[FT・Lex]中国の技術開発阻止へ、米国が半導体輸出規制

[FT・Lex]中国の技術開発阻止へ、米国が半導体輸出規制
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB116CA0R11C22A0000000/

『米国の技術に対する中国のアクセスへの規制が新たな局面を迎えた。中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)は、以前の制裁措置によって破綻寸前まで追い込まれた。今回の規制強化は産業全体だけでなく、中国のより幅広い政策目標も脅かす。

米国は最先端半導体の輸出規制を強化した=ロイター

米国による新たな措置には、人工知能(AI)に使われる最先端半導体の輸出規制や、中国企業に対する半導体製造装置の販売規制が含まれている。米国はさらに多くの中国企業をブラックリストに載せた。

中国は長年、半導体の自給自足を目指してきた。同国は2030年までにAIの技術革新における世界の主要拠点になろうとしている。電気自動車(EV)でも世界トップの座を狙う。中国は一元化されたデータ防壁とネットワークアーキテクチャー(基本構造)を構築したいと考えている。そのためには、最先端半導体を安定的に入手する必要がある。

中国には「望ましくない」タイミング

規制強化のタイミングは、中国にとって非常に望ましくないものとなった。中国最大の半導体受託メーカーである中芯国際集成電路製造(SMIC)は9月、回路線幅14ナノ(ナノは10億分の1)メートルの半導体の大量生産を開始したばかりだ。この半導体は、韓国のサムスン電子や台湾積体電路製造(TSMC)といった世界の同業が製造する最新型から何世代も遅れている。それでも、大量生産によって輸入品への依存度を引き下げることができる。中国は今のところ、最先端の回路線幅3ナノメートルや同5ナノメートルの半導体については輸入するほかに選択肢はない。

今後はどんな種類の半導体であっても大量生産が難しくなる。近年、中国メーカーは半導体製造の設計・開発面では急速に追いつきつつある。だが半導体の製造や、シリコンウエハーに回路を形成するための微細な加工をする「エッチング」といった最終段階では、依然として輸入装置に大きく依存している。

SMICは、米半導体製造装置大手のラムリサーチとアプライドマテリアルズ製の機器を使用している。二次的制裁は、最先端半導体製造装置で世界最大のASML(オランダ)にも及ぶ可能性がある。米国は7月以降、中国への装置輸出を禁止するようオランダに圧力をかけてきたと言われている。中国が同じく米国製装置を使用している台湾のTSMCからの半導体輸入を続けられるかどうかは不明だ。

SMICや上海復旦微電子集団など中国の半導体メーカーの株価は10日に4%以上下落し、半導体受託大手の華虹半導体も9%以上下落した。こうした下落幅は、制限が数カ月以上続くリスクを十分に織り込んでいるとは言えない。AI、データセンター、EVやスマートカーの開発停滞は、米国が中国に与える最も大きな技術面での打撃になる可能性がある。

(2022年10月10日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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