米通商代表、自由貿易「国を脆弱に」 IPEFは労働者恩恵

米通商代表、自由貿易「国を脆弱に」 IPEFは労働者恩恵
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1606C0W3A610C2000000/

『【ワシントン=飛田臨太郎】米通商代表部(USTR)のタイ代表は15日、バイデン政権の貿易政策について講演し、従来の自由貿易が「私たちを脆弱にしてきた」と述べた。新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」では労働基準の引き上げをルールに盛り込み、参加国の労働者に恩恵をもたらす方針を示した。

タイ氏は過去の米政権が採用した自由貿易政策を「底辺への競争であり、生き残りのための搾取が報われてしま…

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『タイ氏は過去の米政権が採用した自由貿易政策を「底辺への競争であり、生き残りのための搾取が報われてしまった」と総括した。「効率と低コストを追求した結果、脆弱でリスクの高いサプライチェーン(供給網)が生まれている」と強調した。

世界的な自由競争が強制労働や環境破壊を助長したと指摘。中国を念頭に「このルールでは、不公正なやり方で生産拠点となった国が利することになる」と訴えた。安価な海外製品が米国に流入し「工場が閉鎖され、人々は仕事を失った」と振り返った。

貿易量の増加が新興・途上国の労働者を豊かにするとの期待は実現しなかったとし「永遠に続く搾取のサイクルに陥らないようにしなければいけない」と説いた。

バイデン政権が追求するのは「労働者を中心に据える貿易政策」だと力説した。「労働基準を引き上げることで搾取や虐待を排除し、雇用を海外に移転するインセンティブを減らす」と語った。

日本や東南アジアなど14カ国によるIPEFの議論では「労働者、環境、中小企業に向けたルールの方向性を示そうとしている」と説明した。米政府の目的は「国内外で、より包摂的な繁栄を生み出すことだ」と言及した。

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渡部恒雄
笹川平和財団 上席研究員
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ひとこと解説 バイデン政権のこのような反自由貿易をベースにする「中間層のための外交政策」は、インド太平洋地域での米国の求心力を損なうものとして、米国内外で批判の対象になっています。

例えば、共和党系のシンクタンクAEI(アメリカンエンタープライズ研究所)のコリ・シェキ外交政策研究部長は、この保護主義が中国の脅威に対抗するための同盟強化と矛盾すると指摘し、米国が自由貿易から乖離する中で、中国は世界最大の自由貿易圏であるRCEP(地域経済連携協定)を立ち上げ、米国の主導するIPEFは誰もその内容を説明できないと批判しています。

https://www.foreignaffairs.com/united-states/biden-foreign-policy-mess
2023年6月16日 9:12』