米マイクロン、規制下でも中国に半導体投資 生産を分散
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN16DJG0W3A610C2000000/
『【シリコンバレー=渡辺直樹】米半導体大手のマイクロン・テクノロジーが世界各地でメモリー工場の増強に動いている。当局に規制を受けた中国では16日、陝西省西安の工場で43億元(約860億円)を投資すると発表した。15日にはインド新工場の検討が報じられ、日本への追加投資も決めた。世界各地に投資する全方位戦略でリスクを分散する狙いだ。
「この投資計画はマイクロンの中国事業とチームに対する揺るぎないコミットメント(責任)を示している」。マイクロンのサンジェイ・メロートラ最高経営責任者(CEO)は対話アプリ「微信(ウィーチャット)」上の発表でこうコメントした。
会社のウェブサイトではなく、あえて中国で主流のSNSを通じて西安の新しい生産ラインの計画を発信し、現地での雇用創出もアピールした。
中国でネットを統制する国家インターネット情報弁公室は5月、マイクロンの製品が国家安全に大きなリスクを与えるとして、重要な情報インフラでの調達を停止すると発表した。米国の半導体規制に対する対抗措置とみられている。
規制下でもマイクロンが投資に踏み切るのは、20年にわたる中国での投資や現地企業との協業を強調することで、中国側を懐柔する狙いがあるとみられる。マイクロンはコメント要請に応じなかった。
マイクロンはDRAM、NANDと呼ぶデータ保存のための半導体を手がけ、中国本土の売上高は全体の約1割にあたる。中国の規制は主にインフラ向けで、モバイル機器や家電向けが多いマイクロンの出荷すべてに影響が及ぶわけではないことも大きい。
一方でマイクロンは各国政府の補助や誘致政策を活用しながら、リスク分散を進めるしたたかな戦略を進めている。
米ブルームバーグ通信は15日、マイクロンがインドで半導体の後工程の工場建設を検討しており、10億ドル(約1400億円)から20億ドルを投資する契約に近づいていると報じた。インドのナレンドラ・モディ首相が推進する「メイク・イン・インディア(インドでものづくりを)」の意向に沿った形だ。
半導体の内製化を急ぐ日本に対しては5月、メロートラCEOが来日して岸田文雄首相と面談した。今後数年で最大5000億円を投じ、広島県のDRAM工場に最先端のラインを導入する計画を発表した。
自国でもバイデン米政権による半導体産業に対する527億ドルの補助金を活用し、米東部ニューヨーク州にメモリー工場を建設する。今後20年で最大1000億ドルの投資を計画している。
メモリーは足元では在庫調整で市況が悪化しているが、長期的には生成AIや自動車向けの市場拡大が見込まれている。半導体戦略は各国の思惑が交錯し、メーカーにとって投資計画のかじ取りはこれまで以上に難しいものになっている。
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