欧州委、デジタルユーロ法案発表 28年以降の発行視野

欧州委、デジタルユーロ法案発表 28年以降の発行視野
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR28CRD0Y3A620C2000000/

『【ロンドン=大西康平】欧州連合(EU)の欧州委員会は28日、中央銀行が発行するデジタル通貨の「デジタルユーロ」に関する法案を発表した。決済手段として利用が減る現金を補完するため、新たな法定通貨として位置づけて導入を検討する。発行が決まるのは早くても2028年以降となる見通しだ。

デジタルユーロは中央銀行デジタル通貨(CBDC)と呼ばれる電子上の通貨。各国代表による欧州理事会と欧州議会が法案を承認したうえで、欧州中央銀行(ECB)が最終的な発行の可否を決める予定だ。ECBは21年に発行に向けた調査を始めており、実際の技術的な手段も今後検討する。

法案ではデジタルユーロを個人や企業が無料で利用できるものと位置づける。インターネットの接続がない場所でも使えるようにし、決済履歴といったプライバシーの確保に最大限配慮する。ほぼすべてのユーロ圏の店舗で使えるようにし、銀行口座を持たない個人でも公的機関を通じて利用できる仕組みとする。

EUがデジタルユーロを検討する背景には、決済手段として現金を提供するだけでは不十分だとの危機感がある。世界的なキャッシュレス化が進み、暗号資産(仮想通貨)の利用も広がる。民間のデジタル決済手段に中銀の役割が奪われることを警戒している。

通貨主権を確保する狙いもある。ロシアのウクライナ侵攻に伴い、日米欧はロシアの決済網を対象に制裁を科した。これを受けて欧州の政策当局は逆制裁を受けた場合のシミュレーションを始めており、有事の際にユーロ圏の経済がまわるように備える。

1人当たりの保有上限を定めることも検討する。消費者が銀行預金をデジタルユーロに大量移管することで、銀行からの資金流出につながるリスクを抑えるのが狙いだ。

CBDCの導入は新興国が先行し、中国は「デジタル人民元」の実証実験を進めている。先進国では米国や日本は具体的な発行時期を明らかにしていない。
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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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分析・考察

中国がデジタル人民元の導入を先行しているのは、実験しながらルールを作っていく考えである。先進国は法案を成立させないと、デジタル通貨の導入はできない。EUの一部の国、たとえば、スウェーデンはキャッシュレスが進んでいる。ただデジタルユーロを実験して導入するには、やはり慎重にルール作りをしておく必要がある。
2023年6月29日 7:24 』