JOLED、民事再生法申請 ソニーとパナの有機EL統合会社

JOLED、民事再生法申請 ソニーとパナの有機EL統合会社
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC277RY0X20C23A3000000/

『』パナソニックホールディングスとソニーグループの有機EL事業を2015年に統合して発足したJOLED(ジェイオーレッド)は27日、東京地方裁判所に民事再生手続き開始の申し立てをしたと発表した。同日、保全処分と監督命令を受けた。負債総額は337億円。事業の一部はジャパンディスプレイ(JDI)に承継する。日本は有機ELの技術で中国や韓国企業に先行しながら、ビジネスとして大きく立ち上げられなかった。

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『JOLEDは能美事業所(石川県能美市)、千葉事業所(千葉県茂原市)を閉鎖する。製造部門などで働く約280人は解雇し、製造・販売ビジネスから撤退する。技術・開発部門についてはJDIに承継することで、基本合意書を結んだ。同部門では約100人が働く。

JDIは「JOLEDの人材やノウハウは当社の成長戦略に寄与する」とコメントした。同社は有機ELを使った小型パネルの生産を続けている。JOLED設立時に15%を出資していたが20年3月に全株式をINCJ(旧産業革新機構)に譲渡した経緯があった。

57%を出資する筆頭株主のINCJは投融資合わせ1390億円を投じていた。同機構として2番目の大型案件にあたる。勝又幹英社長はJOLEDの民事再生法申請について「誠に断腸の思い」とコメントした。「さらなる資金投下が必要な中で、関係者からの追加出資を望めなかった」ことで継続支援を断念したという。

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JOLEDはソニーとパナソニックから有機ELの技術を引き継いだ。両社とINCJなどの出資を受け、独自の生産技術を使った有機ELの生産を目指していた。大型パネル化への対応や低コストによる量産に利点があるとされていた。

有機ELは液晶ディスプレーと異なりバックライトが不要で、軽量化などもしやすい。日本が技術開発で先行しながら、事業化で韓国企業に出遅れた経緯がある。日本の電機産業が投資を足踏みする間に、サムスン電子などは大型投資を繰り返し、市場シェアを押さえていった。

JOLEDは量産ライン立ち上げの資金確保にむけ、18年にデンソーや豊田通商、住友化学など国内事業会社からの出資を受け入れた。20年には中国・家電大手のTCL科技集団と資本業務提携を締結していた。

ただ、20年を目指していた量産稼働は、新型コロナウイルスの感染拡大などを受け21年春にずれ込んだ。半導体不足による供給難や、巣ごもり需要の剝落による市況悪化などで収益改善も遅れ最終赤字が続いた。22年3月期末時点で債務超過に陥っていた。

有機ELパネルを巡っては、サムスンや韓国のLGディスプレーが規模の大きいスマートフォン向けやテレビ向け市場で圧倒的に優位に立つ。JOLEDはパソコンのディスプレー向けなど中型パネルの生産技術しか持たず、有機ELシフトが進んだ市場を取り込めなかった。日本勢が手掛けるのはJDIの小型パネルなどにとどまる。

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佐藤一郎
国立情報学研究所 教授
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ひとこと解説 日本は有機ELの開発では先行したが、ビジネスでは敗退となるであろう。
いろいろ要因があるだろうが、JOLEDは、経営破綻したエルピーダや、しばしば経営悪化が報道されるジャパンディスプレーと同様に、政府主導で設立した国策企業であり、しかも日の丸○○を標榜するなど、多く点で重なる。

今後、同じ失敗を繰り返さないためにも、国策企業が適切だったのかを総括をすべきだろう。

なお、昨年設立した、最先端の微細半導体製造を狙う国策企業、ラピダスがあるが、同じ流れを辿らないことを祈りたい。

2023年3月28日 2:00』