クレディスイスが、UBSに買収される : 机上空間
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『1856年に設立された、歴史あるスイスの名門銀行が、ライバルであるUBSに4200億円で買収される事に決まりましたね。資産規模で言えば、金融破綻劇の発端になったシリコンバレー銀行の3倍になる世界的な巨大銀行です。世界中の主要都市に支店を持っているので、名前を聞いた事のある人は多いでしょう。いわゆる「金持ち」向けに資産運用や、プライベートバンキングなどを手掛けていた、「いかにもスイス」な業務を得意としていて、資産家御用達の銀行です。従業員は約5万人。
とにかく、ここ最近、この銀行は不正行為に関わったスキャンダルが大量に出ていて、ブルガリアの麻薬組織によるマネーロンダリング、モザンビークでの汚職への関与、銀行内部での盗聴などのスパイ疑惑、アルケゴスへの不明瞭な基準での投資と、投入した資金の貸し倒れなど、とにかく目先の金を巡って、脱法行為が目立ち、銀行に対する不信感から顧客の預け入れ資金が30%以上も流出するという取り付け騒ぎになっていました。抱えている訴訟された裁判も多く、課せられた罰金も多額です。
そして、タイミングが悪い事に、3月9日に予定していた報告書の提出を、延期した事で、さらに不信を呼び込む事になり、シリコンバレー銀行を発端にした金融不安に巻き込まれる形で、株価が史上最低価格まで下落しました。こうした動きを反映して、クレディスイスのCDS(破綻時に支払われる保険金のようなもの。クレジット・ディフォルト・スワップ)が、過去最大だったリーマンショック時の3倍にまで価格が上がる(つまり、破綻する確率がマックス)という末期症状になっていました。
これを見ると判るように、金融で最終的にモノを言ってくるのは信用です。不正行為に手を貸せば、その時点では大金が手に入るかも知れませんが、最終的には通貨という「共同幻想」を商品として扱っているのですから、信用が崩れたら、その金融機関に先は無いという事です。
この銀行は、国際的にも金融システムの運営に、重要な役割を果たすとされるG-SIBにも選定されています。金融安定理事会(FSB)に、国際的な金融システムの安定に欠かせない銀行として選ばれています。全世界で30行しか指定されていない銀行の一つです。これだけの規模の銀行になると、仮に破綻した場合、ここだけの話では絶対に済みません。取引先の経営リスクを引き上げ、世界経済に多大な影響を与えます。
それゆえ、スイス政府としても、「潰せない」事を前提に、早々に7兆1000億円の資金注入をするなど、救援策を発表すると同時に、「引受先」を政府主導で探していたと思われます。ただ、この銀行の運用資金は、1.7兆ドルとも言われていて、大きすぎて救済できないのではないかという意見も多かったです。今回の買収金額も、最初は1000億円程度の提案で、「安すぎる」とクレディスイス側がゴネていたようですが、何とかまとまったようです。とはいえ、多くの問題を抱える銀行ですので、嬉しい買い物では無かったでしょうね。瑕疵物件を押し付けられた感がビンビンします。
世界的な政策金利の急激な引き上げという環境の変化が、規模のでかい組織ほど、どれだけの弊害を引き起こすかと言う一つの例です。まぁ、クレディスイスの場合は、それ以前に企業倫理が崩れていたという事もありますが、この問題は、このブログの記事で何回か言ってるように、特定の金融機関に限定された話ではありません。生命保険会社、銀行、証券会社など、債権を扱って、資産として運用しているところは、どこでも影響を受けます。日本も表面化していないだけで、青息吐息の企業は、少なくないはずです。長い間、日本国際の利回りが、最低レベルだったので、リスクヘッジする為に海外の債権に手を出していた金融機関は多いはずで、それが軒並み評価額が下がっているので、含み損になっている分を確定した時点で、大幅な損失を出す可能性があります。
リーマンショックとは、別種の管理された中でのリスクの増大です。インフレという圧力の中で、結果が予測できたとしても、やらざるを得ない政策が引き起こす金融リスクです。それゆえ、経済事件的な突発性は無いですが、真綿でクビを締めるような、徐々に進行する病のようなものです。これは、これで、決して簡単に解決する問題では無いのです。 』