インテリはいらない。欲しいのは労働力

インテリはいらない。欲しいのは労働力
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/32198372.html

『 中国の高学歴余りは、もの凄い事になっています。今の学生の親の世代は、より良い明日を信じて、子供に多額の教育費をかけて育てました。もともと科挙という官僚登用制度があり、これは、血縁によらず、能力によって行政を行う為の知恵でした。後に、不正が蔓延り、コネで合格する人間が増えて、意味は薄れてきましたが、しかし、制度としては、実に優れています。正しく運用されればの話ですが。

なので、中国の受験は激烈です。勉学で研鑽すれば、将来が開けると信じられていたからです。しかし、今年の大卒が1000万人超えで、就職できるのは公式発表でも8割です。北京大学の教授が発表し、すぐに削除された投稿によると、4割の学生が卒業即無職です。その為、仕事のミスマッチが増えています。学んだ学問が、まったく活かせない仕事に就かざるを得ないという事ですね。

話題になったところを挙げると、量子物理学占いという辻占いを始めた学生がいます。独自のルールによる占いですね。この方は、大学院卒です。デリバリーなども、数が増えすぎて行政が規制をかけるくらい増えています。手軽にできるバイトだったのですが、今や本業で生計を支える仕事になっています。

中国の強みは、安い労働力でした。良くAIや機械化で仕事が奪われるといいますが、目の前に落ちているゴミを拾って片付けるという仕事を機械化すると考えてみて下さい。単純に、モノを掴んで移動させて捨てるという作業であっても、割に合わないくらい大変な事が判ります。ラインのように、特定の作業に限定されるならともかく、目的に合わせて作業内容が変化する場合、まだまだ人が直接やった方がコストが安いです。というか、下手に高度な知識を必要とする仕事より、単純労働のほうが今は求人があります。

というのは、例えば金融会社のトレードですが、今は数人の管理者を除くと、全てAIにより自動売買になっています。トレーダーの腕を均一化するのは、事実上不可能ですが、AI化してしまえば、数十年分の過去のデータを元に、一定品質のトレードを行う事が可能です。これと同じ技量を持とうとしたら、どれだけ学ぶ必要があるか気が遠くなります。また、常に学び続ける為、内容が陳腐化する事もありません。昔は、少数のデータ分析の申し子のような敏腕トレーダーにしか、実現できなかった事です。当然ながら、ビルのフロアを占拠していた数百人のトレーダーは解雇されました。皆、大学出の高学歴ですよ?

つまり、中国政府が欲しているのも、管理職に就くような高学歴な人物ではなく、単純作業を安く長時間こなす労働者なのです。しかし、夢ある若者が憧れるような仕事でもないし、世の中を改革するような意義もなく、単に世の中を回す為に安価に行う労働者が必要な仕事です。ならば、今までの受験勉強は、何だったのかという話です。これが、タンピンと呼ばれる、就活を止めて、昼間から公園で寝そべっている、自分が生活する以外の全てを諦めてしまった青年を生んでいます。

良く、AIが発達すると、生活する為に人々が労働する必要が無くなるみたいな話をする人がいますが、確かにAIの導入で、人間が処理できないスピードと深さで仕事を処理できる分野もありますが、案外と普通の人が普通に行う作業まで自動化しようとすると、何倍も手間になったりします。つまり、向き不向きがあって、一般化して語れる話では無いという事です。

例えば、医療の初期診察などで、膨大な症例のデータベースを、全ての医師が同じ水準で頭に叩き込む事は不可能です。日々、更新されるものでもありますしね。AIであれば、それが可能で、医師が見逃すような病気や怪我の兆候を発見する事例も増えています。診察は医師が行う必要がありますが、診断に必要な膨大なデータの検索はAIに任せるという分業で、より正確な仕事ができるという事です。つまり、道具は使いようが大事で、十把一絡げに評価できるものではないという事です。

つまり、人が言うほど、単純労働の需要は無くならないという事です。ただし、安さと効率は常に求められます。仕事としては、条件は悪くなるし、内容はキツくなるしで、良いことは無いでしょうね。国外に目を向ければ、よりコストの低い条件で、請け負う業者なんぞ、いくらでも見つかるのですから。

そして、経済が傾いてきた中国政府が求めるのも、馬車馬のように働く労働力であって、インテリでは無いという事です。原因は違いますが、毛沢東の時代に、地方で荒野を開墾する農民が、最も尊い労働者の姿だと言われたのに似ています。共産思想というのが、その根本にあって、ポル・ポト政権下のカンボジアを見ると判り易いですが、彼は都市から強制的に農村に市民を移住させて、農業を強制しました。共産国家というのは、等しい労働と等しい賃金という考え方があったので、農業こそ思想を体現した理想的な仕事と「設定」して、それ以外の労働を禁じたのです。少しでもインテリっぽい事をすると、攻撃の対象になりました。メガネをかけているだけで、リンチされたという冗談のような本当の話もあります。特に演劇など文化的な仕事をしていた市民は、攻撃の標的にされました。

もちろん、今の中国政府が単純労働者を求めるのは、そういう思想的な理由ではなく、最も外資に期待されているのが、安い労働力だからです。自国では、色々な労働基準法で、労働者に強制できない内容でも、中国に発注すれば、手段はともかく、注文通りのコストで仕上げてくれます。つまり、自国民に強制できないような内容を、中国という外注を使って便利に行っているという事です。自国の法律に触れませんが、その代わりに、仕事で発生するリスクと健康被害を、中国の労働者に押し付けているわけですね。色々と中国を批判しても、これがあるので、中国との関係は切れないのですね。

最も顕著に現れるのは、臓器移植手術のドナーです。普通、自分の体に適合する拒絶反応の起きない臓器を探すのは、病気にもよりますが、年単位の時間のかかります。結局、見つけられずに患者が死亡する事もあります。これは、受け入れないといけない事です。しかし、中国に発注すると2週間で準備できたりします。というのは、ウイグル人を収容所に収監する時に、生体データも登録します。なので、適合する人間はすぐに見つかります。問題は、その人物も生きているという事。中で何が行われているか判りませんが、結果として迅速に適合する臓器が見つかります。

これは、ドイツなどの国にとって、とても便利な事なので、理由は敢えて聞かずに利用しています。実際、許されない多くの事が可能な中国という国家は、実は、とても便利なんですね。人道上できない事を、代わりにやってもらって、成果だけを受け取る。それを、西洋の国々は、案外と澄ました顔で、やっています。

私は、案外と単純労働力の市場は、これからも堅調だと考えています。ただし、条件はよりキツく、労働環境は悪化するでしょうが。』