中国債務リスク、世界揺らす 金融システムに飛び火懸念

中国債務リスク、世界揺らす 金融システムに飛び火懸念
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM030LS0T00C23A9000000/

『中国の不動産不況が新たな段階に入った。大手開発会社のデフォルト(債務不履行)によって金融機関の損失が膨らむ事態になれば、中国国外の金融システムにも危機が飛び火する。中国経済の低迷はアジアや世界にも逆風となる。

「業績が悪化すればクロスデフォルトが発生する可能性がある」。中国不動産最大手の碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)は8月末、投資家に注意を促した。

「クロスデフォルト」とは…

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『「クロスデフォルト」とは1回でも不払いが発生すると、他の社債もデフォルトしたとみなす仕組み。碧桂園の負債総額は6月末時点で1兆3642億元(約27兆円)。うち1割程度はドル建て社債などの形で海外投資家が保有するとみられる。

米JPモルガンによると、年内に計25億ドル(約3600億円)以上の利払いや社債の償還期限が到達し、綱渡りの資金繰りが続く。8月に米連邦破産法第15条の適用を申請した中国恒大集団も外貨建て債務の再編協議が難航している。

中国の住宅市場は恒大や碧桂園の信用不安で販売が冷え込む。住宅価格の下落によって不動産会社が保有する開発用地の評価減が膨らめば、債務超過に陥りかねない。

金融のリスクはすでに表面化している。日本経済新聞が中国の主要32銀行の不動産業界向け不良債権額を集計したところ、6月末の総額は2901億元と1年前に比べて44%増えた。とくに地方銀行の財務悪化が目立つ。内陸部甘粛省に拠点を置く甘粛銀行や江西省の九江銀行の関連不良債権は半年で倍増した。

米ゴールドマン・サックスによると、中国の不動産会社の金融負債の75%を銀行が保有する。同社は銀行の不動産関連債権で約1.2兆元の損失が発生すると試算。資本基盤が脆弱な中小銀行は資本不足に陥る可能性があると分析する。

地方政府傘下の投資会社「融資平台」の債務リスクも深刻だ。地方政府が後ろ盾となる「暗黙の保証」を前提に膨張してきたが、地方の収入源である土地使用権収入が激減し、金融市場に不安が広がる。

リスクを嗅ぎ取った海外マネーは中国を離れ始めた。香港経由の海外投資家の中国株売越額は8月に896億元となり過去最大だった。ロイター通信によると、カナダ最大の年金基金CPPインベストメンツは中国投資を停止した。

中国経済の減速は貿易や投資で深く結びつくアジア経済に打撃となる。日本の7月の輸出額は中国向けがふるわず、2021年2月以来2年5カ月ぶりに前年実績を下回った。

英バークレイズは23年の中国の実質国内総生産(GDP)の伸び率を4.5%と、政府目標の「5%前後」に届かないと予想する。「新興アジアは中国の減速という逆風に直面している」とし、タイやシンガポール、フィリピンなどの成長率見通しを軒並み下げた。

習近平(シー・ジンピン)指導部は7月に開いた中国共産党の中央政治局会議で経済情勢に危機感を示したものの、その後に打ち出した政策は小粒なものばかり。危機が深まれば、その影響は世界に及ぶ。(香港=伊原健作)』