原油の上値重く、OPECプラス 相次ぐ減産も力不足

原油の上値重く、OPECプラス 相次ぐ減産も力不足
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『石油輸出国機構(OPEC)にロシアなどを加えた「OPECプラス」が重ねて減産を打ち出す中、原油先物の上値が重い。中国の需要が読めず、ロシアの供給がさほど減らないのが背景だ。盟主サウジアラビアが3日に表明した追加減産の継続は、相場を押し上げるには力不足だ。

「協力の質の高さは前例がない」。サウジのアブドルアジズ・エネルギー相は6月4日、OPECプラスがウィーンで開いた閣僚会合後、胸を張った。協調減産の枠組みを2024年末まで延長すると決め、サウジは独自に日量100万バレルを7月に追加減産すると宣言した。
ゴールドマン、年末の価格見通しを引き下げ

ところが相場上昇は一時的だった。米ゴールドマン・サックスは6月中旬、年末の北海ブレント原油先物の予想を1バレル86ドルと従来の95ドルから下げた。7月3日、サウジは「予防的」に100万バレルの減産を8月も続けるとし、ロシアも8月の輸出を50万バレル減らすと表明した。

OPECプラスは日量200万バレルの協調減産を22年11月から続けている。今年4月に一部の国が年末まで実行すると表明した追加減産と合わせて366万バレル。サウジとロシアの上乗せを加えると516万バレルだ。世界需要の5%にもなる。

それでも北海ブレントは80ドル前後と1年前より2割以上安いままだ。買いが弱いのは需給両面の不透明さからだ。

需要は世界2位の消費国、中国の回復ぶりが見通せない。「ゼロコロナ」政策が1月に終わり経済活動は持ち直している。しかし工業生産など統計が回復の鈍化を示し、OPECも6月の月報で「中国の需要回復の強さを巡る不確実性が価格に下落圧力を加えた」と認めた。

供給はウクライナ侵攻で米欧日の制裁を受けるロシアが底堅い。中国やインドが割安なロシア産を買い増し、収入確保へロシアは一定の量を輸出したい。減産を徹底したいサウジとのあつれきもささやかれた。米制裁下のイランも輸出を増やしている。

需給が逼迫しないとみた投機筋が原油高に賭けなくなり、それが先物の上値を抑える構図だ。米商品先物取引委員会(CFTC)によると、投機筋のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物の買越残高は12年以来の低い水準にある。長期でも原油不足への恐怖感が薄れている可能性を示す。

世界需要の頭打ちが近いとの見方は広がっている。国際エネルギー機関(IEA)は6月、30年までに天井を打つと予測した。供給はかつての勢いがない米シェールとは対照的に、サウジやアラブ首長国連邦(UAE)、イラクなど中東勢は残存者利益を狙い生産能力の増強に動いている。減産の「自主規制」が緩めば原油は出てくる、との油断がある。
サウジとロシア、原油生産で協力確認

ロシアの民間軍事会社ワグネルが6月に起こした武装蜂起の直後、サウジの実力者ムハンマド皇太子はロシアのプーチン大統領に電話し、協力強化を話し合った。サウジなど湾岸協力会議(GCC)とロシアは今月10日の外相会議で「OPECプラスの合意を守る重要性」を確認した。協調維持に余念がない。

IEAは23年下期に供給不足が強まると予測している。一時より弱気に傾いたとはいえ、相場に上昇圧力がかかっていくとの見方はなおある。「市場の均衡を見極めるのに十分だ」。UAEのマズルーイ・エネルギー相は5日にこう語り、これ以上の追加減産はないとの見方を示している。

(カイロ=久門武史)

[日経ヴェリタス2023年7月16日号掲載]』