米国、インドと武器生産協力で工程表 ロシア依存くさび

米国、インドと武器生産協力で工程表 ロシア依存くさび
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM043XR0U3A600C2000000/

『【ニューデリー=岩城聡、シンガポール=中村亮】米国のオースティン国防長官とインドのシン国防相は5日、ニューデリーで会談した。両国で防衛分野で連携を強化することを確認した。インドは武器調達などでロシアとの結びつきが強い。米国は軍事支援を通じ、インドのロシア依存の低下を目指す。

インドで戦闘機に使うジェットエンジンを共同でつくることについても、大筋で合意したとみられる。インド政府は会談後、防衛産業の…

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『インド政府は会談後、防衛産業の分野において、両国が技術の共同開発や共同生産で連携強化を進めることなどを議論したと発表。こうした目標の到達に向け、今後数年にわたるロードマップ(工程表)を策定したことも明らかにした。

両氏は会談後にツイッターに投稿。オースティン氏は「シン氏のリーダーシップは、両国のより深い協力や技術共有などへの道を切り開くのに役立つ」とした。シン氏も「戦略的利益の一致や安全保障協力の強化など、様々な分野における防衛協力の強化を中心に行われた」と投稿した。

オースティン氏の今回の訪問は、22日に控えるモディ首相の訪米に向けた「地ならし」の意味合いがある。モディ氏は国賓として米国を訪れ、米議会の上下両院合同会議で演説に臨む予定だ。戦闘機エンジンの共同開発については、バイデン米大統領とモディ氏の首脳会談にあわせて契約の調印や正式発表が行われる見込みだ。

バイデン米政権はインド重視を鮮明にしている。バイデン政権や米議会は、中国やロシアの強権主義体制に対抗するうえで、「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国の代表格であるインドとの関係を深化させたい考えだ。

米政権はインドがウクライナ侵攻を続けるロシアに中立的な立場を崩さず、海外メディアに対し報道の自由を阻害するような行動をとっても、激しい批判を控えている。

ただ、米共和党のマイケル・マコール下院外交委員長は4月末の日本経済新聞の取材で、ロシアと関係を保つインドに対して「我々は同意しない」と話した。

米側はインドと兵器の共同開発を進め、武器購入などで関係が深い印ロ関係にくさびを打ち込み、ロシアの影響力を低下させることを狙う。

一方、インド側が米国との共同生産を決めた背景には、旧ソ連時代からの友好国であるロシアに武器輸入を依存し続けることへの危機感がある。

インドは中国と国境紛争を抱えており、武器の近代化と軍需産業の国内育成は不可欠とみている。だがロシアはウクライナ侵攻後、インドへの兵器供給に遅れが生じている。インドは不信が募り、ロシアへの兵器依存を低下させることを決めた。

自国の防衛産業を育成したいという思惑もある。「インドは防衛関連企業にとって市場であるだけでなく、潜在的な防衛パートナーだ」。2月、印南部ベンガルールでの航空機の見本市で、モディ氏はインド国内での製造拡大を呼びかけた。

さらに防衛装備品の年間輸出額を、現在の15億ドル(約2000億円)規模から24年度には50億ドルに増やすと打ち上げた。

昨年8月には米航空機大手ボーイングは、防衛分野のサプライチェーンや製造などで、インドへの投資を強化する計画を発表。そのうえで、インド軍に「FA18」の次期艦載戦闘機としての採用を提案している。

防衛装備品の自国生産は、モディ氏が自らが掲げる「メーク・イン・インディア」構想にもつながる。国内産業の発展や雇用拡大につながれば、来年の総選挙(下院選)に向けての自国民へのアピールにもなる。

印シンクタンク、オブザーバー・リサーチ財団の戦略研究部門トップ、ハーシュ・V・パント氏は、「インドが競争力のある防衛メーカーを持つためには、米国の高いレベルの技術移転や技術協力が必要だ」と説く。

日米豪印4カ国の枠組み「Quad(クアッド)」は中国けん制の意味合いが強い。米国を皮切りに、将来は日本や豪州もインドと防衛装備品などで連携を深める可能性も広がる。』