BRICS首脳会議、参加国の狙いは? 拡大構想も議題に

BRICS首脳会議、参加国の狙いは? 拡大構想も議題に
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『南アフリカのヨハネスブルクで22〜24日、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アの5カ国(BRICS)首脳会議が開かれる。新型コロナウイルス禍を挟み、4年ぶりの対面開催となる今回の会議では、BRICSの参加国拡大などが議題になる見込みだ。BRICSはどういう集まりで、参加国の狙いは何か。3つのポイントにまとめた。

・BRICSとは?
・今回の首脳会議の議題は?
・BRICSはG7に対抗しているのか?…

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『(1)BRICSとは?

BRICSの前身であるBRICsという言葉を2001年、初めて使ったのは米ゴールドマン・サックスのエコノミスト(当時)だったジム・オニール英上院議員だ。南アを除く4カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国)の頭文字を取り、2050年までに世界経済を席巻する成長市場だと指摘した。

もともとは他称だったが、4カ国は09年にロシアのエカテリンブルクで初めて首脳会議を開いた。10年に南アが招待国として参加し、11年以降には正式なメンバーに加わってBRICSとなった。

BRICSの5カ国は世界人口の40%を占める。世界経済に占めるシェアは00年に8%に過ぎなかったが、22年は26%に上った。この間、日米欧などの主要7カ国(G7)の国内総生産(GDP)は65%から44%に低下した。物価水準の差を考慮した購買力平価ベースでは既にBRICSがG7を上回っている。

BRICSには欧州連合(EU)、北大西洋条約機構(NATO)などのような設立条約や常設の事務局はなく、共通の利益拡大を目指す緩やかな連合体といえる。

BRICSは経済力の拡大とともに、先進国が主導してきた国際社会の中で、新興国が存在感を主張する場となっている。15年にはBRICS銀行とも呼ばれる新開発銀行(NDB、本部・上海)を設立した。NDBにはその後バングラデシュ、アラブ首長国連邦(UAE)、エジプトも加わった。

(2)今回の首脳会議の議題は? 

今回の首脳会議には議長役のラマポーザ・南ア大統領をはじめ、ロシア以外の4カ国首脳が集まる。ロシアのプーチン大統領はウクライナの子供を連れ去った戦争犯罪の容疑で国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ており、ICCの条約加盟国である南アへの入国は見送った。

会議で注目されるのは、中国が主導する参加国の拡大構想だ。24日には「Friends of BRICS」と呼ぶ招待国との首脳会議が予定されている。ホスト国の南アによると招待状は67カ国に送られ、インドネシアのジョコ大統領らが出席する。

南アなどによると、なんらかの形でBRICSに参加を希望する国は40カ国以上にのぼり、中にはサウジアラビア、イラン、アルゼンチン、エチオピアなどが含まれる。アフリカで開催される首脳会議だけに、周辺のアフリカ諸国からも多くの参加が見込まれる。

中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は、オンラインで開かれた22年の首脳会議で「志を同じくする友好国を早くBRICSの大家族に加えよう」と呼びかけた。米国と対立する中国には、グローバルサウス(南半球を中心とした新興・途上国)と呼ばれる勢力を結集し、影響力を拡大する狙いがある。

このほか、BRICSには共通通貨構想もある。共通通貨の実現は遠いとみられるが、ドルに頼らない現地通貨決済の拡大などが議論されそうだ。米欧から経済制裁を受けるロシアにとっては、制裁の効果を和らげる可能性がある。

(3)BRICSはG7に対抗しているのか? 

BRICSはG7のオルタナティブ(代替)になるとの見方がある。G7や西側の経済力が相対的に低下する中、安全保障や経済で米欧への過度の依存から脱却を模索する国は多い。新興各国が自らの国益を追求するなか、BRICSへの接近は有力な選択肢の一つとなる。

ただ、BRICSの内情は複雑だ。中国の経済規模は残り4カ国の2倍以上と突出しており、2位のインドなどはBRICSが中国主導の反西側連合になることを警戒している。インドは中国と国境紛争を抱えるうえ、日米やオーストラリアとつくる「Quad(クアッド)」にも参加するなど、経済・安全保障では西側との関係も重視する。

ブラジル、南アは中国の投資を歓迎し、それぞれ地域を代表する新興国として存在感を高めたい思惑がある一方、米欧との対立は望んでいない。米欧からの投資は経済成長に不可欠なためだ。これはBRICSに関心を示すサウジ、インドネシアなどの国々も同様だ。

BRICSをはじめとするグローバルサウスには、先進国主導の国際秩序への不満が共通して存在する。ただ「非西側」というアンチテーゼを超えた共通の価値観やビジョンはなかなか示せない。政体も民主主義や権威主義、王政などさまざまだ。

名付け親のオニール氏は日本経済新聞の取材に対して「BRICS首脳会議のたびに声明が発表されてきたが世界に何の変化も起こしていない。何を達成したいのか説明すべきだ」と指摘した。(ヨハネスブルク=木寺もも子)

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