中国主導のBRICS6か国拡大、人民元の国際化図る思惑か…首脳会議が閉幕
https://www.yomiuri.co.jp/world/20230826-OYT1T50088/

『【ヨハネスブルク=笹子美奈子、リオデジャネイロ=大月美佳】ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカで構成する新興5か国(BRICS)首脳会議は24日、加盟国の6か国拡大を盛り込んだ「ヨハネスブルク宣言」を採択し、閉幕した。新規加盟国の選定理由は不明だが、米国に対抗する国際秩序の構築を目指す中国の思惑が反映されたようだ。
ヨハネスブルクで23日に開かれたBRICS首脳会議に出席した(左から)ブラジルのルラ大統領、中国の習国家主席、南アフリカのラマポーザ大統領、モディ印首相、ラブロフ露外相=AFP時事
「BRICSに新たな活力を注入し、世界の平和と発展に寄与する。新興市場国と発展途上国の連帯と協力の新たな章を描くために尽力したい」
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加盟国の拡大を主導した中国の 習近平 国家主席は24日、首脳会議が開かれたヨハネスブルクでの記者会見で、こう語った。
BRICSの新加盟国はエジプト、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、アルゼンチン、エチオピアの6か国。世界銀行によると、世界の国内総生産(GDP)に占める割合は約26%から約29%に増えるが、先進7か国(G7)の約44%に及ばない。
新生BRICSで唯一共通する戦略が、貿易で米ドルを使わない決済システムの促進だ。核開発を進めるイランは、経済制裁で銀行間の国際決済ができない現状からの脱却に期待を寄せる。イラン国営通信は加盟について、「米国の一国主義への対抗だ」と位置付けた。
国際通貨基金(IMF)に約450億ドル(約6兆5600億円)に上る債務を抱えるアルゼンチンは、米国の利上げの影響で通貨ペソが急落した。政府は米ドル流出を抑えるため、4月から中国からの輸入に人民元決済を導入した。
イランやアルゼンチンの加盟には、人民元の国際化を図りたい中国の意向が働いた可能性がある。』
『首脳会議では、米欧主導の国際秩序への対抗を意識した発言が目立った。ウクライナ侵略で米欧と対立するロシアのプーチン大統領は24日の拡大会合でビデオ演説し、「新しい世界秩序を形作るプロセスを遅らせようとする敵対者がいる」と述べた。
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左派出身で米国と距離を置くブラジルのルラ・ダシルバ大統領は24日の記者会見で新加盟国の選定基準について、「地政学上重要な国だ。イデオロギーと関係なく、基準を満たしているかどうかで選んだ」と述べた。「G7は金持ちクラブだ。BRICSはつつましやかだ」とも語った。
来年には新加盟国も参加した首脳会議が行われる見通しだが、将来像には不透明な部分が多い。
BRICSの名付け親である米金融大手ゴールドマン・サックスの元エコノミスト、ジム・オニール氏は英BBCの取材に、「BRICSが何を目指しているのかわからない。イランを選んだことで事態を難しくする可能性もある」と指摘した。』