誤算の利上げシナリオ、世界に試練 政策金利は6%迫る

誤算の利上げシナリオ、世界に試練 政策金利は6%迫る
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR27DMM0X20C23A6000000/

『【シントラ=南毅郎】世界の中央銀行がインフレ沈静の見極めに苦慮している。急ピッチの連続利上げにもかかわらず、物価の基調が衰えない懸念が強まっているためだ。利上げの終結を見通せず、市場もシナリオの修正を迫られる。金融引き締めの長期化は膨張した債務の返済リスクに直結し、世界経済は試練を迎えている。

28日閉幕した欧州中央銀行(ECB)主催のポルトガルでの国際金融会議は、米欧英の中銀トップがインフレ抑…

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『主要中銀の利上げ判断には差が出始めているものの、通底するのはインフレ沈静に確信を持てずにいる点だ。多くの中銀は引き上げ幅を段階的に縮小し、利上げ局面は終盤に差し掛かろうとしている。

ECBの理事会内部では「利上げの効果が表れるまで1年ほど要する」との見方がある。22年7月の利上げ開始から1年を迎え、政策効果を見極める重要な時期に入った。それでも「近い将来、政策金利がピークに達したと完全に自信を持って言える可能性は低い」。ラガルド氏は予防線を張る。

中銀は粘着インフレに警戒を強める。物価上昇率は米国(4.0%)やユーロ圏(6.1%)で峠を越えたものの、ウクライナ危機に伴う資源高が落ち着く半面、サービスなどにインフレの裾野が広がってきた。賃上げの動きを踏まえて企業がコスト増を価格転嫁し、積極的に値上げに踏み切る。物価の基調が下がりきらない事態に身構える。

問題は世界経済の耐久力だ。インフレ抑制に向けて金融引き締めが長引くほど、企業や家計には金利の上昇が重荷になる。SMBC日興証券によると、世界の政策金利は6月時点で5.9%と米金融危機の08年以降で最も高い。先進国に絞っても4.1%と危機前の07年以来の高水準だ。ウクライナ侵攻が起きた22年2月時点ではわずか0.1%だった。』

『上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説 コロナ危機などを経た後の経済構造の変化で、特に欧米では労働市場の需給が想定外にタイトな状況になっている。これが賃金上昇率加速につながり、サービス分野を中心に物価を押し上げる大きな原因になっており、中央銀行の目標である2%までインフレ率がなかなか下がってこない。ではどうするかという時に、FRBやECBは需要を押し下げる、わかりやすく言うと、景気をある程度悪くさせる道筋を選択している。この場面で金融政策にできることは基本的にはそれしかないという事情もある。難しいのは、中央銀行の利上げはリアルタイムで経済に影響するのではなく、時間が経ってみないとどこまで景気・物価に影響するかがわからないことである。

2023年6月29日 7:35 』