中国「序列5位」蔡奇氏に要職集中 習近平氏1強象徴習政権

中国「序列5位」蔡奇氏に要職集中 習近平氏1強象徴
習政権
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『【北京=田島如生】中国共産党の習近平(シー・ジンピン)指導部で、党序列5位の蔡奇(ツァイ・チー)政治局常務委員の存在感が増している。習総書記の補佐役から国家安全、思想・宣伝の担当まで党の要職が蔡氏に集中する。序列や前例にとらわれない人事は習氏に権力が集中する1強体制を象徴している。

5月30日、北京。習氏が主宰した党中央国家安全委員会の会合に7人いる最高指導部の1人、蔡氏の姿があった。これまでの…

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『これまでの2人から3人に増えた副主席ポストに任命され、米中対立を含む中国が直面する安全保障問題などを議論した。

習氏が2014年に新設した同委員会の副主席は国務院(政府)トップの首相と、国会に相当する全国人民代表大会(全人代)トップの全人代常務委員会委員長が務めてきた。習氏は国家安全を重視しており、3人目の副主席に蔡氏をあてた。

蔡氏は党の要職を幅広く担う。たとえば日本の官房長官にあたる中央弁公庁主任だ。今年3月に就くと、習氏の国内外の視察や出張にほぼ全て同行し、身辺警護にも携わる。総書記らの日常業務を差配し、スケジュール管理の権限を握る。

総書記の秘書役ともいえる中央弁公庁主任を最高幹部の常務委員が担うのは異例だ。前任で党序列6位の丁薛祥(ディン・シュエシアン)筆頭副首相が務めたのは昨年10月に最高指導部入りする前だった。習氏は慣例にとらわれず蔡氏を登用した。

蔡氏は中央書記処の筆頭書記として、政治局会議の運営や出席者への連絡・管理など党務全般にも責任を負う。習氏の思想を広めたり権威を高めたりするため、国民への宣伝や教育にあたる。

習氏は自らの名前を冠した「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」を普及させるチームのトップも蔡氏に任せた。習氏が4月に北京で開いた党の会議で学習徹底を呼びかけた際、この人事が明らかになった。

習近平総書記㊨の地方視察に同行する蔡奇氏㊧(国営中国中央テレビの映像から)

「党の全ての同志が誠実に学び、理解し、実行しなければならない」。蔡氏は会議の終わりに演説し、強調した。「多くの党員や幹部が理解できるよう教育、指導する必要がある」と力説した。

党要職が蔡氏に集中する現状について、ネット上には「担務の多さは序列2位の李強(リー・チャン)首相を上回る」との見方がある。日中外交筋は「忠誠心の高さで習氏の信頼を勝ち得てきた」と話す。

習氏側近の代表的な派閥は福建省、浙江省、上海市で知り合った側近グループの3つだ。「浙江閥」には李氏、「福建閥」には何立峰副首相らがいる。丁氏は上海市党委秘書長として習氏を支えた。

蔡氏は福建省、浙江省の両方で部下として仕えた。習氏が浙江省党委書記のころは台州市などのトップを務めた。習氏が12年に党最高位の総書記になると、14年に中央国家安全委員会弁公室の副主任、17年には北京市党委書記に抜てきされた。

蔡氏は新型コロナウイルス下にあった22年北京冬季五輪の組織委員会の責任者だった。ゼロコロナ政策をとりながら開催したことは習氏の評価につながったとされる。

中国政治に詳しい青山瑠妙・早大教授は「習氏は蔡氏を党組織のパイプ役に起用することで自らの意思を党全体に反映しやすくしようとしている」とみる。「年齢が67歳と習氏(69歳)に近く、後継者になり得ないのも習氏の安心材料になっている」と分析する。

とはいえ、蔡氏が実質的な権力をもっているとの声は多くない。最高指導部は習氏が1強で君臨し、鄧小平氏がかつて敷いた集団指導体制は事実上崩壊した。習氏を除く6人が重要事項の決定に関わる余地は乏しい。

国務院を率いる李氏も例外ではない。中国では国家主席が政治と外交、首相が経済政策という役割分担をしてきた。1990年代後半に首相に就いた朱鎔基氏は当時の江沢民(ジアン・ズォーミン)総書記のもと、国有企業改革で大なたを振るった。

李氏は副首相を経ずに首相に選出されており、金融や財政の経験はそれほど多くない。現指導部は習氏が政治・外交に加え、経済政策も決定権を握るとみられる。

日中外交筋は「現指導部は1強と6人の部下にすぎない。蔡氏は習氏のお気に入りだが、今後も実権をもつことは考えにくい」と指摘する。

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