PayPayや楽天ペイ、デジタル給与「受取口座」参入検討
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『2021年2月10日 2:00 (2021年2月10日 4:48更新)

スマートフォンアプリなどを使うデジタルマネーによる給与の振り込みが2023年春にも解禁される。スマホ決済会社のPayPayや楽天グループの「楽天ペイ」は、デジタル給与の受け取りサービスへの参入を検討していることを明らかにした。給与口座を銀行以外でも作れるようになり、フィンテックが消費者の人生設計に食い込むチャンスが広がる。

デジタル給与の受け取りサービスには、2023年にもスマホ決済を始めるJCBも参入を検討している。メルカリのメルペイも「前向きに検討する」という。スタートアップではKyash(キャッシュ、東京・港)のほか、デジタル通貨決済のソラミツ(東京・渋谷)が関連会社を通じて参入するとしている。

スマホ決済アプリをデジタル給与の受取口座として使えるようになれば、利用者はその都度お金をチャージする手間が省ける。スマホ決済企業は家族同士の送金や外国人労働者の口座開設需要を取り込める。金融商品なども提案しやすくなる。

ソラミツの宮沢和正社長は「サービスの設計次第では給与振り込みを月1回ではなく、週1回など細かく設計できるようになる可能性がある」と話す。デジタル給与の口座を獲得するためにポイント付与などの競争が激しくなりそうだ。

課題もある。政府はサービスを提供する企業が破綻した場合に備え、個人が預けた資金の残高の全額を保証する仕組みの導入を義務付ける。

銀行などの預金には、金融機関が預金保険料を預金保険機構に支払い、金融機関が破綻した場合、一定額の預金等を保護する預金保険制度という仕組みがある。預金者1人につき1金融機関ごとに普通預金や定期預金などの元本1000万円とその利息が保護される。

一方、スマホ決済アプリの口座でデジタル給与を受け取る場合、預金保険制度を使えない。もともとスマホ決済アプリなどにチャージしたお金は供託などで保全されているケースがあるが、取扱額が日々変動していることから、経営破綻時に必要な金額が確保されていないこともありうる。

東京海上日動火災保険などの損保大手4社は、スマホ決済アプリの口座で受け取ったデジタル給与を保証する保険の開発を検討する。ただ損保などが個別で商品を開発すれば「保険料率は1%は超える」(損保幹部)との声もあり、利用企業にとっては負担が大きくなる可能性がある。

あるスマホ決済企業の社長は「全額保証することを義務付けられるなら、デジタル給与の受け取りサービスへの参入を断念する」と話す。今後は複数の決済業者や業界全体で保証する枠組みをつくるなどの対応が求められそうだ。

(フィンテックエディター 関口慶太、手塚悟史、岩田夏実、四方雅之)

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