財政難のパキスタン、電気代高騰で全国的デモ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB06AQ50W3A900C2000000/
『財政難のパキスタンで、電気料金の高騰が新たな問題となっている。同国市民は反発し、全国的にストライキや街頭デモが発生しているが、暫定政府は解決策を示せていない。
電気代の値上げはシャリフ前政権が強行した。カラチやラホールなど主要都市の市場は2日の土曜日にストライキで閉鎖され、何万人もが街頭で抗議デモを実施した。
パキスタンの電気料金は平均的な家庭の収入の15〜20%を占めるが、料金は100〜200…
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『パキスタンの電気料金は平均的な家庭の収入の15〜20%を占めるが、料金は100〜200%も跳ね上がった。業を煮やした国民は請求書を燃やすなどの抗議活動を始めた。イスラマバードに住むシングルマザーは「電気代の高騰で生活が完全に崩壊した」と語る。
就任したばかりのアンワール・ウルハク・カカール暫定首相は大きな試練となる。11月までに予定される総選挙は、数カ月延期されるとみられる。専門家によれば、この状況は現在の支配層への国民の憤りをかき立て、イムラン・カーン元首相への支持につながる可能性が高い。
政府は国民への救済策を示せていない。シャムシャード・アフタル暫定財務相は、パキスタンの経済状況は予想以上に悪く、補助金を支給する余裕はないと説明する。
閉鎖された市場を歩く男性(2日、カラチ)=ロイター
暫定政府は、債務不履行を避けるために国際通貨基金(IMF)と結んだ30億ドル(約4400億円)の支援に関する取り決めを順守する必要がある。この協定は財政補強のため、電力に課税し、補助金を廃止することを義務付けている。夏は電力消費量が多く、影響が特に深刻だが、政府はIMFの承認なしには対策を講じられない状況にある。
パキスタン国立銀行(中銀)幹部のマフーズ・アリ・カーン氏は電気代の上昇は「生産コストの上昇、輸出競争力の低下、企業活動の停止、失業率の上昇、ハイパーインフレなどを引き起こすだろう」と述べた。
専門家らは、簡単な解決策はないとみている。資本市場やエネルギーの専門家、アブドル・レーマン氏は「政府はIMFの支援下にあるため補助金を出せない。税金の緩和は貧困層の負担を減らすだろうが、その分を補うために他で税金を課さなければならない」と指摘する。
電気料金の高騰が早期の選挙実施の障害になると考える専門家もいる。暫定政府の憲法上の役割は選挙の実施だが、多くの人は支配層が都合の良い時期まで暫定政権を維持することを望んでいると考える。
政治アナリストのサブーク・サイード氏は「カーン氏の人気は現在の状況でさらに高まるだろう」と話した。
(寄稿 イスラマバード=アドナン・アーミル)』