拡大BRICS、はや暗雲 アルゼンチン野党が参加反対
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2910P0Z20C23A8000000/
『サンパウロ=宮本英威】南アフリカで開いたブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ(BRICS)首脳会議で決まった参加枠拡大の行方に早くも暗雲が広がっている。拡大対象の6カ国に含まれる南米アルゼンチンで野党が反対を表明しているためだ。
6カ国はイラン、サウジアラビア、アルゼンチン、エジプト、エチオピア、アラブ首長国連邦(UAE)。しかし共通する理念や政策は不在といえ、拡大に伴い足並みの乱れが一…』
『アルゼンチンの反米左派政権は参加を歓迎している。「新しい市場への参入、投資や貿易拡大の可能性が高まる」とフェルナンデス大統領は中南米で唯一、拡大の対象国に含まれた意義を強調する。』
『ただ2024年1月に予定されるBRICSへの参加は一筋縄ではいかない可能性がある。10月に迫る大統領選で与党が苦戦しているためだ。
8月13日に投開票された予備選挙で、マサ経済相の与党の得票率は約27%と、リバタリアニズム(自由至上主義)を信奉する右派のハビエル・ミレイ下院議員(得票率約30%)、中道右派のパトリシア・ブルリッチ元治安相の主要野党連合(約28%)を下回っていた。』
『中銀廃止など過激な主張が目立つミレイ氏は「地政学的には米国やイスラエルと協調する。コミュニスト(共産主義者)たちとは付き合わない」と述べた。地元メディアはBRICSへの参加拒否を示したと報じている。同氏が勝利した場合の外相候補とされるディアナ・モンディノ氏は「アルゼンチンにとって客観的な利益はない」と明言した。
2位のブルリッチ氏は「BRICSに加わることには反対だとはっきりさせておきたい」と述べている。ウクライナに侵攻したロシアのほか、アルゼンチンにあるイスラエル関連施設で1994年におきた爆破テロ事件への関与が疑われるイランとの連携に拒否感を示した。』
『アルゼンチンの経済は不振が続く。歴史的な干ばつや年率100%を超える高インフレに加えて、国際通貨基金(IMF)向けの450億ドル(約6兆5700億円)規模の債務返済という課題も抱えているためだ。
与党はBRICSに加わることで国際社会での立場向上をねらう。BRICSが設立した新開発銀行(本部・上海)から融資を受けることができれば、苦境打開の一助になると期待している。
19年12月発足のフェルナンデス政権は中国との関係を深めてきた。22年2月に広域経済圏構想「一帯一路」への参加で合意して、23年4月には中国からの輸入品に対して人民元決済も始めた。』