習国家主席 台湾統一のためには武力行使も辞さない姿勢示す

習国家主席 台湾統一のためには武力行使も辞さない姿勢示す
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221016/k10013860291000.html

『中国で、政策の基本方針などを決める5年に1度の共産党大会が16日から始まり、習近平国家主席が党トップの総書記として報告を行いました。この中で習主席は、幅広い分野で実績をあげたと誇示するとともに、台湾統一のためには武力行使も辞さない姿勢を示しました。

【こちらでも詳しく】中国 共産党大会 習主席の発言ポイントは 専門家解説動画
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221016/k10013860571000.html

中国共産党大会は、およそ2300人の党員の代表などが参加して北京の人民大会堂で始まり、習近平国家主席が党のトップの総書記として、およそ1時間45分にわたって報告を行いました。

ただ終了後に会場で配布された報告の原稿は、およそ3時間半に及んだ前回、5年前の党大会の報告より4ページ多い72ページあり、習主席が読み上げたのは半分ほどの短縮版だったとみられます。

この中で習主席は、最重要課題の1つに掲げてきた農村部の貧困層をなくすという目標を達成したほか、新型コロナウイルスの感染拡大について「『ゼロコロナ』政策を揺るぎなく堅持して感染拡大との闘いを展開し、人々の命と健康を最大限に守った」などとして、幅広い分野で実績をあげたと誇示しました。

一方、台湾をめぐっては「『平和統一、一国二制度』の方針は両岸の統一を実現する最善の方法だ」として、香港やマカオで導入されている「一国二制度」による台湾統一の方針を改めて強調しました。

そのうえで「最大の誠意と努力で平和的な統一を堅持するが、決して武力行使を放棄せずあらゆる必要な措置をとるという選択肢を残す」と述べ、統一のためには武力行使も辞さない姿勢を示しました。

また、外交政策については、対立を深めるアメリカを念頭に「冷戦思考と個別の国への内政干渉に反対する」とけん制しました。

今回の党大会では、現在69歳の習主席が「68歳で引退する」という慣例を破って党トップとして異例の3期目入りするのは確実とみられ、党大会閉会翌日の23日にも新たな指導部が発足する見通しです。

約1時間45分にわたった「報告」の詳しい内容は?

●台湾統一のためには武力行使も辞さない姿勢示す

習近平国家主席は、台湾情勢をめぐってこれまでの実績を誇示した中で「われわれは、国の主権と領土の一体性を守り台湾独立に反対するという固い決意と強大な能力を示した」と述べました。

また、今後の方針を示した中では「『平和統一、一国二制度』の方針は両岸の統一を実現する最善の方法だ」として、香港やマカオで導入されている「一国二制度」による台湾統一の方針を改めて強調しました。

そして「われわれは最大の誠意をもって、最大の努力を尽くして平和的な統一の未来を実現しようとしているが、決して武力行使を放棄せずあらゆる必要な措置をとるという選択肢を残す」と述べ、統一のためには武力行使も辞さない姿勢を示しました。

さらに「その対象は、外部勢力による干渉と極めて少数の『台湾独立』分裂勢力と、分裂活動に対してであり、決して多くの台湾同胞に対するものではない」と述べ、アメリカなどを念頭にけん制しました。加えて「祖国の完全な統一は必ず実現しなければならないし必ず実現できる」と強調しました。

●香港については中国が統制を強化する姿勢

報告のなかで習主席は、香港について「われわれは憲法と基本法に基づいて、愛国者による統治の原則を実行し、香港の情勢は混乱から安定した状態へと大きく転換した」として、抗議活動が相次いでいた香港に安定をもたらしたと強調しました。

また「一国二制度を揺るぐことなく貫徹する。全面的な中央による管轄統治権を着実に実行する。香港が国家の発展にいっそう融合することを支持する」と述べ、引き続き中国が香港への統制を強めていくとしています。

●“2035年までに経済力や科学技術力を大幅に向上”

また2035年までに経済力や科学技術力を大幅に向上して1人あたりのGDP=国内総生産を中程度の先進国の水準に引き上げることが掲げられました。

習近平国家主席は「国内と国外の2つの循環が相互に促進し合う新たな発展の形の構築を加速させる」と述べ、対外開放を進める姿勢に変わりはないことを強調しつつ、国内経済を主体とする方針を示しました。

内需の拡大や国内産業の高度化で質の高い発展を目指すというもので、アメリカとの対立の長期化を念頭に、サプライチェーン=供給網の強じん性や安全性を高めることなども掲げています。

そのうえで「イノベーションがけん引する発展戦略の実施を加速し、高いレベルの科学技術の自立自強の実現を加速する」と述べて、製造業や宇宙、デジタル化などの分野で科学技術の育成をさらに強化していく考えを示しました。

●すべての人が豊かになる「共同富裕」目指す姿勢

さらに習主席は、貧富の格差を是正し、すべての人が豊かになる「共同富裕」という目標の実現を目指す姿勢を示しました。

この中で習主席は「『共同富裕』を着実に推し進める。収入分配を規範化し、富を築く仕組みを規範化する」と強調しました。

習指導部は「貧困問題を解決した」とする一方、経済成長に伴って拡大した貧富の格差解消には至っていないことから、富裕層や大手民間企業からの富の再分配に取り組むことを改めて示した形です。

また、習主席がみずから掲げた巨大経済圏構想「一帯一路」について「『一帯一路』の共同建設の質の高い発展を推し進め、多角的で安定した国際経済の構造や経済貿易関係を維持する」と述べ、推進する方針を改めて示しました。

●アメリカを念頭に“冷戦思考と内政干渉に反対する”

習主席は「中国の特色ある大国外交を全面的に推し進め、真の多国間主義を実践するとともに、あらゆる覇権主義と強権政治に反対し、いかなる1国主義や保護主義にも揺るぐことなく反対してきた」と述べました。

そのうえで「新型コロナ対策において、国際協力を全面的に展開し、国際社会から幅広い称賛を勝ち取り国際的な影響力が著しく高まった」と強調しました。

そして、強い国が弱い国を虐げたりゼロサムゲームを行ったりする覇権やいじめによって人類はかつてない試練に直面しているなどとしたうえで「冷戦思考と内政干渉に反対する。中国は永遠に覇を唱えず、拡張することもない」と述べ、対立を深めるアメリカを念頭にけん制しました。

●「農村部の貧困層なくすという目標」については

習主席は、最重要課題の1つに掲げてきた農村部の貧困層をなくすという目標について「人類史上最大規模の貧困をなくす闘いに打ち勝った。絶対的な貧困問題を歴史的に解決し、地球上の貧困を減らすことに大きく貢献した」と誇示しました。

そして「今世紀の中ごろまでに、中国を豊かで強く、民主的で文明的な調和のとれた美しい社会主義現代化強国をつくりあげる」と述べ、これからの5年が肝心な時期だとして、経済の質を高めて新たな発展を実現することや都市と農村の居住環境を大きく改善することなどを訴えました。

幹部の汚職を摘発する「反腐敗」について「過去に例がないような反腐敗闘争を展開し、圧倒的な勝利をおさめた。党と国家、それに軍の内部に存在する深刻なリスクを取り除いた」と述べました。そのうえで共産党は反腐敗という「自己革命」によって党が決して変質したり、堕落したりしない状態になったと強調しました。

●国防については「世界一流の軍隊を早期に作り上げる」

国防政策について「われわれは新時代の強軍目標を確立して国防、軍の改革を断行し、軍の体制や構造を一新させた」と強調しました。

そして「世界一流の軍隊を早期に作り上げることは、社会主義現代化強国を建設する上での戦略的な要請だ。訓練と戦備を全面的に強化し軍が勝つための能力を高め、実戦的な軍事訓練を推し進めなければならない」と述べました。

報告では、国防に関する科学技術力を強化し、国境、領海、領空の近代的な国防力の整備を推し進めるなどとして、引き続き軍事力を強化する方針を示しました。

江沢民元国家主席や朱鎔基元首相の姿はなし

共産党大会には、病気で欠席した39人を除く党員の代表など2340人が出席したとしています。

会場には、歴代の最高指導部メンバーも姿を現し、習近平国家主席の隣には、胡錦涛前国家主席が着席したほか、温家宝前首相も出席しました。

一方、96歳の江沢民元国家主席や、朱鎔基元首相の姿はありませんでした。

また、改革開放の重要性を訴えているとされる長老で、105歳の宋平氏も出席し健在ぶりを示していました。

このほか去年、有名な女子テニス選手が性的関係を迫られたことを告白したとされる文書が、SNS上で公開され注目を集めた張高麗前副首相も出席しました。

会場周辺では厳重な警戒態勢

中国共産党大会の会場となっている北京の人民大会堂の周辺では、大勢の警察官などが配置され、厳重な警戒態勢が敷かれています。

会場から500メートルほど離れた歩道では、警察官が通行人一人一人のIDカードを確認するため、臨時のテントが設けられていました。

また、NHKの取材班が会場周辺の様子を車内から撮影していた際には、警察官から呼びとめられ、取材の趣旨を質問されるなど、当局が神経をとがらせていることがうかがえます。
中国でNHKの放送が一時中断

中国では、NHKの海外向けテレビ放送「ワールドプレミアム」で、16日正午のニュースのなかで共産党大会について伝えた際、カラーバーとともに「信号の異常」などと表示され、放送が一時中断されました。

中国では、国内で放送される外国のテレビ局の放送内容も当局に監視されていて、中国共産党や政府にとって都合の悪い内容は放送が中断されることがたびたびあります。

当局が党大会をめぐる動きや習近平国家主席の党トップとしての異例の続投に関する見方など、外国メディアの報道について神経をとがらせていることがうかがえます。

台湾総統府は「領土と主権で譲歩せず」と反発

習主席の報告について、台湾総統府の報道官はコメントを発表し「台湾の民意の主流は一国二制度を断固拒否する意思をはっきりと示している。領土と主権で譲歩せず、民主主義と自由で妥協せず、台湾海峡の間で武力衝突は選択肢にならないというのが、台湾人民の共通認識だ」と反発しました。

そして「理性をもって、対等に、互いを尊重しながら、台湾海峡の平和と安定を維持するため、双方にとって受け入れ可能な方法を探りたい」とした今月10日の蔡英文総統の演説を引用し、交流や対話による緊張の緩和を中国に呼びかけました。

台湾の専門家の見方は

中国共産党に詳しい台湾の淡江大学の張五岳副教授は、習主席の報告について、前回5年前の報告との最大の違いは、2018年から激化した米中対立を背景として、外部勢力の干渉への反対と、統一に関して武力行使の放棄を約束しないと、言及したことだと指摘しました。

そして「北京は台湾と国際社会に対し、統一は絶対に必要で、平和的な方法か武力を使うかは選んでもよいが、統一を拒否することはできないと言いたいのだ」と述べました。

次の5年間の習主席の出方について、張副教授は「ロシアによるウクライナ侵攻の現状から、北京が台湾統一のために武力を行使することは基本的にないだろう」と述べました。
そのうえで「習氏が武力でも平和的にも2027年までに台湾を統一するのは不可能だが、統一問題で歴史的な進展を必要とするだろう」として、台湾に適用しようという一国二制度のプランの具体化を進めることなどが考えられるという見方を示しました。』