社会学者がウェルス・マネージャーになったら

社会学者がウェルス・マネージャーになったら – 橘玲 公式BLOG
https://www.tachibana-akira.com/2023/09/14773

『今回は、ブルック・ハリントン『ウェルス・マネージャー 富裕層の金庫番 世界トップ1%の資産防衛』(庭田よう子訳、みすず書房)を紹介したい。原題は“Capital without Borders(国境なき資本)”で、よくある「お金持ち本」の類ではなく、著者はコペンハーゲン・ビジネス・スクール社会学准教授だ。タックスヘイヴン(オフショア金融センター)がわたしたちの生活にどのような(悪)影響を与えているかを大所高所から論じるのではなく、富裕層にさまざまな財産管理のサービスを提供するウェルス・マネージャーの視点から分析を試みようと考えたのだという。』

『日本人にわかりにくいのはヨーロッパにおける信託の考え方で、十字軍の時代にさかのぼるこの仕組みは、「委託者」「受託者」「受益者」によって構成される。

聖地奪還に向かう騎士が、自分が死んでも残された家族が安心して暮らせるようにしたいと考え、土地などの財産を信頼できる人間(騎士や聖職者)に預ける。これが信託の基本で、この場合は、十字軍遠征に参加する騎士が「委託者」、財産を預かる人間が「受託者」、その財産から収入を得る遺族が「受益者」になる。

ここでのポイントは、受益者は財産の所有権を持たないということだ。中世には女性の財産権が認められなかったため、夫が死んで正当な(男性の)継嗣がいなければ、財産は没収されることになっていた。だが信託によってその所有権を受託者に移してしまえば、もはや財産を所有していないのだから、信託財産から利益を得ても権力(王)は手出しできない。

しかしすぐにわかるように、財産の所有権は受託者がもっているのだから、いつでも裏切って自分のものにすることができる。この仕組みが成り立つためには「信義」がどうしても必要で、それが「スチュワードワードシップ」だ。中世においてこの信義を支えたのが「評判」で、受託者が委託者や受益者を裏切ることはもっとも卑劣な(神に唾する)道義的罪悪とされ、上流社会から排斥され余生は汚名にまみれることになった。

欧米においてはこの信託の考え方が現代まで維持されており、財産を信託すると受益者は所有権を喪失したと見なされ、贈与税や相続税の対象から外れる。これを利用した単純なスキームでは、信託に課税されないオフショアの受託者に財産を預けることで、合法的に全財産が非課税になる。』…。

 ※ 初めて聞いた話しなんで、ちょっと調べた…。