循環による押し上げがみられる」とし、「景気は7月に底入れした可能性が高い」とみる。アトラディウスのバート・バーガー氏も企業の在庫調整の進展などで「不動産以外は回復が見える」とした。
調査では複数の選択肢をあげて、景気回復への課題を聞いた。回答の多くは「不動産市場の低迷」が占め、「脆弱な消費者心理」「地方政府の債務問題」が続いた。アリアンツ・トレードのアナ・ボータ氏は「若者の失業率の持続的上昇が消費を抑制し、不動産を含めた需要の減退につながる」と消費者心理の悪化を懸念する。

不動産会社による巨額の債務問題が、金融システムを揺るがすリスクはなおくすぶる。

三井住友DSアセットマネジメントの佐野鉄司氏は、中国政府は問題企業を「優良」認定し、銀行に負担がかかる債務処理を避ける方針とみる。「銀行システムリスクが顕在化する可能性は低い」ものの、「『ゾンビ企業』への貸し出しを続けることで資金配分がさらに非効率的になり、金融政策の有効性を一段と低下させる」と懸念する。

米中対立も同様だ。

中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)はスマートフォンの新機種で、回路線幅が7ナノ(ナノは10億分の1)メートルの高性能半導体を実装。中国の半導体開発を阻む米国の包囲網を破った可能性があるとして注目を集めた。

ロンバー・オディエのホーミン・リー氏はこれが「中国を抑え込もうとする米国や同盟国のさらなる試みに動機を与えた」とし、一段と対中規制が強まるとの見方を示した。

中国は22年に人口減に転じ、将来見通しも陰りつつある。成長率の予測平均値は24年は4.5%、25年は4.4%と、前回調査からそれぞれ0.3ポイント、0.2ポイント低下した。ティー・ロウ・プライスのクリス・クシュリス氏は「人口動態などの構造的な問題や地方政府の資金調達リスクを抱え、放置されれば潜在成長の足かせになる」と指摘している。

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調査の方法 日本経済新聞社と日経QUICKニュース(NQN)が9月下旬に中国経済を専門とするエコノミストを対象に書面で実施し、29人から回答を得た。

回答企業・エコノミスト(英語社名のアルファベット順、敬称略)

ABNアムロ(アリエン・ファンダイクハウゼン)、アリアンツ・トレード(アナ・ボータ)、アトラディウス(バート・バーガー)、東亜銀行(蔡永雄)、バークレイズ(常健)、BofA(喬虹)、大和証券(潘加州)、光大証券(伍礼賢)、恒生銀行(薛俊昇)、HSBC(劉晶)、工銀国際(程実)、京東集団(沈建光)、JPモルガン(朱海斌)、ジュリアス・ベア(ソフィー・アルタマット)、凱基証券(陳浩)、LGIM(マシュー・ロジャー)、ロンバー・オディエ(ホーミン・リー)、みずほ銀行(伊藤秀樹)、ムーディーズ・アナリティクス(カトリーナ・エル)、三菱UFJ銀行(范小晨)、オックスフォード・エコノミクス(陳進来)、ピクテ・ウェルス・マネジメント(陳東)、ソシエテ・ジェネラル(姚煒)、S&Pグローバル(ルイス・クイジス)、スタンダードチャータード銀行(丁爽)、三井住友DSアセットマネジメント(佐野鉄司)、ティー・ロウ・プライス(クリス・クシュリス)、UBP(カルロス・カサノバ)、UBS(汪濤)

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西村友作
中国対外経済貿易大学国際経済研究院 教授
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ひとこと解説 中国の景気は、年初のリオープン直後でこそ高まりましたが、3月以降はインフルやコロナ第二波、異常気象の影響で大きく落ち込みました(※)。記事にもあるように、足元では回復の兆しが見え始めています。

今年の上期の実質経済成長率は5.5%増で、去年の四半期別では、1Qが+4.8%、2Qが+0.4、3Qが+3.9、4Qが+2.9でした。2Qは上海ロックダウン、4Qはコロナ大流行で大きく落ち込みました。その反動もあるので、今年は5%を超える成長になるとみていますが、来年以降はこのままだと厳しくなりそうです。

※ 2度目のコロナ陽性急増、インフル流行 中国の消費を覆う病み
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00109/00059/ 

2023年10月6日 21:16 (2023年10月6日 21:18更新) 』