遅れ続くインド労働改革 法成立2年、投資条件定まらず

遅れ続くインド労働改革 法成立2年、投資条件定まらず
ASIA TECH
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK101YS0Q2A011C2000000/

『インド経済の成長加速効果が期待される改正労働法の施行が遅れている。複雑に入り組んだ29の労働関連法を4つに集約しながら各種改革を盛り込んだ改正法が2020年9月に議会で成立してから、既に2年が過ぎた。連邦法に連動して必要な各州の制度改正が終わらない。スタートアップの成長の足かせになってきた規制の行方はなお不透明だ。

新制度の施行は何度も延期されてきた。今年も「7月1日に施行」との情報が政権周辺からもれたが、6月下旬になると「再び延期で施行時期は不明」(地元紙)と一転した。

背景には、連邦議会が完全な立法権限を持つ国防や外交などの分野と、連邦議会と州立法府の「共管」とする法制分野を分けた、インド憲法の規定がある。労働法制は共管分野で、連邦法と州法の改正がそろわないと発効できない。州の中には新制度に懐疑的な州政権が立法作業を渋っているケースもある。

労働法制改革の目玉は中小・中堅企業の解雇規制の緩和だ。現行制度では、従業員数が100人以上の事業所が1人でも解雇や一時帰休したり、事業所を閉鎖したりする際、政府からの許可取得を義務付けている。改正労働法が施行されれば300人未満の事業所については全国で許可取得不要となるうえ、各州が独自にそれより大きい規模の企業まで許可義務免除の範囲を広げられるようになる。

もう一つの目玉が、従来は特定の業種や職種以外は禁止されていた有期雇用契約を全業種・職種で原則解禁したことだ。

これまでインドの新興企業や中小企業は、厳しい解雇規制を恐れて100人以上の規模に成長することをちゅうちょする傾向があったとされる。有期契約社員の制度的な使いにくさも新興・中小企業の成長の足を引っ張ってきた。制度改革でこれらの企業の成長意欲が高まれば経済全体の成長力アップにつながるはずだ。

特にインド全体の所得底上げに重要とされる労働集約型の製造業や近代的サービス業の企業の増加と成長のために、改正労働法は有効とみられる。労働集約的な現場を伴う新興企業にとっても、人員増強に伴うリスクを抑えながら高成長を実現するために決定的に重要なルール変更だ。

現地工場やスタートアップ企業に投資する海外の企業・投資家にとっては、投資の基本条件である労働制度が定まらない状態が続いているといえる。

「モディノミクス」と呼ばれる経済政策の中でも最大級の改革がいつ達成できるのか。そもそも本当に達成できるのか。内外投資家は決着を待っている。

(編集委員 小柳建彦)』