中国経済、すでに“デフレ入り”?【播摩卓士の経済コラム】
https://news.yahoo.co.jp/articles/e9794f79ae34874c14c5440a95365c84013ae7af?page=1
『■中国のインフレ率が0%に
数字を見て目を疑いました。10日発表された中国の6月の消費者物価指数が、前の年の同じ月と比べて横ばいで、上昇率がゼロになったのです。
日本にいると物価上昇率ゼロは特に驚くことではありませんが、中国のような潜在成長率がまだ高い国で、特殊要因がない時期に物価上昇率がゼロになるなんて、ただならぬことが起きていると、感じさせる数字です。
■先行指標の生産者物価はずっとマイナス
消費者物価は、食品とエネルギーを除いたコア指数でも、6月は0.4%上昇と5月より鈍化しました。
ゼロコロナ政策が終わって、V字回復が期待された中国経済が、逆に需要不足に直面していることを示しています。
同じ日に発表された6月の生産者物価(卸売物価)指数は、前年同月比でマイナス5.4%と、マイナス幅がさらに拡大しました。
生産者物価は、2022年の後半からずっとマイナス圏に沈んだままです。
生産者物価は消費者物価の先行指標なので、今後、中国の消費者物価がマイナスになることも考えられます。東京財団政策研究所の主席研究員である柯隆さんは「中国経済はすでにデフレ入りしたと判断して良い」と話しています。
■4-6月期のGDPも前期比0.8%増
こうした懸念は、17日に発表された4-6月期の中国のGDPでも見て取れます。多くの記事の見出しは6.3%増でしたが、これは前年同期比の数字です。
中国当局は実質GDPをなぜか前年同期比で発表しています。しかし、先進国では足元の経済の勢いを把握するため、前期比で見るのが普通です。
季節調整を加えた前期比は、0.8%の増加にとどまり、1-3期の前期比2.2%から大きく減速しました。
0.8%は、年率換算では3.2%程度なので、中国が2023年に目標とする5%前後から見てもいかに低いかがわかります。
経済活動が再開されれば、一気に経済が復活するといった目論見は見事にはずれた形です。
■ゼロコロナ政策で「倒産と失業」が大発生
その背景には、倒産と失業があります。コロナによる大規模都市封鎖で多くの中小企業が倒産しました。東京財団の柯隆研究員は「中小企業400万社が倒産した」と分析しています。』
『日本のような経済封鎖に伴う企業への支援金は「1元も出なかった」と言います。
中国国家統計局によれば、6月の都市部の16~24歳の若年層の失業率はなんと21.3%に達し、上昇の一途です。
これは、都市部に戸籍がある若者に限った数字で、農村出身の出稼ぎの若年層は含まれていないので、実際の都市部の若年失業率は、もっと高いと見られます。
雇用環境がこれだけ悪ければ、消費に火がつくことなどあり得ません。
■「経済安保」で、頼みの輸出も不振
頼みの輸出も不振です。4-6月期の輸出は前年同月比4.7%の減少でした。
欧米の利上げによる世界経済の減速に加え、経済安全保障の観点から各国が中国への依存を下げようとする動きが重石になっています。
2001年のWTO加盟以来、中国が自由貿易による恩恵をいかに受けて来たことか、中国は今、その「しっぺ返し」を受けつつあると言っても良いでしょう。
こうなれば、かつてなら財政の出番のはずですが、開発事業で得た利益を原資にしてきた地方政府には、不動産不況で財政出動の余力がありません。
金融緩和も、6月はわずか0.1%利下げしかできませんでした。
不動産不況や企業倒産で抱え込んだ不良債権処理にあえぐ国有銀行を支えるためには、一定の利ざやの確保が至上命題で、これ以上の利下げは、したくてもできないということです。
■深刻な不動産不況がデフレを本格化
不動産不況は深刻さを増しています。都市部の住宅価格指数は、2022年6月から前年比でマイナスに陥り、この6月もゼロ%。国家統計局の公式統計ですら、この低迷ぶりです。
実質的に経営破綻して再建中の不動産大手、中国恒大集団は17日に、延期していた2021年と22年の決算をようやく発表しました。
最終赤字の2年分の合計額は、5800億元、日本円で約11兆円と、一企業としては天文学的な数字になりました。保有する開発用不動産の評価額を引き下げたことが主因です。』
『もちろん債務超過です。要は「破綻」の形をとっていないだけと言えるでしょう。そして、恒大は象徴的な1社に過ぎず、中国全土にミニ恒工が数多くあると考えるのが自然です。
中国の不動産価格は日本のバブル崩壊のような急落には至ってないと言われています。しかし、値上がり=キャピタルゲインを当て込んだ不動産取引が逆回転を始めたのであれば、それが深刻化することは避けられません。
すでに低迷する中国経済に、深刻化な不動産不況がのしかかれば、デフレは本格化しかねません。
その時、隣国の日本や世界経済にどんな影響が及ぶのか、波乱が小さくないことだけは確かです。
播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)』