カリフォルニア「最後の原発」延命へ 電力難・脱炭素で

カリフォルニア「最後の原発」延命へ 電力難・脱炭素で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN01DZB0R00C22A9000000/

 ※ ウクライナ侵攻は、各国の「エネルギー政策」まで、変えてしまったようだ…。

 ※ 後々、「歴史の転換点」になった事件として、長く刻まれることだろう…。

『【ヒューストン=花房良祐】米カリフォルニア州議会は1日未明、同州最後の原子力発電所「ディアブロキャニオン原発」の運転期間を5年間延長して2030年までとするための支援策を可決した。総額14億ドル(約2000億円)を投じ、電力の逼迫に対応するほか、脱炭素の電源として活用を続ける。

州議会で可決に必要な3分の2以上の賛成を得た。条件付きで返済が免除となる14億ドルのローンを供与するほか、運転期間の延長のために環境規制を一部緩和する。

電力大手PG&Eは16年、2機で合計出力が約230万キロワットの同原発を25年までに閉鎖すると発表していた。2機はいずれも1980年代に稼働し、運転期間は原子力規制委員会により24~25年まで認められている。許認可を得たら延長できるが、シェール革命でガス火力発電所の発電コストが低下したほか、パネル価格が下がった太陽光発電も普及。競争力の低い原発が生き残るには公的支援がないと難しい状況だった。

温暖化の影響などもあって、カリフォルニアでは電力システムが不安定になっている。天候に発電量が左右される再生可能エネルギーの利用が増えた半面、原発や化石燃料の基幹電源(ベースロード)が減り、需要にあわせて電力を適時供給するのが難しくなったためだ。

高温と干ばつが頻繁に発生し、水力ダムも満足に発電できない時期もある。熱波でエアコン需要も増えている。投資不足による送電線の火災事故などもあり、PG&Eは電力の安定供給を果たしていないと批判を受けていた。

原発抜きでは脱炭素は難しいといった見方も延命を後押しした。45年までに電力の脱炭素化を目指すカリフォルニア州にとって、ディアブロキャニオン原発は州内の電力の約1割を供給する「カーボンフリー」の柱だ。一部の環境団体は安全性に懸念があるとして反対を表明しているが、ニューサム知事と州議会は稼働延長が必要と判断した。

米国では既存の原発が運転期間を延長できずに廃炉に追い込まれる事例が相次ぎ、全国的な課題となっている。バイデン政権も稼働延長を支援するために総額60億ドルを投じる方針で、ニューサム氏はPG&Eも連邦政府に支援を申請すべきだとの立場を表明している。

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竹内純子
国際環境経済研究所 理事・主席研究員
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ひとこと解説

米国では複数の州が原子力発電所に対して、ゼロ・エミッション・クレジットを付与するかたちでその運転の延長を進めています。「最も安価な温暖化対策は、原子力発電所の運転期間延長」であることは、IEAのレポートなどでも示されており国際的な共通認識になっていますので、今後もそうした動きは続くでしょう。米国では80年運転許可を取得した発電所が6基、申請中が9基あります。日本は震災後に議員立法で改正された原子炉等規制法で40/60年を決めましたが、科学的議論が十分ではないのは当時から認識されていたので、科学的議論を行ったうえで、問題なければ稼働させることがエネルギー政策上非常に重要になります。
2022年9月2日 8:53 』