スパイ戦、米中首脳会談に影 10年越しの対中情報網再建

スパイ戦、米中首脳会談に影 10年越しの対中情報網再建
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN182IY0Y3A910C2000000/

 ※ 最近の中国高官の、相次ぐ失脚騒動も、こういう「インテリジェンス合戦」が絡んでいるに違いない…。

『米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)と中国の王毅(ワン・イー)共産党政治局員兼外相が16〜17日に地中海のマルタで会い、11月の米中首脳会談の実現へ互いの手の内を探った。貿易や技術を巡る対立に加え、米国による10年越しの対中情報網の再建で激しさを増す水面下の「スパイ戦」が会談実現に影を落とす。

ここ数カ月、普段は表に出ない情報機関の暗闘が目に付くようになった。きっかけの一つは米中央情報…

この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』

『きっかけの一つは米中央情報局(CIA)のバーンズ長官が40分ほどのやりとりのなかで漏らしたひと言だ。「進展した。ここ数年、懸命に取り組んできた」。7月下旬、米アスペン研究所の安全保障フォーラムで対中情報網の再建状況を問われ、淡々と答えた。

「この一言に中国は神経をとがらせた」(元米情報機関職員)。実は中国は2010年ごろ、国内で活動するCIA組織を壊滅させることに成功している。CIAの元工作員を買収し、2年間で2桁にのぼる国内のCIA協力者を一気に排除したのだ。

習近平(シー・ジンピン)指導部が発足した12年以降、米国にとって対中情報網の再建は常に課題だった。中国シフトを進めるバーンズ氏の「再建宣言」は、中国が7月から改正「反スパイ法」を施行し、スパイ行為の幅広い摘発に乗り出したところだった。

「『インドネシアのバリ島から米サンフランシスコへ』を実現したいなら、米国は十分な誠意を見せる必要がある」。中国の情報機関、国家安全省は9月初め、対話アプリ「微信(ウィーチャット)」に投稿した。

米中首脳会談は22年11月にバリ島で20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせて開いたのが最後だ。バイデン米政権は11月にサンフランシスコで開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせた会談の実現を望んでいる。

民主主義国家で情報機関が外交に表立って口出しすることは異例だが、中国での情報機関の実権は強大だ。米政府関係者は「陳文清・前国家安全相、王小洪・公安相ら情報機関を仕切る『安全閥』への習国家主席の信頼は厚い」とみる。

CIAが台湾問題など習指導部の意思決定にかかわる情報の収集と分析に当たるのに対し、米連邦捜査局(FBI)は米国内での中国スパイの摘発を急ぐ。8月に入り、米司法省は中国に米軍事情報を流出させたとして海軍の兵士2人を逮捕したと発表した。

そのうちの1人は沖縄の米軍基地に配備されたレーダーシステムの電気系統図と設計図を含む機密情報を1万4900ドル(約220万円)弱で中国の情報員に売り渡したとされる。これに対し、中国側もCIAと接触した中国政府職員を摘発したと相次ぎ公表した。

FBIは中国関連だけで2000件以上の案件を抱え、レイ長官は「中国は経済スパイ活動を多方面から追求し、ある技術に狙いを定めたら、利用可能なあらゆる資源を駆使してそれを盗み出そうとする」と警戒する。

中国は共産党員だけでなく党外の知識人やメディアなど様々な勢力を巻き込んで敵を孤立させる「統一戦線工作」を重視し、世界で情報戦を展開する。英国やカナダとのスパイ摘発を巡る摩擦も激しさを増している。

「信頼を損なうことが起きていることを我々は知っている」。8月末、中国を訪問したレモンド米商務長官は中国側にくぎを刺した。訪中前、中国のハッカー集団が米政府を攻撃し、レモンド氏のメールも標的になっていたことが判明したからだ。

バイデン大統領は6月、米軍が中国の偵察気球を撃墜した2月の事件に関し、「独裁者」の習氏は気球がどこにあるか知らされていなかった事実に「ひどく動揺した」と述べた。CIAなどの分析に基づく判断だ。中国はこの発言に猛反発した。

表の対立と裏の暗闘が絡み合い、米中関係を揺さぶっている。

(ワシントン支局長 大越匡洋)』