千葉銀、会長退任の衝撃 仕組み債でつまずいた「巨人」

千葉銀、会長退任の衝撃 仕組み債でつまずいた「巨人」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC015QN0R00C23A9000000/

 ※ 「銀証連携」と言えば、聞こえは良い…。

 ※ しかし、実態は、地方銀行(地方第一銀行)の握っている「地方富裕層名簿」を利用した、「地方富裕層」への「リスク資産」の大量販売だ…。

 ※ 「安全資産」の「定期預金」くらいしか知らない、保守的な「地方富裕層」に、ガチガチの「リスク資産」を大量に売りつけたら、そりゃ「苦情」も増えるよ…。

 ※ 「そんなに、元本が減るとは、思わなかった…。」「多額の損失が出るとは、十分な説明を受けなかった…。」とか、後出しの「恨み節」も、蔓延したんだろう…。

 ※ これを、「高金利」(ハイリターンは、ハイリスク)で釣るから、タチが悪すぎると、「金融庁」に判断されたんだろう…。

 ※ むろん、「一罰百戒」で、「全国の地銀」に対する「警告」の意味もある…。

 ※ まあ、「かんぽ」の営業マンが「リスク商品」売りまくって、「苦情の山」となったのと、構図は同じだ…。

『千葉銀行の佐久間英利会長が退任する。高リスクで複雑な仕組み債の販売体制をめぐり金融庁から受けた行政処分の責任を取る。地元経済界の要職を一手に引き受けており、後任探しの難航は必至だ。頭取・会長を通じ15年にわたる「佐久間時代」の負の側面を払拭し、金融界で千葉銀の業績と存在感を高めた功績をどう引き継ぐか。続投する米本努頭取の采配が試される。

佐久間氏の2024年3月末の会長辞任が発表された翌日の9月…

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『佐久間氏の2024年3月末の会長辞任が発表された翌日の9月1日。「千葉商議所の会頭などを務めていただいてきたが今後についての情報はない」。神谷俊一千葉市長はこう述べた。県内シェア4割とも言われる「ガリバー」銀行の不祥事による蹉跌(さてつ)に戸惑いがにじむ。首都圏の非合併・統合行の中でもシェアは断トツだ。

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商品設計が複雑で「実質コスト」が重いとされる仕組み債。千葉銀は傘下のちばぎん証券と「親子二人三脚」で販売に力を入れた。超低金利下で金融商品の販売に注力する地銀は多いが、証券取引等監視委員会は「ちばぎん証券への苦情が(相対的に)多かった」とする。

表面的には利回りが高く魅力的に映るが、相場が一度でも大きく落ち込むと元本割れする可能性が高い仕組み債。米利上げなど国際的に金融市場が混乱し、損失を被る顧客が続出。苦情につながった。

どんな金融商品にもリスクはある。肝心なのは金融機関が顧客の投資経験や知識を踏まえながら商品を提案する「適合性の原則」を守ることだ。そこがおろそかだった。

行政処分をめぐる金融庁と千葉銀の攻防は紆余曲折をたどった。業務改善命令が出たのが6月23日。約1カ月後の7月24日が業務改善計画書の提出日だったが、公表はされなかった。

「金融庁が計画書の内容に駄目出ししたからでは」。1カ月の延長戦が始まり、こんな観測が広がった。焦点に浮上したのは「(関与者への)処分ではないか」。複数の金融関係者は話す。

一連の問題の底流には「収益至上」主義がある。特に評価体系は問題視された。千葉銀がちばぎん証券に紹介した顧客が仕組み債を買うと、手数料の2割が同行に還元される。一方、人事評価では還元された分の5倍、つまり顧客が払った手数料分がそのまま行員の営業成績につながる。安易な仕組み債への勧誘に走りやすくなった。

千葉県における千葉銀の信頼感は高い。にもかかわらず多くの投資未経験者が訪れる銀行での管理が甘く、監査部門も現場の状況を経営陣に十分に情報伝達できなかった。日本証券業協会から計3回、注意喚起を受けていたが経営陣は迅速に課題を把握し対策できず、問題は長期化。行政処分につながった。

千葉銀は処分を踏まえ、10月から個人部門の収益目標を廃止する。顧客との接点量などを評価する体系にする。能動的なちばぎん証券への銀行顧客の紹介もやめる。営業店からグループ会社まで実態を把握する「経営改善室」も新設。取締役会の現議長は佐久間氏だが、24年4月から社外取締役を議長にする。ガバナンス(企業統治)の立て直しを、8月末にようやく公表にこぎつけた改善計画書に盛り込んだ。

人事処分で驚きと衝撃が広がったのが、行内に多大な影響力を持つ佐久間会長の退任だ。有力銀連携の「TSUBASAアライアンス」など数々の提携を成立させた立役者で、女性活躍推進にも尽力してきた。

「緻密で仕事には厳しいが、戦略は的確」で決して威張らない。全国地方銀行協会の会長職を2度つとめた佐久間氏を慕う人は千葉県や銀行内外で少なくない。千葉県商工会議所連合会の会長、千葉県経済同友会の代表幹事など県内財界の要職を務めており、後任選定は難航しそうだ。

米本頭取や稲村幸仁ちばぎん証券社長ら現職経営陣は続投(減給で対応)し、OBの処分を重くした。ちばぎん証券前社長は6カ月分の月額報酬相当額を返上する。

今後問われるのは、就任3年目の米本頭取体制での企業改革の加速だ。23年4月からの中期経営計画では「顧客本位」を指針に置くが、本質的な施策を講じるのは容易ではない。TSUBASAアライアンスのかじ取り、共に行政処分を受けた武蔵野銀行との連携体制の深化にも注目が集まる。

現時点で業績は好調で、2024年3月期は過去最高益の更新を見込む。増配を続け、株価も年初来高値を4日に更新した。

一方、数々の立て直し策を説明するはずの米本頭取は行政処分をめぐって、記者会見などをまだしていない。「ポスト佐久間」時代の経営が注目される。

(勝莉菜乃)

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