米共和党、政権に対中国強硬堅持迫る ケリー特使に照準
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『【ワシントン=中村亮】米野党・共和党がバイデン政権に中国への強硬姿勢を堅持するよう働きかけている。高官の接触が相次ぐなかで対話維持を優先し、輸出管理や投資規制が後退すると警戒するからだ。
「中国は温暖化問題で誠実な仲介役ではない」。共和党のマイケル・マコール下院外交委員長は13日、小委員会の公聴会で中国と対話を重視するジョン・ケリー大統領特使(気候変動問題担当)の姿勢に疑問を呈した。
共和党のコリー・ミルズ下院議員も「ウイグル族の人権問題などよりも中国の太陽光パネルの早期配備を優先している」と主張。ケリー氏は「そんなことをしたことはない」と真っ向から反発し、応酬になった。
共和党がケリー氏を問い詰めるのは16〜19日に中国訪問を控え、中国への強硬姿勢を緩めないよう迫る狙いがある。ケリー氏は中国高官と11〜12月の第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)に向けて意見を交わす。
バイデン政権は台湾や人権問題で中国と対立しつつも、気候変動や新型コロナウイルス対策で協力すると説明してきた。閣僚対話が再開し、対立分野への対処が緩むと共和党は警戒する。
ブリンケン国務長官は13日、ジャカルタで中国外交担当トップの王毅(ワン・イー)共産党政治局員と2カ月連続で会った。イエレン米財務長官も7月上旬に北京を訪れた。
共和党のロブ・ウィットマン下院議員は日本経済新聞の取材で「政権高官は中国が一定の条件を満たしてから訪中すべきだ」と話した。たとえば中国が国防対話の再開に合意しなければ訪中を取りやめるべきだと訴える。
「中国に行って(軍事当局間の)電話に出るようにお願いして断られているようでは中国のペースにはまる」と警鐘を鳴らした。中国が米国は弱腰だと受け取り、さらなる挑発行為を招くリスクがあるとの見方だ。
対中強硬策の焦点は、中国を対象とした半導体輸出規制の拡大や対外投資規制の導入だ。米商務省は2022年10月、人工知能(AI)向けの先端半導体の輸出を原則禁じた。この対象を広げる案が浮上している。
中国の国営新華社によると7月上旬の何立峰(ハァ・リーファン)副首相とイエレン氏の会談では、中国側は米国による対中制裁に懸念を示した。半導体分野を念頭に置いていたとみられる。
トランプ政権のホワイトハウスで中国担当を務めたイバン・カナパシー氏は、バイデン政権が8月までにAI向け半導体の輸出管理の強化などをしなければ中国との関与を優先していると判断できると分析する。
輸出管理の強化や投資規制の導入に動いても例外を設けたり、範囲を狭めたりして実質的なインパクトを小さくする可能性が残る。
共和党内には中国が台湾海峡や南シナ海で軍事的な緊張を高めて米国が対話を志向するよう促しているとの見方が目立つ。バイデン政権が中国に強硬な政策を続ければ対話を打ち切ると警告し、強硬策の延期や撤回を狙っているとみる向きがある。』