中国、揺らぐ土地神話 細る地方政府「打ち出の小づち」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM1527Q0V10C22A1000000/




『中国の地方財政が悪化している。習近平(シー・ジンピン)指導部の不動産規制で、地方政府の土地収入が落ち込んだためだ。2021年10~12月の実質経済成長率は一段と減速したが、積極的な景気対策も打ちにくい。「需要は崩れない」という土地神話が揺らぐ現場を取材した。
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中国東南部に位置する江西省の省都、南昌市。市中心から20キロメートル離れた経済開発区域にある、一面茂みに覆われた3万平方メートル超の土地を訪れた。市が21年秋、マンションや幼稚園の建設用地として競売にかけたが、誰も入札に応じなかった売れ残りだ。
「全国展開の大手が資金繰り難で入札どころではなくなった。地元業者にはそもそも入札資格なんてないよ」。同市の開発会社幹部、徐さん(52)は入札不調の背景をこう語る。
南昌市では21年の国有地使用権の売却収入が7割減った(買い手が付かなかった住宅用地、江西省ホームページより引用)
中国の不動産開発は、地方政府がまず競売を通じて、国有地の使用権を開発企業に売る。中国の不動産サイトによると、南昌市の売却収入は21年、前年比7割も減少した。21年は住宅用地の供給を2割近く増やす計画を立て、売却収入の増加を見込んでいたが、目算は外れた。
主因は習指導部の不動産投機に対する規制の強化だ。住宅ローンや開発企業向け融資を厳格化した。新規の投資が減るとともに、住宅需要も縮小しマンション在庫がだぶついた。南昌市では21年9月から12月まで新築物件価格の前月比下落が続く。4カ月連続は7年ぶりだ。
仕入れにあたる土地の需要も減った。国有地使用権の売却収入を全国ベースでみても、21年1~11月は前年同期比4%増だった。20年までの2ケタ増から失速した。
影響は大都市にも及ぶ。北京市が21年12月に実施した入札対象に「優良物件」が含まれた。市中心から車で20分ほどのエリアで、商業地や繁華街への交通の便も良い。人口流入が続く首都で使用権が売りに出た土地は、これまで郊外が多かった。
北京市中心から車で20分という「優良物件」でも応札したのは国有企業系の不動産開発会社1社のみだった
民間の開発会社の資金繰りが厳しくなるなか、同市は底堅い需要が見込める優良物件を入札にかけて、応札を促そうとしたとみられる。ただ応札したのは国有企業傘下の開発会社1社のみ。落札価格も市が指定した最低価格だった。「優良物件でも入札は盛り上がらないのか」。北京の不動産関係者はため息をついた。
不動産規制が強まるまで、地方政府は土地使用権の売却収入への依存を深めてきた。一般会計に相当する一般公共予算と売却収入を管理する基金(特別会計)を合わせた地方の独自収入は20年、19兆元(約340兆円)だった。売却収入の割合は遡れる10年以降で初めて4割を超えた。
中国不動産データ研究院によると、中国の主要12都市は売却収入が一般公共予算の歳入を上回る。浙江省杭州市や江蘇省南京市など省都も含む。「打ち出の小づち」をなくした地方財政は逼迫度が一気に高まるリスクも否定できない。
地方の歳入減を受けて、公務員の手当やボーナスの削減、遅配が広がっている。「20年の年末ボーナスは21年12月になってようやく払われた。これが最後のボーナスかな」。四川省にある市で働く劉さんはあきらめ顔で語った。社会保障や教育など公共政策やインフラ投資の重荷にもなりかねない。
21年10月、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は政府が固定資産税に相当する不動産税を試験導入することを認めた。マンション投機を抑えつつ、土地使用権の売却収入に代わる地方財政の歳入源を育てる狙いがある。
ただモデル都市の選定は難航しているもようだ。共産党関係者は「マンション市場に与える影響を考えれば、地方税収に貢献するような主要税源には当面ならない」と見通したうえで、こう付け加えた。「指導部が強調するように、党や政府の機関は財政的に苦しい日々を送り続けなければいけないんだよ」(江西省南昌市で、川手伊織)
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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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分析・考察
中国では、土地は地方財政のラストリゾート(最後のよりどころ)。
しかし、都市開発・不動産開発をどんどん進めればいいというものではない。
不動産経済の弊害は技術イノベーションを伴わないうえ、農地の減少をもたらす。
無秩序な都市再開発により、都市がどんどん拡大し、統計的に都市化率が上がって、経済が成長するかもしれないが、食糧難の問題が心配される。
40余年前、改革・開放初期、中国の一人当たりの居住面積はわずか3㎡だった。今は35㎡を超えた。これ以上広いところに住めば、将来、飢えが深刻化する恐れがある
2022年1月18日 8:01
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山田邦雄
ロート製薬 代表取締役会長
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分析・考察
中国が改革開放以来の30年間に目覚ましい経済発展を遂げ得た理由はいくつも考えられるが、一つは外国の資本と技術を導入し、当時は豊富で安かった労働力を武器に世界の工場となった事だが、加えて政府主導で強力に産業/投資政策を推し進める事が出来たのが大きい。
それは政治的というよりは、むしろ財力があったことによる。
その源泉が国有である土地の開発権を売る「打ち出の小づち」だ。
大きくは戦後の日本と相似する経済発展戦略だが、違うのは日本の政府はこのような魔法は使えず、税収で様々工夫するも全く追い付かず、今や巨額の財政赤字が積みあがって身動きできない。
これからの中国はそういう意味では「普通の国」になるのだろうか。
2022年1月17日 21:40 』