中国、五輪でも統制色 組織委、選手発言をけん制

中国、五輪でも統制色 組織委、選手発言をけん制
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM20A350Q2A120C2000000/

『【大連=渡辺伸、北京=多部田俊輔】2月開幕の北京冬季五輪まで21日で2週間に迫り、中国が大会関係者への統制を強めている。大会組織委員会は選手に対し、政治的な発言をした場合に処罰対象になり得ることを示唆した。新疆ウイグル自治区などを巡る人権問題が世界的な批判を受けるなか、中国は影響が広がることを警戒する。

「五輪の精神に反した行動や発言、特に中国の法律や規定に違反するものは処罰の対象となる」。北京五輪の組織委員会の幹部、楊舒氏は19日の記者会見でこう発言し、選手資格の剝奪もありうるとした。英BBCなどが報じた。

国際オリンピック委員会(IOC)は昨年7月、選手による競技会場などでの政治的、宗教的、人種的な宣伝活動を禁じた五輪憲章第50条について、一部を認めると発表した。「国や組織、人を標的にしないこと」といった条件がつくが、選手は記者会見などで政治的意見を発信できる。東京夏季五輪では実際に、選手による人種差別などへの抗議表明が相次いだため、北京五輪の動向が注目されてきた。

組織委の発言はIOCが容認した範囲についても、発言が中国にとって不利益と判断すれば、処罰対象になることを示唆した格好だ。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは18日の記者会見で、中国では言論の自由が保障されていないとして「選手らが北京五輪で抗議活動を行うことは危険だ」と呼びかけた。

中国政府によるデジタル技術を通じた監視の懸念も浮上している。北京五輪に参加する各国の選手ら全員はスマートフォンの健康管理用アプリ「冬奥通」のダウンロードを義務付けられている。このアプリに対し、カナダのトロント大は18日公表のリポートで、情報漏洩などの懸念があると指摘した。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、米国やオランダ当局などは中国に入る選手らに対し、個人所有ではなく使い捨て用などのスマホを利用するよう促した。一方、中国共産党系メディアの環球時報(英語版)は18日、同アプリでは「すべての個人情報はプライバシー確保のため暗号化されている」と反論する記事を出した。

中国による新疆ウイグル自治区における強制収容の疑いや香港の民主派弾圧について、欧米諸国を中心に批判が相次ぐ。デンマークとオランダの両政府は14日、それぞれ政府外交団を五輪に派遣しない方針を発表した。外交ボイコットはこれまでに米国、英国、カナダ、オーストラリアなどが決めている。3期目入りを狙う習近平(シー・ジンピン)国家主席にとって、五輪成功は必須だけに、当局が統制色を強めている。

一方、中国では、新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」が北京市で増えるなど、感染の広がりに危機感を強めている。

「北京市では(中心部の)朝陽区など4つの区でオミクロン型やデルタ型が見つかった」。市の衛生当局幹部は20日の記者会見で、こう危機感を示した。同市では15日に初めてオミクロン型を確認後、市中感染者が合計で約20人に増えた。

市当局は22日から3月末まで、域外からの訪問者全員に対して北京に入った後に72時間以内のPCR検査を義務化する。市当局幹部は「断固として感染拡大を阻止し、全力で五輪の安全性を確保する」と述べた。

五輪の組織委員会は17日、五輪とパラリンピックのチケットを一般に販売せず、特定の団体・組織のみに提供すると発表した。昨年9月に観覧は中国居住者のみとする方針を決めた後、詳細を検討してきたが、足元の感染拡大で一般販売を断念した形だ。

提供対象は、中国のアリババ集団や米インテル、トヨタ自動車、パナソニック、韓国サムスン電子といったスポンサー企業のほか、政府関連団体などだ。ある外資系企業は日本経済新聞の取材に「600人分の観戦枠を確保した。社員が見るだけでなく、接待を兼ねて取引先を招く」と述べた。

ただ観戦条件は厳しい。招待客は実名による事前登録制となる。コロナワクチンの3回接種完了も条件だ。北京市域外の観戦者は観戦2週間ほど前に北京に入る必要がある。「一度申し込むと、基本的にはキャンセルできない、と組織委に念押しされた」(外資企業の幹部)。習指導部にとって、ごく少数の観客を入れる形式になれば、自らが誇ったコロナ対策で感染を抑え込めていないイメージが広がり、国威の失墜につながりかねない。「開幕式などは一定人数を動員・招待し、にぎわいを演出する可能性がある」(五輪関係者)という。』