ホンジュラス、台湾と断交 中国が国交結び米台にくさび

ホンジュラス、台湾と断交 中国が国交結び米台にくさび
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM260MI0W3A320C2000000/

 ※ 画像は、ネットで拾った。( https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2625G0W1A021C2000000/ )

『【台北=龍元秀明】台湾の外交部(外務省)は26日、中米ホンジュラスと断交したと発表した。ホンジュラスは同日、台湾に代えて中国と国交を樹立した。台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は29日から、約4年ぶりに米国や外交関係のある中米2カ国を訪問する。その直前の動きで、中国が米台連携にくさびを打つ形となった。

ホンジュラス政府は25日(現地時間)「中華人民共和国が中国の唯一の合法政府と認め、台湾とはいかなる関係や接触も持たないと約束する」との声明を発表した。中国外務省は26日の声明で「ホンジュラスの立場を称賛する」とした。

台湾の蔡総統は26日、断交について「大変残念だ」とのコメントを発表した。その上で「中国はここ数年、様々な方法で台湾を抑え込み、地域の平和と安定に影響を及ぼしてきた」と述べた。

台湾の呉釗燮・外交部長(外相)は同日、記者会見を開き「(ホンジュラスは)長年の支援や友好関係を無視した」と批判した。80年以上続いた外交関係が終わることを「深く悲しみ、落胆している」とした。

さらに呉氏は、断交のタイミングが蔡氏の中米外遊直前となったことについて「中国が(水面下で)意図的に動いた疑いがある」と指摘した。外交部によると、ホンジュラスは台湾との断交を決める直前、唐突に約24億5000万ドル(約3200億円)もの経済援助を求めてきたという。

その中身について呉氏は「(経済支援というより)直接の金銭要求に感じ、それは賄賂と同じだ」と批判した。

台湾はホンジュラスへの経済支援などの協力プログラムを即刻打ち切り、大使館を撤収する。
ホンジュラスでは2022年1月、親中派のシオマラ・カストロ氏が大統領に就任した=ロイター

ホンジュラスでは2021年、親中派とされるカストロ氏が大統領に当選したのを機に、風向きが変わった。22年1月に開いた大統領の就任式には、ハリス米副大統領と台湾の頼清徳副総統をそろって招待し、当初こそ米台に配慮をみせた。だが、カストロ氏の親中姿勢はその後も変わらなかった。米台連携による必死のつなぎ留めにもかかわらず、今回、中国の攻勢に米台が敗れる形となった。

対中強硬路線をとる民主進歩党(民進党)の蔡政権が16年にスタートして以降、中国は台湾と外交関係のある国に対し、攻勢に出た。台湾に代えて中国と国交を樹立するよう呼びかけ、急ピッチで動いた。

台湾が外交関係を維持するのは南米パラグアイなど世界で残り13カ国となった。蔡政権発足後の約7年間で9カ国減った。

直近では19年に南太平洋のソロモン諸島とキリバス、21年に中米ニカラグアが相次ぎ台湾と断交した。「断交ドミノ」に歯止めがかかっていない。

蔡氏は29日から、米国を経由する形で、ホンジュラスの近隣にある中米グアテマラ、ベリーズの訪問を予定する。数少なくなった外交関係のある中米諸国を訪問し、米台で連携して、引き続きつなぎ留めを図る狙いだ。

米国の台湾窓口機関である米国在台湾協会(AIT)は26日の声明で、「中国は各国との約束をないがしろにした例があまりに多い。米国は台湾との交流を引き続き深化させ、拡大する」とコメントした。

親中路線をとる台湾の最大野党・国民党は26日、「断交は深く遺憾だ。(蔡氏の与党)民進党の誤った外交政策により、台湾の利益が損なわれた」との声明を発表した。

台湾は24年1月に次期総統選を控えている。対中政策や米国との連携が焦点となる見通しで、外交を巡る与野党間の攻防も激しくなっている。

【関連記事】

・中米ホンジュラス、中国と国交準備 台湾総統の歴訪前に
・台湾、ホンジュラス大使召還 中国との国交交渉に反発

ニュースレター登録
多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

神保謙のアバター
神保謙
慶應義塾大学総合政策学部 教授
コメントメニュー

分析・考察

台湾が残された外交関係を維持するコストは年々高まっており、中国の攻勢に対して踏みとどまらせることができなかったもう一つのケースといえる。中国は残りの13カ国にも徹底攻勢をかけ「一つの中国」原則の完成形を目指すだろう。ただ、台湾の地位をめぐる焦点はもはや台湾が主権国家であるかではなく、中国の一国二制度による平和的統合が難しいことにこそある。仮に台湾が全ての外交関係を失ったとしても、国際社会が台湾の特別な地位に対する見方を変えるわけではない。
2023年3月27日 4:15 』

中国、中米諸国に台湾断交迫る ホンジュラスに照準
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2625G0W1A021C2000000/

『2021年11月2日 19:17

【メキシコシティ=清水孝輔、台北=中村裕】中国がカリブ海・中米諸国に台湾との断交を迫っている。次の標的は11月28日に大統領選を予定するホンジュラスだ。世界で台湾を国家承認する15カ国のうち8カ国がこの地域に集まる。中国は2022年、北京冬季五輪、共産党大会という重要行事を控え、軍事だけでなく外交でも台湾への圧力を強める。米欧は警戒している。

ホンジュラス大統領選で最有力候補に浮上した最大野党LIBREのシオマラ・カストロ氏は、当選した場合「即座に中国と外交・通商関係を結ぶ」と繰り返す。ホンジュラスは台湾と外交関係を維持しているが、カストロ氏は中国に乗り換える方針だ。

大統領選は当初、首都の市長で与党・国民党のナスリー・アスフラ氏が先行し、テレビ司会者のサルバドル・ナスララ氏、カストロ氏が追う構図だとされた。だが、ナスララ氏が出馬を取りやめてカストロ氏を支持すると表明し、同氏とアスフラ氏の一騎打ちの様相になった。

ホンジュラスの民間団体CESPADの直近の世論調査で支持率は、カストロ氏が38%に伸び、アスフラ氏の21%を引き離した。

断交を明言するカストロ氏の伸長に、台湾は強い危機感を示した。台湾とホンジュラスは21年、外交関係の樹立から80年を迎えた。台湾外交部(外務省)はカストロ氏の発言について「中国は私たちの外交関係が不安定だとの誤った印象を与えるため民主的な選挙を利用している」と訴え、カストロ氏の背後に中国が存在すると示唆した。

中国外務省の汪文斌副報道局長は9月の記者会見でホンジュラス大統領選を念頭に「台湾は中国と不可分だ。(ホンジュラスなどと関係を強めても)台湾独立の動きは必ず行き詰まる」と主張した。当時はカストロ氏の勢いが弱かった。

台湾が警戒するのは、中国が「台湾独立派」とみなす蔡英文(ツァイ・インウェン)総統が就任した16年以降、カリブ海・中米諸国への影響力を強めているからだ。17年にパナマ、18年にはエルサルバドル、ドミニカ共和国がそれぞれ台湾と断交し、中国と国交を結んだ。

中国の武器はインフラ建設を含む経済支援だ。最近では新型コロナウイルスのワクチン提供を加え、この地域の国々に食い込んでいる。

中国の企業連合は18年、15億ドル(約1700億円)でパナマ運河にかかる4本目の橋の建設案件を落札した。中国はパナマに新型コロナ対策として20年2月~6月、ヘルスケア関連として計200万ドルの支援を実施した。

中国は19年、エルサルバドルに対し、競技場、国立図書館などの建設に計5億ドルを投じると約束した。今後、左派の独裁政権のニカラグア、大統領が暗殺されたハイチなど、経済や政情が安定しない国に台湾との断交を働きかける可能性がある。

これに対し、台湾は「資金力で中国に勝ち目がないとみている」(外交関係者)といわれる。18年には台湾の呉釗燮・外交部長(外相)が「ドル外交はしない」と明言した。中国のように、多額の経済支援を相手国に約束して外交関係を維持する手法はとらない、というわけだ。

台湾は2月、中国と国交のある南米のガイアナに代表機構「台湾事務所」を設立すると発表した。ガイアナは当時、中国と距離を置き始めていた。だが、発表の翌日、ガイアナ外務省は「台湾といかなる外交関係もない。(台湾事務所の設立は)誤解だ」と説明し、事務所の開設計画を撤回した。中国の「台湾封じ込め」は徹底している。

窮地の台湾を側面支援するのは米国だ。7月にホンジュラスを含む中南米諸国へワクチンの追加提供を決めた。10月にはワクチン供給の国際的枠組み「COVAX(コバックス)」を通じ、ニカラグアにも約30万本分のワクチンを提供した。

ワクチンを製造する中国はこの地域で外交関係のある国に積極提供した。だが、台湾はワクチンを十分に確保できず、台湾を承認する国は不満を募らせていた。

カリブ海・中南米諸国は米国の「裏庭」と呼ばれ、同国のサプライチェーン(供給網)や安全保障を確保するうえで地政学上の要衝といえる。米国のトランプ前政権は明確に軽視したが、バイデン政権はこれを改め、ブリンケン国務長官らを派遣してきた。

米ローズ・カレッジのチェンカイ・チェン准教授は「中国が今後、中南米で台湾承認国の多くを切り崩していけば、米国にも大きな打撃だ」と指摘する。

米国と近い欧州諸国にとっても国際社会における中国の勢力拡大と台湾の後退は食い止めたい流れだ。台湾外交部の呉氏は最近、ほぼ2年半ぶりに欧州諸国を歴訪した。欧州側からもフランス議員団が10月に台湾を訪れ、関係強化を試みた。』