政府端末に国産サイバー対策ソフト 25年度から導入
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA25A3B0V20C23A7000000/

『政府は各府省庁のパソコン端末に国産のセキュリティーソフトを導入する。体制が整った府省庁で2025年度から順次利用を始める。経済安全保障の観点から日本が独自にサイバー攻撃に関する情報を収集・分析し、サイバー防衛能力を向上させる狙いがある。
日本の民間企業がつくったソフトを土台に総務省の情報通信研究機構(NICT)が開発する。23年度内にシステムを構築し、まず総務省で試験運用する。同省は24年度予算…
この記事は有料会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』
『同省は24年度予算の概算要求に関連費用として10億円を盛り込んだ。
政府機関の通信端末は個人使用を含め数十万台規模になる。ソフトが防いだサイバー攻撃の情報をNICTに集約し、攻撃の種類やパターンを収集・分析する。
政府端末は現在、主に米マイクロソフト製のセキュリティーソフトを中心に使っている。新たな国産ソフトはこれと併用できる仕様にする。自国で情報の収集や対策を進められるようにするとともに対策を多重にして防御力を高める意図もある。
分析した情報は事例集として政府全体に共有する方針だ。攻撃の回数が多かった特定のマルウエア(悪意のあるプログラム)などは回避するプログラムを組み込み、防御態勢を整える。
デジタル庁は22年度から政府共通のパソコンや通信ネットワークの環境「ガバメントソリューションサービス(GSS)」を段階的に省庁などに採用している。GSSで使う端末に国産サイバー対策ソフトも対応させ、25年度以降に順次入れ込む方針だ。
米国務省は7月に発覚したサイバー攻撃で、職員のメール6万通が流出したと説明した。中国に拠点を置くハッカー集団によるとの見方を示した。日米両政府は対処でも協力していく方針だ。
日本でも政府へのサイバー攻撃を相次ぎ確認している。
政府機関への攻撃や不正アクセスを監視する内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)は8月、電子メールのシステムに不正アクセスを受けたと公表した。メールアドレスなどが漏洩した可能性がある。
22年9月には電子政府の総合窓口「e-Gov」など計4省庁23サイトが攻撃された。親ロシア派のサイバー攻撃集団「キルネット」が犯行声明を出した。
警察庁がインターネット上に設置したセンサーで検知した日本への不審なアクセス通信は22年で1日あたりおよそ7700件だった。18年と比べて2.8倍ほど増えている。発信元のほぼすべてが海外だった。
政府は7月に開いたサイバーセキュリティ戦略本部で決めた年次計画で「政府機関などにおける情報システムのレジリエンスの向上を図る」と記した。政府機関でのサイバー対策の統一基準も改定した。
日本は機密情報を共有する英語圏5カ国の枠組み「ファイブアイズ」の加盟国とも関係を構築する。リアルな安保情報を共有・連携するためにもソフトが情報の保全を支える。
【関連記事】
・政府サイバー組織に民間組織が苦言 情報共有を軽視
・サイバー攻撃に「集団防衛」 地方企業、人材不足に対応
・サイバー攻撃、大手クラウドを悪用 4月から急増 』