米中、秩序の支配争う局面に カギ握るグローバルサウス

米中、秩序の支配争う局面に カギ握るグローバルサウス
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN180RE0Y3A310C2000000/

『米中対立は国際秩序の支配を争う様相を強めた。中国は米国の勢力圏である中東でサウジアラビアとイランの7年ぶりの外交正常化を仲介し、ロシアが侵攻するウクライナでも仲裁役として振る舞い始めた。米国は一方的な現状変更を許さず、同盟強化を急ぐ。競争はグローバルサウス(南半球を中心とした途上国)を巻き込んで広がる。

「民主主義国家が我々のためだけでなく、世界全体のために安全と繁栄を実現できることを改めて示す…

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『バイデン米大統領は13日、いまは向こう10年の世界を左右する「変曲点」だと強調した。

その1週間前、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は米国を名指しで批判するためらいを捨てた。「米国が主導する西側諸国は全面的な封じ込め、包囲、抑圧を実施し、我々の発展にかつてない厳しい試練をもたらした」

その日、北京で始まったサウジとイランの協議は中国の仲介を経て、2カ月以内の外交正常化に合意した。米国が強い影響力を保ってきた中東で、しかもバイデン政権がサウジとイスラエルの関係改善に注力していた頭越しに中国は「主役」を演じた。

米外交の失点か。ブリンケン米国務長官の助言役、デレク・ショレ顧問に聞くと「そうではない。我々は中東の緊張を和らげるすべての動きを歓迎する」と反論。イランが本当に合意を守るか「脚注付き(評価を留保する)で見守る」と付け加えた。

「ロシアや中国のために中東に空白を残すつもりはない」。バイデン氏は2022年7月のサウジ訪問でこう宣言したが、中国はまさに米外交の隙を突いた。

確かに米海軍第5艦隊は中東の海を支配し、サウジの米軍駐留は約2700人に上る。だが20日でイラク戦争の開戦から20年たち、米国の疲弊感は濃い。エネルギー自給率の上昇で中東の戦略的価値が薄れ、サウジとの関係はこじれ、イランと敵対する。

「米国がルールに基づく国際秩序の擁護者であることを巡り、中国は戦略的に矛盾を指摘してきた」と米エール大学の中国専門家モリッツ・ルドルフ氏はいう。「国連憲章の起草に関わったアフリカやアジアの国はわずかだといった話法でグローバルサウスの支持を集め、米国を批判し、国際秩序を内部から変えようとしている」

中国は他国が台湾問題など中国共産党の体制に関わる領域に触れない限り、その国が人権を後回しにしても「内政問題」として気にせず経済で結びつく。世界最大の原油輸入国である中国はサウジに輸入全体の2割近くを依存する。イランの最大の輸出相手でもある。「和平」は中国に原油の持続的な安定調達という実利をもたらす。

「仲裁者」への布石は続く。中国外務省は2月、国際紛争の解決をめざす「国際調停院」の設立準備を表明した。パキスタン、カンボジア、スーダンなどと協議する。ルドルフ氏は「国際紛争解決に中国が努力してきたというシナリオ作り」とみる。

米国は中国を「唯一の競争相手」とみなし、日本や韓国、オーストラリア、フィリピン、欧州との同盟強化を急いできた。世界中の同盟網は米国の強み。南シナ海や台湾海峡を巡る中国の一方的な現状変更を抑止するために同盟の強化は欠かせない。

問題は同盟外の国も含めた幅広い信頼を得ることだろう。米単独で世界のあらゆる問題を差配する力はなく、インドを筆頭に存在感を増すグローバルサウスが国際世論を左右する。米国か中国かという選択を拒み、米国とも中国とも関係を結ぶ現実路線を好む国々と連携するには、日本などと組んだ経済支援が重要になる。

いまの中国に他地域に継続して関わる十分な外交力や軍事力は備わっていない。習氏はロシアの侵攻を批判しないウクライナ危機の「仲裁案」を携えてプーチン大統領と会い、21日の共同声明で「多極化する世界」を掲げた。ルドルフ氏は「終戦と戦後の復興、国際秩序改革を巡る交渉で良い席を確保しておく狙いだろう」と分析する。

(ワシントン支局長 大越匡洋)』