中国、スパイ容疑で政府職員摘発 「米CIAに情報提供」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM214Z00R20C23A8000000/
『【北京=田島如生】中国は21日、同国政府の中国人職員(39)をスパイ行為の疑いで摘発したと発表した。日本留学中に米中央情報局(CIA)と接触し、帰国後に情報提供していたという。中国は「国家安全」の一環としてスパイの取り締まりを強めている。
国家安全省が対話アプリ「微信(ウィーチャット)」の公式アカウントで明らかにした。投稿によると、この職員は日本留学中に親密になった日本駐在の米国大使館員からCIA職員を紹介され、協力を持ちかけられた。
中国に戻り政府職員になった後、CIAと何度も接触して情報を渡し、見返りに金銭を受け取った。中国国家安全機関がこうした活動を発見し、捜査中だという。
同省は11日にも、CIAと接触していた軍需産業の中国人社員(52)をスパイ行為で摘発したと公表した。この社員は留学先のイタリアで知り合ったCIA職員と親しくなり、巨額の報酬や米国への移民手続きを引き換えに軍事機密を提供することに同意した。
帰国後、CIAに情報提供していた証拠を中国国家安全機関が収集し「法に基づいて強制措置を講じた」という。既に送検したとしている。
中国は7月、改正「反スパイ法」を施行した。スパイ行為の定義を拡大し「国家の安全と利益」に関わる情報提供などを幅広く取り締まれるようにした。国家安全当局の権限が強まり、疑いがあるだけで手荷物や電子機器を強制的に調べられる。
スパイ摘発などを担う国家安全省は7月末、ウィーチャットの公式アカウントを開設した。初投稿で、スパイ行為の疑いがある行為を見つければ通報するよう利用者に呼びかけた。その後も中国国内で摘発した事例などを紹介している。
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益尾知佐子
九州大学大学院比較社会文化研究院 教授
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分析・考察 中国の国家安全省は今月から、市民にスパイ行為の通報を広く呼びかけています。反スパイ法の改正前からある制度によれば、協力時の報奨金は最大で50万元(現在のレートだと日本円で約1000万円)です。そこに通報キャンペーンが始まったことで、「怪しい動きは通報した方がお得」という社会的な雰囲気が生まれています。嫌な上司や同僚のアラを探してチクる人も増えていくでしょう。これは長期的には、中国社会の活力を萎縮させていく可能性があります。
米国CIAとの接触ですか…。大学院時代、私の周りには中国の国家安全省の職員がうじゃうじゃ留学・在外研究しにきてましたけどね。ぜんぜん相互主義が成り立ってないですね。
2023年8月21日 21:42 (2023年8月21日 22:33更新)
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池上彰
ジャーナリスト・東京工業大学特命教授
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分析・考察 米中対立がスパイ摘発合戦になっています。米国内で中国のスパイが相次いで摘発されていることへの意趣返しの要素もあるのでしょう。海外に留学中に米国人と親しくなるとスパイにされるぞという国内向けの警告でもあるようです。こうなると、海外の中国人留学生は、友人を作ることがリスクになってしまいます。
2023年8月21日 18:44 』